文字起こしの仕上げ方
ケバ取り・整文のやり方。素起こしから要約まで4段階の違いとルール
文字起こしは、どこまで整えるかで読みやすさと証拠としての価値が変わります。素起こし・ケバ取り・整文・要約を同じ例文で比べ、フィラー・言い直し・表記・数字のルールと、用途ごとの選び方、ケバ取りを試せるデモをまとめました。
公開日:更新日:執筆・運営:Klang AI AB
同じ発言を、素起こし・ケバ取り・整文・要約で比べる
仕上げの段階が進むほど読みやすくなり、元の話し方の情報は減っていきます。下の例は架空の会議の一部です。段階を切り替えて、何が消え、何が残るかを見比べてください。
例のケバ取りでは「入口から、いや、入口じゃなくて出口側に」を残しています。内容が変わる言い直しは、どちらが本当の発言かを読み手が判断する材料になるためです。整文で最終的な内容にまとめる場合も、「たしか」「と思います」のような確からしさの表現は残します。「今年は3,500人を上回る見込みです」のように書くと、記憶と推測が、確定した見込みに変わってしまいます。
要約は文字起こしの「段階」ではなく、別の文書です。誰がどう言ったかは落ちるため、引用や事実確認には文字起こし本文に戻ります。
素起こしの本文
えー、あの、来月の、えっと、展示会の件なんですけど、まあ、ブースの、ブースの位置がですね、入口から、あ、いや、入口じゃなくて出口側に変わりまして。で、えー、来場者数は、去年がたしか3000、3500人ぐらいで、うーん、今年はそれより、まあ、増えるんじゃないかなと。あ、パンフレットは15日までに、はい、入稿しないと間に合わないです。
文字数:166字/向いている用途:会話分析・証拠として残す記録
この段階で変えたこと
- ・聞こえた言葉を、言いよどみ・繰り返し・言い直しも含めて書く
- ・話者の迷い(「たしか」「じゃないかな」)もそのまま残る
- ・読みにくいが、元の話し方に最も近い
4段階の本文・変更点をまとめて読む
素起こし:えー、あの、来月の、えっと、展示会の件なんですけど、まあ、ブースの、ブースの位置がですね、入口から、あ、いや、入口じゃなくて出口側に変わりまして。で、えー、来場者数は、去年がたしか3000、3500人ぐらいで、うーん、今年はそれより、まあ、増えるんじゃないかなと。あ、パンフレットは15日までに、はい、入稿しないと間に合わないです。 変えたこと:聞こえた言葉を、言いよどみ・繰り返し・言い直しも含めて書く。話者の迷い(「たしか」「じゃないかな」)もそのまま残る。読みにくいが、元の話し方に最も近い
ケバ取り:来月の展示会の件なんですけど、ブースの位置がですね、入口から、いや、入口じゃなくて出口側に変わりまして。来場者数は、去年がたしか3000、3500人ぐらいで、今年はそれより増えるんじゃないかなと。パンフレットは15日までに入稿しないと間に合わないです。 変えたこと:「えー」「あの」「えっと」「まあ」「うーん」などのフィラーを削除。「ブースの、ブースの」のような単純な繰り返しを1回にする。内容が変わる言い直し(入口→出口、3000→3500)は残す。話し言葉の語尾や「たしか」はそのまま
整文:来月の展示会では、ブースの位置が入口側から出口側に変わりました。昨年の来場者数はたしか3,500人ほどで、今年はそれより増えるのではないかと思います。パンフレットは15日までに入稿しないと間に合いません。 変えたこと:言い直しを最終的な内容にまとめ、文を区切る。話し言葉を書き言葉に近づけ、数字の表記をそろえる(3,500人)。「たしか」「思います」は残し、確からしさを変えない
要約:・ブースの位置:出口側に変更 ・昨年の来場者数:約3,500人(発言者の記憶による)。今年は増加の見込み(発言者の推測) ・パンフレット:15日までに入稿が必要 変えたこと:発言を項目ごとに短くまとめる。誰が言ったかや言い回しは落ちる。記憶・推測による数字は、そう分かるように書く。引用には使わず、根拠は文字起こし本文で確認する
ケバ取り・整文で決めておく7つのルール
「ケバ取りで」と依頼しても、どこまで消すかは人によって違います。作業前に次の項目を決め、文字起こしの冒頭や依頼書に書いておきます。以下はKlangが作成した運用例です。
表記に迷ったら、国の公用文の目安が参考になります。文化審議会の「公用文作成の考え方」(2022年)は、横書きでは算用数字を使うことなどを示しています。社内に表記ルールがある場合はそちらを優先し、固有名詞は用語集で統一します。
聞き取れない箇所はどの段階でも消さず、[聞き取り不能 00:12:31]のように時刻を残します。整文で文章を自然にするために、聞こえない言葉を推測で補わないでください。
| 項目 | 例 | ケバ取り | 整文 |
|---|---|---|---|
| フィラー | えー、あのー、えっと、まあ、うーん、そのー | 削除する | 削除する |
| 意味のある「あの」「その」 | あの資料、その件 | 残す(指示語) | 残す |
| 単純な繰り返し | ブースの、ブースの位置 | 1回にする | 1回にする |
| 内容が変わる言い直し | 入口から、いや出口側に/3000、3500人 | 残す | 最終的な内容にまとめる。重要な数字は注記も検討 |
| 相づち | はい、ええ、なるほど | 話者の発言として残すか先に決める | 内容がなければ削除 |
| 表記の統一 | 下さい/ください、事/こと、出来る/できる | 話し言葉のまま。表記は用語集に合わせる | 用語集と社内の表記ルールに合わせる |
| 数字 | 三千五百人/3500人/3,500人 | 算用数字にそろえる | 算用数字。4桁以上はコンマ区切り、単位を付ける |
否定・条件・確からしさを、整文で落とさない
読みやすくするために短くしても、発言の強さや合意の状態を変えないようにします。次は架空の例です。
| 元の発言 | 意味が変わる編集 | 意味を保つ編集例 |
|---|---|---|
| 「できないわけではないですが、検証が必要です」 | 「できます」 | 「実施の可能性はありますが、検証が必要です」 |
| 「たぶん30日までには、と思います」 | 「30日までに完了する」 | 「30日までに完了する見込みです」※発言者の見込みとして残す |
| 「この条件なら進めてもいいです」 | 「進めることに決定」 | 「この条件を満たす場合は進めてよい」※条件の内容も残す |
消してよい相づちか、意味のある返答かを確かめる
「はい」「まあ」を文字だけで一括削除すると、承認やためらいを失うことがあります。文脈で判断するための表です。
| 言葉の役割 | 例 | 編集時の判断 |
|---|---|---|
| 話し始めの間 | 「えー、次の議題は…」 | 提出先がケバ取りを求め、意味を担わないなら削除候補 |
| 質問への回答 | 「この日程で確定ですか」「はい」 | 回答として残す。単なる相づちと同じ扱いにしない |
| 確信の弱さ | 「まあ、大丈夫だとは思います」 | 断定へ変えず、文脈と語気を確認する |
| 発話の重なり | 説明の途中の「はい、ただ…」 | 異論や補足へつながる可能性があるため、後続発言まで読む |
編集前に、仕上げ条件を依頼先とそろえる
文字起こしの編集条件ひな形
目的:[社内記録/記事/研究など] 仕上げ:[素起こし/ケバ取り/整文] 残すもの:否定、条件、ためらい、回答としての相づち 話者・時刻:[話者交代時など] 数字・固有名詞:[表記資料と未確認の扱い] 聞き取り不能:[表記と時刻のルール] 注記:本文と編集者の注記を分ける 確認:提出前に確認する人、修正範囲、期限
仕上げ条件が違えば必要な作業時間も変わります。同じ納品条件で料金と見積もりを比べると、価格だけによる比較を避けやすくなります。
研究・記事・議事録・証拠で、必要な段階は違う
迷ったら「あとで何を確かめたいか」で選びます。話し方まで確かめたいなら素起こし、内容を正確に読みたいならケバ取り、人に読ませる文章にするなら整文です。
裁判所などへ提出する書面は、提出先の決まりや専門家の指示に従ってください。このページは一般的な作業方法の説明で、法的な助言ではありません。
| 用途 | 向いている段階 | 理由と注意点 |
|---|---|---|
| 研究(会話分析・言いよどみの分析) | 素起こし+専用の転記記号 | 間、重なり、言い直し自体が分析の対象。記号の規則は分析手法に合わせる |
| 研究(内容の分析・インタビュー調査) | ケバ取り | 発言内容を保ちつつ読める。引用は元の文字起こしから取る |
| 記事・インタビュー記事 | 整文 | 読みやすさを優先。掲載前に話者本人の確認を取ることが多い |
| 社内の議事録 | 整文、または要約+決定事項 | 決定事項・期限・担当を確認しやすい形にする。元の文字起こしは保存しておく |
| 証拠・紛争に備えた記録 | 素起こし | 編集すると発言の意味が変わる恐れがある。提出先の決まりがあればそれに従う |
ケバ取りを試す:フィラーを消して差分を見る
手元の文字起こしを貼り付けて、フィラーを取り除いたときに文章がどう変わるかを確認できます。最初は上の素起こしの例が入っています。
デモで分かるとおり、機械的な削除だけではケバ取りは終わりません。「で、」「はい、」のような接続や相づちを残すか、言い直しをどう扱うかは、決めたルールに沿って人が判断します。
文字起こしを貼り付けると、下の一覧にある言葉を機械的に消し、消した箇所を取り消し線で示します。入力した文章はブラウザの中だけで処理し、送信も保存もしません。
消さずに残す箇所を選ぶ
引用した言葉・相づちなど、意味のある箇所を残せます。本文やルールを変えると選択は解除されます。
差分(取り消し線=削除。8か所)
えー、あの、来月の、えっと、展示会の件なんですけど、まあ、ブースの、ブースの位置がですね、入口から、あ、いや、入口じゃなくて出口側に変わりまして。で、えー、来場者数は、去年がたしか3000、3500人ぐらいで、うーん、今年はそれより、まあ、増えるんじゃないかなと。あ、パンフレットは15日までに、はい、入稿しないと間に合わないです。
ケバ取り後の本文
来月の、展示会の件なんですけど、ブースの位置がですね、入口から、いや、入口じゃなくて出口側に変わりまして。で、来場者数は、去年がたしか3000、3500人ぐらいで、今年はそれより、増えるんじゃないかなと。パンフレットは15日までに、はい、入稿しないと間に合わないです。
本文の行頭タイムスタンプだけを外す
字幕ファイルではなく、書き出したプレーンテキスト向けです。「00:01:20」や「[00:01:20.500]」と、その後の空白だけを行頭から外します。本文中の14:00、話者名、行の境界は残します。日付や独自の時刻表記は自動で解釈しません。
元の入力は書き換えません。引用や確認で時刻が必要な場合は、時刻付きの原本も残してください。SRT・VTTは字幕からテキストへの変換ツールを使います。
これは決まった文字列を消すだけの簡単なデモです。「あの資料」の「あの」のように意味のある言葉は、読点が続く場合だけを対象にして誤削除を減らしていますが、文脈は判断できません。言い直し・相づち・語尾の整理や、内容が変わる言い直しを残すかの判断は人が行ってください。
文字起こしのやり方:録音から整文までの6ステップ
手作業で全部を聞いて打つ方法もありますが、今はAIで素起こしに近い下書きを作り、人がルールに沿って仕上げる方法が一般的です。
- 01
用途と仕上げの段階を決める
研究・記事・議事録・記録のどれに使うかを決め、素起こし・ケバ取り・整文のどこまで仕上げるかを選びます。
- 02
聞き取りやすく録音する
話者の近くにマイクを置き、試し録りで全員の声を確認します。録音の質は後から取り戻せません。
- 03
AIで下書きを作る
録音をアップロードして文字起こしします。話者の区別と時刻があると、後の確認が楽になります。
- 04
表記ルールを書き出す
フィラー、言い直し、相づち、数字、用語の扱いを決め、作業者全員で共有します。
- 05
ケバ取り・整文をする
原文を残したまま、別の版として仕上げます。AIに整文の下書きを頼む場合も、原文の版は消しません。
- 06
音声と照合する
数字・固有名詞・否定・条件・話者を元の音声で確かめ、聞き取れない箇所は時刻とともに残します。
早く正確に仕上げる文字起こしのコツ
原文の版を必ず残す
素起こし(またはAIの出力そのまま)を保存してから編集します。整文の版だけでは、後から発言を確かめられません。
数字・否定・条件から確認する
「15日まで」「〜しない」「〜なら」は、誤ると意味が逆になります。全文を聞き直す時間がなければ、ここを優先します。
固有名詞は用語集で直す
同じ誤変換を1つずつ直すより、用語集や一括置換で表記をそろえるほうが速く、漏れも減ります。
確からしさの言葉を消さない
「たしか」「〜と思う」「たぶん」は、発言の確度を示す情報です。整文でも消すと内容が変わります。
聞こえない箇所を推測で埋めない
時刻付きで[聞き取り不能]と残し、必要なら話者に確認します。AIが自然な文で埋めた箇所にも注意します。
仕上げの段階を文書に書く
冒頭に「ケバ取り済み・整文なし」などと書くと、読む人が引用に使ってよいかを判断できます。
AIに整文の下書きを頼むときの指示文
文字起こしをAIに渡して整文の下書きを作る場合は、消してよいもの・変えてはいけないものを指示に含めます。次の指示文はコピーして使えます。
Klangでは、文字起こしをもとにAIの要約やチャットを使えます。文字起こしは音声を再生しながら編集でき、文をクリックして元の音声を確認できます。AIが作った文章は、元の文字起こしと音声で確認してから使ってください。
整文の下書きを作るための指示文
次の文字起こしを「整文」してください。 条件: - フィラー(えー、あの、えっと、まあ、うーん)と単純な繰り返しを削除する - 言い直しは、最終的に言い直した内容だけを残す - 話し言葉を、です・ます調の書き言葉に整える - 数字は算用数字にし、4桁以上は3桁ごとにコンマを入れる - 「たしか」「と思います」など、話者の確からしさを表す言葉は消さない - 話者が言っていない情報・数字・結論を足さない - 聞き取れない箇所や意味が取れない箇所は[要確認]と書き、推測で埋めない 文字起こし: (ここに本文を貼り付け)
AIの整文は下書きです。数字・固有名詞・否定・条件が元の発言と一致しているか、必ず文字起こし本文と音声で照合してください。
素起こしの下書きはAIで。仕上げに時間を使う
Klangは録音をアップロードするだけで文字起こしを作成し、元の音声を聞きながら編集できます。フリープランは文字起こし無制限。用語集と話者の自動識別はプロプランで使えます。
- 文をクリックして元の音声を確認
- Word・TXT・SRTなどで書き出し
- AIの要約・チャットで議事録の下書き
よくある質問
ケバ取りと整文の違いは何ですか?
ケバ取りは「えー」「あの」などのフィラーや単純な繰り返しを取り除くだけで、話し言葉の言い回しは残します。整文はさらに、言い直しをまとめ、文を区切り、書き言葉に近づけて読みやすい文章に整えます。
素起こしとは何ですか?
素起こしは、聞こえた言葉を言いよどみや言い直しも含めてそのまま書く文字起こしです。会話分析の研究や、発言を正確に残す必要がある記録に使います。読みにくいため、共有用には別の版を作ることがあります。
「あの」は必ず削除してよいですか?
いいえ。「あの資料」のように指示語として使われている「あの」は意味があるため残します。フィラーかどうかは文脈で判断するため、機械的な一括削除のあとは人が読み直してください。
議事録には整文と要約のどちらを使いますか?
発言の経緯まで残したい会議録には整文、決定事項とToDoを素早く共有したい議事録には要約が向いています。どちらの場合も、元の文字起こしを保存しておくと、後から発言を確認できます。
AIの文字起こしはケバ取り済みで出力されますか?
サービスやモデルによって異なり、フィラーを自動で省くものもあれば、残すものもあります。研究などで言いよどみが必要な場合は、AIの出力で省略されていないかを音声で確認してください。