反訳・反訳書
反訳とは。録音を証拠として出すための反訳書の作り方
反訳は、録音した会話を文字にした書面のことで、裁判では録音データと一緒に「反訳書」を出すのが基本です。民事訴訟規則の定め、反訳書の書式と表記、証拠説明書の書き方、AIの文字起こしを使うときの確認、秘密録音の考え方を、出典つきで整理しました。
公開日:更新日:執筆・運営:Klang AI AB
用語
反訳・文字起こし・逐語録の違い
どれも音声を文字にする作業ですが、使われる場面と求められる正確さが違います。反訳は、法律実務や速記の分野でよく使われる言葉です。
会議の文字起こしでは、読みやすくするために「えー」などを削ったり、文を整えたりすることがあります。証拠として出す反訳書では、こうした編集が「内容を変えた」と受け取られるおそれがあるため、言いよどみや言い直しも残すのが基本です。
| 呼び方 | 主に使われる場面 | 書き方の特徴 |
|---|---|---|
| 反訳・反訳書 | 裁判の証拠、法律相談、議会・審判の記録 | 聞こえたとおりに書く。時刻、話者、聞き取れない箇所を明示 |
| 逐語録 | 研究インタビュー、カウンセリング | 分析の目的に合わせた表記ルールで発言を記録 |
| 文字起こし(書き起こし) | 会議、取材、動画の字幕など広く | 目的に応じて、言いよどみを除いたり整文したりする |
| 議事録 | 会議 | 決定事項や要点をまとめる。発言を全部は書かない |
ルール
民事訴訟の手続きで決まっていること
反訳書の細かな書式を定めた法令はありません。手続きのルールとして決まっているのは、主に次の点です。2026年5月21日に施行された民事訴訟のIT化で、録音データ(電磁的記録)を前提にした規定が加わりました。
裁判所の案内には、録音の反訳書の提出を求めるものがあります。たとえば大津地方裁判所民事部の「証拠説明書の提出について」は、会話を録音したテープや電子データを書証として出す場合は必ず反訳書を出すよう求め、録音(甲6の1)と反訳書(甲6の2)を枝番で分けた記載例を示しています。札幌家庭裁判所は、まず反訳書面を書証とし、正確性を確認してもらうために録音の複製を相手方に送る運用を案内しています。
運用は裁判所や事件によって異なります。代理人がいる場合は弁護士の指示に、本人で手続きをする場合は担当の書記官の案内に従ってください。
| 規定 | 内容 |
|---|---|
| 民事訴訟規則 第149条 | 録音テープ等の証拠調べを申し出た当事者は、裁判所または相手方の求めがあるときは、その内容を説明した書面(反訳した書面を含む)を提出しなければならない。相手方に直送し、相手方は意見があれば書面で提出する |
| 民事訴訟規則 第144条 | 録音データ等や録音テープ等を反訳した文書を書証として出した当事者は、相手方から求められたら、録音データ等を提供するか録音テープ等の複製を渡さなければならない |
| 民事訴訟規則 第148条 | 録音テープ等の証拠調べを申し出るときは、証拠説明書で、録音の対象、日時、場所も明らかにする |
| 民事訴訟規則 第137条 | 書証を申し出るときは、文書の標目、作成者、立証趣旨を明らかにした証拠説明書を出す |
| 民事訴訟法 第231条の2、規則 第149条の2〜第149条の4 | 電磁的記録に記録された情報の証拠調べは、その電磁的記録を提出するなどして申し出る。録音データ等にも第148条・第149条の考え方が及ぶ |
見本
反訳書のレイアウト見本
架空の電話の会話で、反訳書の一例を作りました。裁判所が定めた書式ではなく、実務でよく見られる要素をまとめたものです。A〜Eの印は、右の説明に対応しています。
反訳書
- 事件の表示
- 令和8年(ワ)第○○○号 業務委託代金請求事件
- 証拠番号
- 甲第3号証の2(本反訳書)/録音データは甲第3号証の1
- 録音ファイル
- 20260512_通話.m4a(再生時間 00:12:40、SHA-256:3f9a…c21e)
- 録音日時・方法
- 2026年5月12日 15時12分頃から。原告代表者山田が携帯電話で通話を録音
- 話者
- 山田:原告代表者 山田一郎/佐藤:被告担当者 佐藤次郎(声と会話の内容から特定)
- 反訳の範囲
- 00:00:00〜00:01:10(全体のうち冒頭部分)
- 反訳者・作成日
- 株式会社△△反訳サービス 反訳者 高橋 2026年6月3日
凡例 (聴取不能)聞き取れない箇所/〔○○か〕聞き取りに自信がない語/(沈黙・約○秒)録音で測った沈黙/……言いさし/(同時発話)発言の重なり/〈 〉反訳者の注記
| 時刻 | 話者 | 発言内容 |
|---|---|---|
| 00:00:03 | 山田 | もしもし、山田です。先日お送りした請求書の件でお電話しました。 |
| 00:00:09 | 佐藤 | ああ、はい、佐藤です。 |
| 00:00:12 | 山田 | 4月分の作業代金、まだ入金が確認できていなくて。 |
| 00:00:18 | 佐藤 | すみません。えー、経理には回してるんですけど、(聴取不能・約2秒)が、今月末には払えると思います。 |
| 00:00:31 | 山田 | 今月末ですね。5月31日ということでよろしいですか。 |
| 00:00:35 | 佐藤 | はい、31日までには、はい。 |
| 00:00:38 | 山田 | 金額は、請求書どおり88万円で。 |
| 00:00:41 | 佐藤 | 88万で……。(沈黙・約4秒)はい、大丈夫です。 |
| 00:00:50 | 山田 | 〔分割か〕、一括か、どちらになりますか。 |
| 00:00:54 | 佐藤 | 一括で。(同時発話) |
| 00:00:55 | 山田 | (同時発話)分かりました。では、よろしくお願いします。 |
| 00:01:01 | 〈通話が切れる〉 |
反訳者の付記
- ・上記は、録音ファイルを再生し、聞き取れたとおりに反訳したものである。
- ・00:00:20付近は、走行中の車両の音と重なり聞き取れなかった。
- A何を反訳したか事件、証拠番号、録音ファイル名と再生時間、反訳した範囲。録音データと反訳書の対応が一目で分かるようにします。
- B話者の特定話者の表記と、その人が誰か、どう特定したか。同じ人は最後まで同じ表記にします。
- C時刻録音ファイルの再生位置。相手方や裁判所が該当箇所をすぐ再生できるようにします。
- D聞き取れない箇所推測で埋めず、(聴取不能)や〔○○か〕で示します。数字・金額・日付は特に慎重に。
- E反訳者と付記誰がいつ作ったか、雑音などで聞き取れなかった事情。作成者は証拠説明書にも書きます。
反訳書のWordテンプレート
1ページ目が空欄、2ページ目が上の記載例です(A4縦)。表の行は必要なだけ増やしてください。表紙や証拠番号の書き方は、代理人の弁護士や提出先の指示に合わせて変更します。
反訳書テンプレート(Word)登録不要・無料。表記は一般的な実務の例で、裁判所が定めた書式ではありません。
表記
聞き取れない箇所・沈黙・重なりの表記
反訳の表記記号に、法令や裁判所が定めた統一の決まりはありません。大切なのは、同じ反訳書の中で表記をそろえ、冒頭に凡例として示すことです。以下はこのページのテンプレートで使っている例です。
- 数字・金額・日付・固有名詞・否定(「〜ない」)は、聞き間違えると意味が逆になります。必ず録音を聞き直して確かめます
- 方言や言い間違いは直さずに書きます。意味の補足が必要なら〈注記〉で示します
- 録音の一部だけを反訳するときは、反訳した範囲を時刻で明記し、残りを省いた理由を代理人と確認します
| 表記 | 意味と使い方 |
|---|---|
| (聴取不能) | 聞き取れない箇所。長さが分かるときは(聴取不能・約3秒) |
| 〔○○か〕 | 聞き取りに自信がない語。推測であることを示す |
| (沈黙・約4秒) | 話が途切れた時間。録音で測った場合だけ秒数を書く |
| …… | 言いさし・言葉が途中で切れた箇所 |
| (同時発話) | 二人の発言が重なった箇所 |
| 〈〉 | 反訳者の注記(物音、通話の切断、録音の中断など) |
証拠説明書
証拠説明書への書き方
録音データと反訳書を出すときは、証拠説明書にそれぞれを記載します。民事訴訟規則第137条・第148条と、裁判所の案内に沿った記載例です(架空の事件)。
録音者(誰が録音したか)も、実務上記載を求める裁判所があります。録音の全体のうち一部だけを反訳した場合は、標目に範囲を書いておくと、相手方が録音の該当箇所を確かめやすくなります。
| 号証 | 標目 | 原本・写し | 作成日 | 作成者 | 立証趣旨 |
|---|---|---|---|---|---|
| 甲3の1 | 録音データ(20260512_通話.m4a。録音対象:原告代表者と被告担当者の電話での会話、録音日時:2026年5月12日15時12分頃、録音場所:原告事務所) | 原本 | 2026年5月12日 | 原告代表者 山田一郎 | 被告担当者が、4月分の作業代金88万円を5月31日までに一括で支払うと述べた事実 |
| 甲3の2 | 反訳書(甲3の1の00:00:00〜00:01:10) | 原本 | 2026年6月3日 | 株式会社△△反訳サービス 高橋 | 同上 |
AIの活用
AIの文字起こしで下書きを作り、人が全行を確かめる
AIの文字起こしは、反訳の「最初の下書き」を速く作るのに向いています。一方で、証拠として出す反訳書は、反訳者が録音を聞いて全行を確認したものでなければなりません。
- 01
録音の原本を保存し、作業用のコピーを使う
元のファイルは編集せずに保管し、ファイル名、再生時間、必要に応じてハッシュ値を記録します。文字起こしには複製を使います。
- 02
Klangにアップロードして下書きを作る
録音ファイル(mp3、m4a、wavなど、10GBまで)をアップロードすると、時刻つきの文字起こしができます。フリープランでも文字起こしは無制限です。話者を自動で分ける話者の自動識別はプロプランの機能で、フリープランでは話者名を手で割り当てます。
- 03
録音を聞きながら全行を直す
再生しながら一行ずつ確認し、聞き取れない箇所は(聴取不能)に置き換えます。AIが自然な文に補った箇所、話者の取り違え、数字・日付・否定は特に注意します。
- 04
時刻と話者つきでWordに書き出し、テンプレートに貼る
時刻と話者名を含めてWordなどに書き出し、このページのテンプレートの表に貼り付けます。表紙の情報と反訳者の付記を書き、反訳者が最終確認します。
- AIは聞き取りにくい箇所を「それらしい言葉」で埋めることがあります。証拠では、それが最も危険な誤りです
- 話者の自動識別は、声の似た人や電話の音質では取り違えることがあります。話者は必ず人が確定させます
- AIで作った下書きであることと、誰が確認したかを、作業記録として残しておくと説明しやすくなります
外注
反訳を業者に頼むときに伝えること
反訳を専門の業者に頼む場合、見積もりと仕上がりは、最初に伝える条件で大きく変わります。依頼の前に次の項目を決めておくと、やり直しを防げます。
費用を抑えたい場合は、AIの文字起こしで全体の下書きを作り、争点に関わる区間だけを業者に反訳してもらう、あるいは下書きの確認(校正)だけを頼む方法もあります。どの方法でも、最終的に録音と照合した人が誰かを記録しておきます。
| 項目 | 決めること | 決めないと起きること |
|---|---|---|
| 反訳する範囲 | 録音の全体か、時刻で区切った一部か(例:00:12:30〜00:25:10) | 不要な部分まで反訳され、費用と納期が増える |
| 起こし方 | 言いよどみも残す素起こしか、読みやすく整えるか。証拠用なら素起こし | 「えー」や言い直しが削られ、証拠として使いにくくなる |
| 話者の呼び方 | 「原告代表者」「被告担当者」など、反訳書に書く話者名と、声の特徴のメモ | 話者がA・Bのまま納品され、人の確認が二度手間になる |
| 表記ルール | 聴取不能、沈黙、重なりの記号。このページの凡例を渡してもよい | 業者ごとの記号が混ざり、凡例を作り直すことになる |
| 納品形式 | Wordの表形式か、テキストか。時刻を何秒ごと(または発言ごと)に付けるか | 証拠説明書や準備書面に引用しにくい形で届く |
| 秘密の保持 | 秘密保持契約、録音データの受け渡し方法、作業後のデータ削除 | 録音が業者の手元に残り続ける |
会議・議会
会議や議会の録音を反訳するとき
反訳という言葉は、裁判の証拠のほか、議会や審議会の会議録づくり、取材の記録でも使われます。目的によって、どこまで「聞こえたとおり」に書くかが違います。
| 目的 | 仕上げ方 | 関連するガイド |
|---|---|---|
| 裁判の証拠 | 素起こし。言いよどみや言い直しも残し、聞き取れない箇所は推測しない | このページ |
| 議会の会議録 | 発言の趣旨を変えない範囲で整文し、発言者・議事の経過を残す。会議規則や要領に従う | 議会の議事録(会議録)の作り方 |
| 社内会議・審議会の会議録 | 発言の要旨を残す要点筆記が多い。公開する場合は事前に発言者の確認をとる | 会議録とは |
| 記者会見・取材 | 引用する部分は一字一句を録音で確認し、ほかは要旨でまとめる | 記者会見の文字起こし |
秘密録音
相手に無断で録音した会話は証拠になるか
会話の当事者が相手に告げずに録音すること(いわゆる秘密録音)について、当事者が自分の会話を録音すること自体を直接禁じる法律の規定は見当たりません。ただし、証拠として使えるかどうかは、録音の方法や状況によって個別に判断されます。「録音すれば必ず証拠になる」とも「無断の録音は使えない」とも言えません。
これらは事案に即した判断で、別の事件にそのまま当てはまるとは限りません。会話の当事者による録音か、第三者が他人の会話をひそかに録音したものかでも、問題になる法律が変わります。たとえば電気通信事業法第4条などは、通信の秘密を侵すことを禁じています。
録音を証拠として使えるかどうか、録音した内容を誰にどこまで開示してよいかは、プライバシーや名誉の問題も絡みます。実際の事件では、録音の経緯を弁護士に説明したうえで判断してください。職場での録音のルールづくりは、カスタマーハラスメント対策の録音に関する同意のガイドでも扱っています。
| 裁判例 | 判断の内容 |
|---|---|
| 東京高裁 昭和52年7月15日判決(判例時報867号60頁) | 民事訴訟で、証拠が著しく反社会的な手段を用いて人の精神的・肉体的自由を拘束するなど、人格権の侵害を伴う方法で集められたときは、証拠能力を否定されてもやむを得ないとした。事案では、相手に知らせずに録音した酒席の会話の証拠能力を認めた |
| 最高裁 平成12年7月12日決定(刑集54巻6号513頁) | 刑事事件。詐欺の被害を受けたと考えた者が、後日の証拠とするため相手方との会話を録音したことは、相手方の同意がなくても違法ではなく、録音テープの証拠能力は否定されないとした |
| 東京高裁 平成28年5月19日判決 | 大学のハラスメント防止委員会の非公開の審議を無断で録音したものについて、収集の方法や態様、侵害される利益、証拠としての重要性などを総合考慮し、信義則に反するとして証拠から排除した |
録音から反訳の下書きまでを、時刻と話者つきで
Klangは、録音ファイルをアップロードするだけで、時刻つきの文字起こしを作ります。録音を聞きながら同じ画面で修正し、時刻と話者名を含めてWordやテキストに書き出せます。反訳書の最終確認は人が行う前提で、下書きにかかる時間を短くします。
- 音声はmp3・m4a・wav・aacなど、動画はmp4・movなど。1ファイル10GBまでアップロードできます
- 文字起こしはフリープランで無制限。話者の自動識別と用語集はプロプランの機能です
- ISO 27001:2022の認証を取得し、データは通信時も保存時も暗号化。お客様のデータをAIの学習に使いません
よくある質問
反訳とは何ですか。
録音・録画された音声を聞き取り、文字に書き起こすこと、またはその書面です。裁判で録音を証拠として出すときに添える書面を反訳書と呼び、民事訴訟規則にも「録音テープ等を反訳した書面」という言葉があります。
裁判で録音を出すとき、反訳書は必ず必要ですか。
民事訴訟規則第149条は、裁判所または相手方の求めがあるときに、録音の内容を説明した書面(反訳した書面を含む)を出すよう定めています。実務では録音と一緒に反訳書を出すよう求められることがあり、大津地方裁判所の案内のように「必ず反訳書を提出してください」と明記している例もあります。
反訳書は自分で作ってもよいですか。
法令上、反訳書の作成者についての決まりは見当たりません。ただし、内容の正確さを相手方から争われることがあるため、録音を聞いて全行を確認し、聞き取れない箇所を推測で埋めないことが大切です。重要な事件では、代理人の弁護士と相談し、専門の反訳業者に依頼することも検討してください。
AIの文字起こしをそのまま反訳書にしてもよいですか。
そのまま使うのは避けてください。AIは聞き取りにくい箇所を自然な言葉で補ったり、話者を取り違えたりすることがあります。AIの結果は下書きとして使い、録音を聞きながら全行を人が確認・修正したものを反訳書にしてください。
反訳を業者に頼むときは、何を伝えればよいですか。
反訳する範囲(時刻)、素起こしか整文か、反訳書に書く話者名、聴取不能などの表記ルール、納品形式(Wordの表など)、秘密保持とデータの削除方法を伝えます。証拠として使う場合は、言いよどみも残す素起こしを指定してください。
相手に無断で録音した会話は証拠になりますか。
一律には決まっていません。裁判例では、会話の当事者による録音の証拠能力を認めたものがある一方、著しく反社会的な方法で集めた証拠や、非公開の会議を無断で録音したものについて証拠能力を否定した例もあります。録音の経緯によって判断が変わるため、弁護士に相談してください。

