法務部・知財部・コンプライアンス
企業法務・法務部のAI活用。契約書の外にある相談・交渉・ヒアリングを記録に。
契約書の審査と作成は、契約審査AIの領域です。法務部の仕事には、事業部からの法務相談、契約交渉の会議、社内調査のヒアリングのように、契約ツールが触れない「話す」仕事があります。その会話を録音から記録にして業務効率化する方法を、法務省のガイドラインとの関係とあわせて業務別に整理しました。
更新日:執筆・運営:Klang AI AB
法務の仕事別:向いているAIと、Klangが受け持つ部分
「法務 AI」と検索すると、契約審査AIの比較記事が並びます。契約書の仕事はその通りですが、法務部の時間は契約書だけに使われているわけではありません。仕事ごとに、向いているAI、Klangの役割、人が判断することを分けると次のとおりです。
表の「対象外」は、Klangを使わない仕事です。契約書の条項を読んでリスクを指摘する機能は、Klangにはありません。
外部の弁護士との打ち合わせは、法律事務所の側でも記録を作ります。弁護士の側の使い方は、法律事務所の打ち合わせ記録のページで紹介しています。
| 法務の仕事 | 向いているAI | Klangの役割 | 人が判断すること |
|---|---|---|---|
| 契約審査 | 契約審査AI(リーガルテック) | 対象外 | リスクの許容範囲、修正案の採否 |
| 契約書の作成 | リーガルテックの契約書作成・ひな形管理のツール | 対象外 | 取引の実態に合った条項の選択 |
| 事業部からの法務相談 | AI議事録・文字起こし | 相談の録音から相談記録と回答期限のタスクを作る | 法的な見解と回答の内容 |
| 契約交渉の会議 | AI議事録・文字起こし | 論点・相手方の提案・持ち帰り事項を交渉記録に下書きする | 譲歩の範囲、合意したかどうかの確定 |
| 社内調査・ハラスメント調査のヒアリング | AI議事録・文字起こし | 聴取の文字起こしを時刻つきで残し、発言を検索できるようにする | 事実の認定と処分の判断 |
| 発明者ヒアリング(知財) | AI議事録・文字起こし | 発明の説明を文字起こしし、発明提案書の下書きの材料にする | 発明の内容が正しいかの確認 |
| 先行技術調査・明細書の作成(特許) | 特許調査・明細書作成を支援するAI | 対象外 | 特許性の判断、請求項の範囲 |
| 法令調査 | 生成AI、リーガルテックのリサーチツール | 対象外 | 原典による確認と、自社への当てはめ |
| 株主総会・取締役会の対応 | AI議事録・文字起こし | 会議の録音から議事録の下書きと質疑の記録を作る | 議事録の記載事項と、決議の内容 |
契約審査AIと弁護士法第72条:法務省のガイドラインが示していること
弁護士法第72条は、弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、一般の法律事件に関して鑑定、代理、和解その他の法律事務を取り扱うことを業とすることを禁じています。法務省は、AIを使った契約書関連のサービスとこの条文の関係について、令和5年8月にガイドラインを公表し、令和8年8月21日に新しいガイドラインで補いました。
ガイドラインが検討しているのは、契約審査AIなどのサービスを提供する事業者の側です。違反かどうかは個別の事実関係で判断され、最終的には裁判所の判断に委ねられるとしています。
令和5年8月のガイドラインは、サービスを導入した会社の職員や役員である弁護士が、自社が当事者となっている契約について、サービスの結果も踏まえて契約書を自ら精査し、必要に応じて自ら修正する方法で使う場合は、通常、同条に違反しないと考えられるとしています。
令和8年8月のガイドラインの概要は、一定の設計と体制の整備を条件に、一般的に同条に抵触しないと考えられるサービスの例を挙げています。書面作成・審査・管理の支援、内部通報事案の調査支援、トラブル対応の方針を決めるための内部調査支援、株主総会・取締役会その他の会議業務支援などです。一方で、訴状などの裁判所への提出書面や、和解契約書のように法的紛議を前提とした対外向けの書面の作成に係るサービスは、抵触すると評価され得る例として挙げています。
契約審査AIを選ぶときは、ベンダーがこのガイドラインをどう踏まえているかを確認します。Klangは会話を文字にして要約するツールで、法的な見解を示す機能はありません。
例:ライセンス契約のWeb会議40分が、交渉記録とタスクになるまで
物流会社の法務部が、業務システムのクラウドサービス利用許諾契約について、提供元のベンダーとTeamsで交渉した例です(架空)。論点は責任制限、再委託、契約終了後のデータ消去の3つです。冒頭で相手方の了承を得て、Klangの会議ボットで録音しました。
下書きは、交渉の内容を「論点」「相手方の提案」「当方の回答」「持ち帰り事項」に分けて作ります。項目の名前と順番は、法務部の交渉記録の書式に合わせて指示できます。
交渉記録で一番まちがえやすいのは、合意した事項と持ち帰った事項の区別です。下書きをそのまま記録にせず、条項ごとにタイムスタンプの位置で元の発言を聞き直してから確定します。
文字起こし(抜粋)
- 00:12田中(当社法務)記録のため、この会議を録音させていただいてもよろしいでしょうか。
- 00:18佐藤(相手方法務)はい、どうぞ。確認1
- 03:10田中(当社法務)第12条の責任の上限が「直近12か月に支払った利用料」だと、480万円が上限になります。個人データの漏えいは、上限の対象外にしていただけませんか。
- 03:42佐藤(相手方法務)全面的に外すのは難しいです。個人データの漏えいに限って、上限を利用料の2倍にする案ならご検討いただけます。確認2
- 12:30佐藤(相手方法務)第8条の再委託は、事前の承諾制だと運用が回りません。再委託先の一覧を開示して、変更は30日前に通知する形でいかがでしょう。
- 12:58田中(当社法務)情報システム部とも相談したいので、いったん持ち帰ります。確認3
- 25:14佐藤(相手方法務)第15条のデータ消去は、契約終了から30日以内に、バックアップも含めて消去し、消去証明書をお出しします。
- 25:40田中(当社法務)その内容で結構です。条文案をいただけますか。確認4
- 37:20佐藤(相手方法務)第12条と第15条の修正案は、来週の水曜までにお送りします。確認5
- 37:35田中(当社法務)再委託のご提案への回答は、来週の金曜までにお返しします。
Klangが作る下書き
- 論点
- 第12条 責任制限:損害賠償の上限と、個人データの漏えいの扱い
- 第8条 再委託:事前の承諾か、通知か
- 第15条 データ消去:消去の期限、バックアップの扱い、消去の証明
- 相手方の提案
- 第12条:個人データの漏えいに限り、上限を利用料の2倍とする
- 第8条:再委託先の一覧を開示し、変更は30日前に通知する
- 第15条:契約終了から30日以内にバックアップを含めて消去し、消去証明書を出す
- 当方の回答
- 第12条:個人データの漏えいを上限の対象外とするよう求めた。相手方の案への回答は未了
- 第8条:持ち帰り(情報システム部と協議)
- 第15条:了承。条文案の提示を依頼
- 持ち帰り事項(タスク)
- ソラリス・システムズ 佐藤:第12条・第15条の修正案を送付(10月21日(水)まで)
- 当社法務部 田中:第8条の再委託案への回答(10月23日(金)まで)
- 当社法務部 田中・情報システム部 森:第12条の上限案を事業部と検討
記録にする前に確認すること
- 確認100:18 相手方が録音に同意した発言が残っているかを確かめ、交渉記録の冒頭に「録音について相手方の了承を得た」と書きます。
- 確認203:42 「利用料の2倍」が、何か月分の利用料の2倍なのかは発言からは決まりません。金額と条項番号は、録音と契約書案の版を照らして確かめ、不明な点は相手方に確認します。
- 確認312:58 「持ち帰ります」は合意ではありません。下書きが第8条を「合意」と書いていないかを確かめます。
- 確認425:40 口頭で「結構です」と言っても、条文案を見るまで最終の合意ではありません。記録には「方向性は了承。条文案を確認のうえ確定」と書き分けます。
- 確認537:20 「来週の水曜」は交渉日から数えて「10月21日(水)」のように日付に直し、送付する側が相手方であることも記録します。
契約ツールが触れない、法務部の「話す」仕事
法務部の仕事のうち、会話で進むものは記録の作り方が決まっていないことが多く、担当者のメモに頼りがちです。録音があれば、あとから発言の時刻で確かめられます。
事業部からの法務相談
相談の背景、事業部が知りたいこと、回答の期限を相談記録に残します。過去の相談を案件名や取引先名で検索すると、同じ論点の相談を探せます。
契約交渉の会議
条項ごとに、相手方の提案、当方の回答、持ち帰り事項を残します。担当者が替わっても、交渉の経緯を発言から追えます。
社内調査・ハラスメント調査のヒアリング
聴取の文字起こしを時刻つきで残し、発言の確認に使います。調査対象者の発言と聴取者の質問を分けて記録します。
事業部向けの法務研修・説明会
研修や説明会の質疑を文字起こしから拾い、事業部からよく出る質問を整理します。
取締役会・経営会議への報告
訴訟や重要な契約の報告で出た質問と指示を、議事録の下書きとタスクにします。
外部の弁護士との打ち合わせ
顧問弁護士から受けた助言と、社内で対応することを分けて残します。助言の内容は、発言の時刻で確かめてから社内に共有します。
知財部・特許のAI活用:発明者ヒアリングを発明提案書の材料に
特許のAI活用で話題になるのは、先行技術の調査や、明細書・請求項の下書きを支援する特許向けのAIです。Klangはどちらも行いません。Klangが受け持つのは、その手前にある発明者ヒアリングの記録です。
Klangの下書きは発明提案書の材料で、提案書そのものではありません。発明の内容が正しく書かれているかは、発明者本人が確かめます。
先行技術の調査、特許性の判断、請求項の作成は、知財部の担当者と弁理士の仕事で、特許調査のツールの領域です。ヒアリングの録音は未公開の発明そのものなので、閲覧できるメンバーを知財部と発明者に限ったフォルダに保存します。
| 発明提案書の項目 | ヒアリングで聞くこと | Klangの下書き |
|---|---|---|
| 発明の概要 | 何を作り、何ができるようになったか | 発明者の説明を要約し、発言の時刻を添える |
| 従来技術と課題 | これまでのやり方と、困っていた点 | 発明者が挙げた従来のやり方と課題を拾い出す |
| 解決手段 | 課題をどう解決したか、仕組みの要点 | 仕組みの説明を発言の順に整理する |
| 効果 | 数値や比較で示せる違い | 発言に出た数値と、比較の条件を一覧にする |
| 実施例・変形例 | ほかの材料や構成でも成り立つか | 別の構成や用途に触れた発言を一覧にする |
録音の同意と守秘:法務の会話をツールに預ける前の確認項目
交渉の相手方や社内調査の対象者の発言は、社外秘の中でも扱いの重い情報です。録音を始める前と、ツールを選ぶ前に、次の項目を確かめます。
Klangの文字起こしは、社内の記録や確認のためのものです。録音を訴訟や労働審判の証拠として出す場合は、発言をそのまま書き起こした反訳書を別に作ります。反訳書の書き方は、反訳のガイドで説明しています。
| 確認すること | Klangの場合・運用の例 |
|---|---|
| 録音の同意 | 会議の冒頭で録音の目的を伝え、相手方の了承を得る。了承の発言も録音に残す |
| 会話データをAIの学習に使うか | 使いません |
| 第三者の認証 | ISO/IEC 27001:2022の認証を取得しています |
| 閲覧できる人の範囲 | フォルダごとに、見られるメンバーと権限を設定できます |
| 社内調査の記録 | 調査ごとにフォルダを分け、調査担当者だけに閲覧を限る |
| 自社の環境での運用 | オンプレミスでの導入にも対応しています |
法務部で試すときの4つの手順
- 01
法務部内の定例で試す
最初は社外の情報が少ない部内の定例会議を録音し、法律用語や条項番号の文字起こしの精度を確かめます。
- 02
事業部の法務相談で試す
相談者の了承を得て、事業部からの法務相談を1件録音し、相談記録の下書きを作ります。
- 03
交渉記録の書式を指示する
「論点・相手方の提案・当方の回答・持ち帰り事項」のように、部の書式どおりの項目で下書きを作るよう指示します。
- 04
保存先と閲覧範囲を決める
交渉、法務相談、社内調査のフォルダを分け、それぞれ見られるメンバーを決めてから本格的に使います。
法務の会話を、探せる記録に
Zoom・Teams・Google MeetのWeb会議は、会議ボットを参加させて録音できます。対面の相談やヒアリングは、スマートフォンのアプリで録音するか、ICレコーダーの音声ファイルをアップロードします。過去の会話は取引先名や論点で横断検索でき、Wordで書き出して記録に添付できます。
- 会話データをAIの学習に使いません。ISO/IEC 27001:2022の認証を取得しています
- フォルダごとに閲覧できるメンバーを設定できます。オンプレミスでの導入にも対応しています
- 当社と相手方の発言を分ける話者の自動識別は、プロプランの機能です
よくある質問
法務部はAIをどの業務に使えますか。
契約書の審査や作成には、条項のチェックやひな形の提示を行う契約審査AIが向いています。法令や判例の調べ物には、生成AIやリーガルリサーチのツールが補助として使えます。事業部からの法務相談、契約交渉の会議、社内調査のヒアリングのような会話の仕事には、録音から文字起こしと要約を作るAI議事録ツールが向いています。
契約審査AIを社内で使うと、弁護士法第72条に違反しますか。
法務省のガイドラインが検討しているのは、AIで契約書の作成・審査・管理を支援するサービスを提供する事業者の側です。令和5年8月のガイドラインは、サービスを導入した会社の職員や役員である弁護士が、自社が当事者の契約について、結果を踏まえて契約書を自ら精査し、必要に応じて自ら修正する方法で使う場合は、通常、同条に違反しないと考えられるとしています。違反かどうかは個別の事実関係で判断されるため、導入の際はベンダーの説明を確認してください。
Klangで契約書のレビューはできますか。
Klangで契約書のレビューや法的な判断はできません。Klangは会話の記録のためのツールで、法務相談や契約交渉の録音から、タイムスタンプつきの文字起こし、要約、タスクの一覧を作ります。
知財部や特許の仕事にもAIを使えますか。
先行技術の調査や明細書の下書きには、特許向けのAIツールがあります。Klangが使えるのは発明者ヒアリングの記録で、録音から文字起こしと要約を作り、発明提案書の下書きの材料にします。Klangは先行技術の調査、特許性の判断、請求項や出願書類の作成は行いません。
Klangは無料で使えますか。
Klangのフリープランは月額¥0で、文字起こしは無制限、1ファイル10GBまでアップロードできます。クレジットカードの登録は不要です。当社と相手方の発言を自動で分ける話者の自動識別はプロプランの機能で、月払いは1ユーザーあたり¥1,180(税込)です。