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インタビューの逐語録

逐語録とは。書き方・作り方と、分析に使える表記ルール

研究・業務インタビューの録音を、話者と時刻を追える逐語録にする手順。記入例、表記ルール、TXT・CSVの無料テンプレートを用意しました。

公開日:更新日:執筆・運営:

何を残すか

逐語録は発言を言葉として記録し、元のやり取りを確かめるために使います。読みやすい要約へ書き換える前に、何を省略せず残すかを決めます。

どこまで細かく起こすかは、分析の目的や提出先のルールで変わります。会話の間や重なり自体を分析する場合は、専用の転記規則が必要です。このページの記入例を、すべての研究分野の標準として使わないでください。

目的に応じて分けて保存する記録
記録このガイドでの扱い確認すること
逐語録質問と回答を、決めた表記ルールで記録する発言、言い直し、話者交代など、分析に必要な情報が残っているか
読みやすく整えた本文不要と定めた言いよどみ等を整理した別版削除・修正の範囲を説明できるか
要約・分析メモ論点を短く整理し、作成者の解釈を記す原文と解釈を区別し、根拠へ戻れるか

始める前に

複数人で作業するときも、途中で担当が変わるときも、同じ判断ができるようにします。以下は独自の運用例です。所属先の規程や依頼内容を優先してください。

録音が分割されている場合はファイルIDを併記します。「後半ファイル00:02:00」を原本全体の00:02:00と混同しないように、対応する開始位置を残してください。

逐語録を作る前に決める項目
項目決める内容このガイドの例
話者質問者と参加者のラベル、交代時の改行I01:質問者、P01:参加者。実名の対応表は別管理
時刻録音のどこを基準にするか、付ける頻度原本の先頭を00:00:00とし、発言区間の開始時刻を残す
言いよどみ・言い直し残す範囲と省略する条件「ええと」「来週、ではなく再来週」などを勝手に整えない
沈黙・重なり必要な非言語情報の記録方法[沈黙 約3秒]、[同時発話]。秒数は音声で測った場合だけ記入
不明箇所聞こえない範囲と確認状況[聞き取り不能 00:04:12〜00:04:16] と記し、推測で補わない
作業状態確認者・確認範囲・版の残し方v01下書き、v02音声照合済み。確認していない区間は別に記録

書き方

逐語録の書き方に全国共通の決まりはありません。大切なのは、使う記号を決めて文書の冒頭に書き、最後まで同じ書き方を続けることです。以下はこのガイドで使う記号の例です。

  • 「えっと」「資料は、資料は」のような言いよどみや繰り返しも、逐語録では基本的に残す。
  • 「来週、じゃなくて再来週」のような言い直しは、書き手が直さずにそのまま書く。
  • 質問者の発言も省略しない。回答だけでは、何に対する答えか分からなくなる。
  • 録音から分からない表情やうなずきを書く場合は、観察メモから補ったことが分かるようにする。
  • 会話分析のように間や重なりを細かく扱う研究では、分野で使われる専用の転記記号に従う。
  • 読みやすい版が必要なら、逐語録とは別に、ケバ取り・整文した版を作る。
逐語録で使う記号の例(このガイドの運用例)
書きたいこと記号の例書き方のポイント
話者I01: P01:発言ごとに改行し、行頭に話者IDを書く。実名は別表で管理
時刻[00:03:05]発言の開始時刻を、録音の先頭からの経過時間で書く
相手の短い相づち(I01:ああ)発言の途中に入った相づちは、改行せずに括弧で示す
沈黙・間[沈黙 約2秒]秒数は音声で測った場合だけ書く
同時に話した[同時発話]重なり始めた発言の頭に付ける
言いかけ・中断―言い終わらずに途切れた位置に付ける
笑い・咳など[笑][咳]音声で確認できる音だけを書く
聞き取れない[聞き取り不能 00:03:28〜00:03:30]推測で埋めず、区間の時刻を残す
聞き取りに自信がない(定例?)候補の語に「?」を付け、確定した発言と区別する
伏字[人名][会社名]共有用の版で置き換える。原本の版は別に管理

逐語録の書き方の例(架空)

【逐語録】引き継ぎインタビュー(架空の例)
インタビューID:INT-07/原本:INT-07_audio.m4a/版:v02 音声照合済み
表記:素起こし。言いよどみ・繰り返しを残す。I01=質問者、P01=参加者

[00:03:05] I01:引き継ぎのとき、いちばん困ったことは何ですか。
[00:03:09] P01:えっと、[沈黙 約2秒]資料は、資料はあったんですけど、どこが最新か分からなくて(I01:ああ)。
[00:03:18] I01:最新版が分からなかった。
[00:03:20] P01:はい。で、前の担当の[人名]さんに聞こうとしたら、もう異動していて―
[00:03:25] I01:[同時発話]異動されていたんですね。
[00:03:26] P01:そうなんです[笑]。結局、[聞き取り不能 00:03:28〜00:03:30]に確認しました。
[00:03:33] P01:来週、じゃなくて再来週の(定例?)で共有する予定です。

英語の逐語録

英語で渡す編集依頼書を、用途に合わせて作る

選んだ方針を英語の依頼文にまとめます。原文を残す版と読みやすい編集版を分け、受け取り手と合意してから使ってください。

原文と編集版の方針を選ぶ
English transcript editorial brief (project-specific example)
Source ID: [recording ID]
Purpose: [analysis / quotation / reading copy]
Fillers: retain audible fillers such as um and uh
Repetitions and false starts: retain and mark restarts consistently
Contractions: retain spoken contractions, e.g. I'm / don't
Keep the original grammar in the source transcript. Label speakers and timestamps. Mark uncertain words as [unclear HH:MM:SS]; do not guess. Keep editorial notes separate from spoken words.
Reviewer: [name/role] / unresolved passages: [IDs]
Agree this brief with the recipient before work; it is not a universal research standard.

参考:UK Data Service:転記指示書の例(PDF)

無料テンプレート

文章形式のTXTと、区間ごとに整理できるCSVを登録なしでダウンロードできます。いずれもKlangが作成した記入用のひな形で、大学・学会の指定書式ではありません。

CSVはExcelなどで編集できます。時刻を文字列として読み込むと、先頭のゼロや元の表記を保ちやすくなります。公開・共有する前に、ファイル名や注記欄にも不要な識別情報が残っていないか確認してください。

テンプレートに残す情報
場所項目目的
冒頭の管理欄インタビューID、原本ファイルID、版、表記ルール、確認範囲別の録音・別版との取り違えを避ける
発言ごとの行区間ID、時刻、話者ID、発言本文引用・コードから元音声へ戻る
本文と別の注記欄作業メモ、未確認箇所、確認状態発言者の言葉と作成者の説明を分ける

記入例

以下は社内の引き継ぎについて聞く架空のインタビューです。音声から採取した研究データではなく、書き分けを説明するための例です。

「担当者が明確だと連絡しやすい」は分析者が付けるコードや解釈の候補です。逐語録の本文へ代入せず、S003を参照する分析表の別欄に記録します。

架空の逐語録と、本文とは別に残す注記
区間・時刻・話者発言本文注記
S001 / 00:01:12 / I01直近の引き継ぎでは、最初に何をしましたか。質問者の発言も残す
S002 / 00:01:18 / P01ええと、一覧を見ました。先週、ではなく先々週の金曜です。言い直しを含む。日付へ換算する場合は注記欄で根拠を示す
S003 / 00:01:31 / P01担当が分かれば、その日のうちに連絡できます。条件付きの発言。「その日に連絡した」という実績に変えない
S004 / 00:01:39 / I01担当が分からなかったときのことも教えてください。追加質問を省いて回答の文脈を失わない
S005 / 00:01:45 / P01[聞き取り不能 00:01:45〜00:01:48] に確認しました。確認相手は未確認。前後の話から人物を決めない

英語の逐語録

英語の逐語録は、短縮形・言い直し・相づちを原文で残す

以下は独自の運用例です。全ての研究で同じ細かさが必要なわけではありません。文字だけの架空サンプルで、実在する会話の記録ではありません。

EN-DEMO / version: source transcript example
Convention: retain audible fillers, contractions, restarts; [unclear time] = unresolved.
[00:10] I01: What happened after the handover?
[00:14] P01: Well, I—I couldn't find the draft. I mean, the latest draft.
[00:20] I01: Mm-hm.
[00:21] P01: So I asked [unclear 00:23]. We didn't send it that day.
[00:28] I01: You waited for the draft?
[00:31] P01: Yes. [pause] Then we checked it together.
Reviewer note: the person at00:23 is unresolved; no name inferred.

参考:UK Data Service:転記指示書の例(PDF)

Mm-hmや重なりを、賛成の返事と決めつけない

聞き手の短い発声は、その後の質問や会話の流れと合わせて確認します。相づち一つを同意の引用に使わないでください。

Mm-hmや重なりを、賛成の返事と決めつけない(架空の記入例)
架空の区間残す原文読み取りの注意
00:12 P01We thought the draft was ready—まだ文が続く可能性がある。
00:14 I01 / P01 重なりI01: Mm-hm. / P01: —but the appendix wasn't.I01の相づちとP01の但し書きを別話者で残す。
00:19 I01So it wasn't complete?先のMm-hmを完成への同意と要約しない。

参考:UK Data Service:転記指示書の例(PDF)

話者の引用と、編集者の補足に別の記号を使う

引用符の内側に誰の言葉があるのかを示します。編集者が後から補った情報は、話された言葉と見分けられるようにします。

話者の引用と、編集者の補足に別の記号を使う(架空の記入例)
原文・補足記録例用途
別の人の言葉を紹介P01: She said, 'Keep the draft.'引用された発言はsheが指す人物の言葉。
編集者の補足[editor note: 'she' refers to the coordinator; confirmed after recording]録音中の発言に混ぜない。後日の確認と明記。
引用するときP01 described the coordinator's request: 'Keep the draft.'前後の文脈と元の話者を伝える。実際の引用可否は資料の扱いに合わせる。

参考:UK Data Service:転記指示書の例(PDF)

英語の途中に出た日本語を、翻訳して置き換えない

原文の言語が切り替わる箇所も、聞こえた言葉を残す方針にします。英語へ整えた説明が必要なら、別の編集メモとして作ります。

英語の途中に出た日本語を、翻訳して置き換えない(架空の記入例)
架空の発言原文の記録別に残すこと
P01We called it 「仮置き」 during the workshop.日本語の呼び方をそのまま保持。
I01By 「仮置き」, do you mean a temporary decision?聞き手による確認であり、定義の確定とは限らない。
P01Not exactly. It was more like [unclear 00:40].短い英語の説明で勝手に確定せず、未確認箇所を残す。
混在逐語録の作業方針
原文は話された言語のまま残す。
短い別言語の句は原音と資料で人が確認する。
意味の説明・翻訳は別欄に作成者付きで置く。
不明な箇所は時刻を添え、推測で別言語に置き換えない。

参考:Klang公式ヘルプ:文字起こしと言語設定

作成の手順

Klangでは音声を再生しながら文字起こしを編集し、話者名や区間の割り当てを確認できます。修正候補の表示だけでは、研究で必要な情報がすべて残っていることは判断できません。

  1. 01

    録音と方針を用意する

    利用が認められた録音を用意し、原本ファイルID、表記規則、作業担当者、保存先を決めます。

  2. 02

    話者付きの下書きを作る

    録音を文字起こしし、質問者と参加者の区切りを確認します。自動で表示された名前を本人確認の代わりにしないでください。

  3. 03

    必要な粒度で聞き直す

    本文を音声と照合し、誤認識や抜け、言い直し、必要な間・重なりを確認します。AIがすべての言いよどみを残すとは限りません。

  4. 04

    未確認箇所と版を残す

    解消できない箇所は時刻と状態を残します。確認済み範囲を記録し、引用用や共有用の版を作ります。

英語の逐語録

英語の記録条件をREADMEにして一緒に渡す

本文だけを受け取った人が、どの版で何を省いたのか判断できるようにします。既存の逐語録本文テンプレートに添える説明書です。

英語の記録条件をREADMEにして一緒に渡す(架空の記入例)
READMEに入れる欄架空の記入例受け取り手の確認
Source / versionEN-DEMO / source-v1元音源と同じIDか。
ConventionsFillers and restarts retained; [unclear time] marks uncertainty.どの表記方針で起こしたか。
Review status00:23 unresolved; source checked by reviewer A.確認済みと不明箇所を分けているか。
Separate filesReading copy and editorial notes stored separately.編集版を原文として引用しない。
英語逐語録に添えるREADME

参考:UK Data Service:転記指示書の例(PDF)

共有する版

名前をP01に置き換えても、所属・役職・場所・出来事の組み合わせから人物が推測される場合があります。氏名の置換だけで匿名性を保証できるとは考えず、所属先の研究計画・利用条件に沿って共有範囲を判断します。

  • 作業用原本、共有用の版、実名との対応表は役割を分け、アクセスできる人を確認する。
  • 置換には一貫したラベルを使い、同じP01を別の参加者へ再利用しない。
  • 引用から省略・置換した箇所は、提出先の表記ルールに沿って明示する。
  • 注記欄やファイル名まで確認し、確認が終わった版を共有する。

分析へ進む

  • 分析表の引用に、インタビューID・区間ID・時刻・使用した版を対応させる。
  • 原文、コード、分析メモを別の欄へ記入する。
  • 一部の発言だけで全員の意見と決めず、反対の例や未確認の範囲も記録する。
  • 本文を修正したら、引用・分析表にも修正が必要か確認する。

Klangの文字起こし、音声再生、話者管理を逐語録作成の補助に使えます。研究に必要な粒度や提出形式への仕上げは、原音と表記ルールに沿って確認してください。

  • 元音声で発言を確認する
  • 話者と時刻を整理する
  • 解釈を本文と分けて残す
無料で試す
逐語録とは何ですか?要約や議事録とどう違いますか?

逐語録は、会話を話された言葉のとおりに記録した文書です。要約や議事録が内容を短くまとめるのに対し、逐語録は質問と回答、言い回し、言い直しまで残し、発言そのものを後から確かめられるようにします。

逐語録の作成には、どのくらい時間がかかりますか?

手作業でゼロから書き起こす場合、録音時間の数倍の作業時間を見込むのが一般的です。言いよどみ、沈黙、重なった発言まで記号で残す逐語録は、議事録用の文字起こしよりさらに時間がかかります。AIで下書きを作ると、人の時間は原音との照合と表記ルールに沿った修正に集中できますが、照合の時間は必ず確保してください。

録音の内容についてAIに質問し、根拠の発言を確認できますか?

Klangでは、文字起こしした会話についてAIチャットで質問できます。回答をそのまま引用せず、文字起こしの該当箇所を開いて元音声を再生し、実際の発言と照合してから逐語録や分析メモに使ってください。複数のインタビューをまとめて扱う場合は、ノートブックに入れて横断的に質問できます。

逐語録では「ええと」や言い直しも残しますか?

残す範囲は研究・分析の目的と表記ルールによります。発話の仕方を分析する場合など、言いよどみや間も重要になることがあります。作成前に方針を決め、AIの下書きで省略されていないか原音で確認します。

逐語録の書式は全国共通ですか?

このページの書式はKlangが作成した運用例です。大学・研究室・学会・依頼先に指定がある場合は、そちらを優先してください。転記記号の意味も記録と一緒に残します。

聞き取れない言葉を文脈から補ってよいですか?

確認できない言葉を確定した発言として補わず、時刻と未確認の状態を残します。資料や発言者への確認で追記した場合は、録音とは異なる情報源で補ったことが分かるようにします。

クレジットカードは不要です。数分でお使いいただけます。