人事のAI活用
人事評価はAIに任せられるのか。採用・評価・面談で、人事部がAIを使える範囲。
評価シートの集計や応募書類の要約はAIで速くなりました。それでも、評価を確定させ、本人に理由を伝えるのは評価者と人事部です。評価サイクルと採用の流れに沿ってAIに渡せる作業を分け、上期評価のフィードバック面談34分を記録にした例を載せています。
公開日:更新日:執筆・運営:Klang AI AB
人事評価・人事考課のAI:評価サイクルのどこを任せられるか
「人事評価をAIが行う」と聞くと、点数までAIが付ける姿を思い浮かべがちです。実際に評価サイクルを段階に分けると、AIが速くするのは材料を集めて整える部分で、点数と理由は評価者に残ります。
評価コメントの文案は、生成AIに任せると似た言い回しが並びます。本人が読んで「自分のことだ」と分かるのは、期中の具体的な場面が書かれたコメントです。その場面を拾うには、1on1や面談の記録が残っている必要があります。
評価の点数をAIの出力だけで決めると、本人から理由を聞かれたときに答えられません。AIは集計と文案まで、点数と説明は評価者という線を、評価制度の運用ルールに書いておきます。
| 段階 | AIで速くなる作業 | 評価者・人事部が決めること | 会話が生まれる場面 |
|---|---|---|---|
| 目標設定 | 前期の目標シートから書き方の例を示す | 目標の水準と、部の方針との整合 | 期初の目標設定面談 |
| 期中の記録 | 1on1のメモから成果と課題を拾い出す | 何を評価の材料として扱うか | 1on1、プロジェクトの振り返り |
| 評価者の評価 | 評価コメントの文案、自己評価との差の一覧 | 評価の点数と、その根拠 | — |
| 調整会議 | 部署ごとの評価の分布の集計 | 部署間のばらつきの調整 | 部長・人事部の評価調整会議 |
| フィードバック | 面談の録音から伝えた内容と合意を下書きする | 本人への説明と、納得を得るための対話 | フィードバック面談 |
採用でAIを活用するときの線引き:職業安定法第5条の5と面接の録音
採用はAIの導入が早く進んだ分野です。応募書類の要約、日程の調整、求人票の文案はAIで短くなりました。合否の判断と、応募者の個人情報の扱いは、会社の責任として残ります。
職業安定法第5条の5は、労働者の募集を行う者に、求職者の個人情報を業務の目的の達成に必要な範囲で、目的を明らかにして収集し、その目的の範囲内で保管・使用することを求めています。面接を録音するなら、「面接の記録を作り、選考に使う」と目的を伝えてから始めます。
選考が終わったあとの録音をいつ消すかも、目的とあわせて決めます。不採用になった応募者の録音を、別の目的で使い続けることはできません。
内定を出す段階では、労働基準法第15条により、賃金や労働時間などの労働条件を明示する必要があります。面接で話した条件と、明示した書面が食い違っていないかを確かめるときに、面接の記録が役に立ちます。
人事のAI活用事例:上期評価のフィードバック面談34分を記録にする
従業員300人ほどの電機メーカーで、営業課長が部下に上期の評価を伝えた面談です(架空)。面談のあと、課長が録音をKlangにアップロードし、人事部の面談記録の様式で下書きを作りました。
この例で下書きに付けた見出しは、「本人の振り返り」「評価者からの伝達」「合意した目標」「タスク」です。評価者の発言と本人の発言が混ざらないように見出しを分けておくと、あとで「何を伝えたか」をめぐる食い違いが起きにくくなります。
通院の話のように評価と関係のない事情は、評価の記録に入れません。配慮の相談として別の記録に移し、見られる人を人事部の担当者に絞ります。
文字起こし(抜粋)
- 02:10課長上期は、新しい取引先を3社開拓できましたね。目標は2社でした。
- 05:45社員見積りの返事が遅れて、1件は失注しました。そこは反省しています。
- 11:20課長評価はBの予定ですが、部の調整会議で変わることもあります。確認1
- 16:30社員下期は後輩の育成も目標に入れたいです。
- 19:05社員実は8月から腰の治療で通院していて、出張は少し減らしてもらえると助かります。確認2
- 27:40課長下期の目標シートは、来月の第1金曜までに出してください。確認3
Klangが作る下書き
- 上期の振り返り(本人の発言)
- 新規の取引先を3社開拓(目標2社)
- 見積りの回答が遅れ、1件を失注したことを反省点に挙げた
- 評価者からの伝達
- 評価は現時点でBの予定。部の調整会議で変わる可能性があると伝えた
- 下期の目標(合意した方向)
- 新規開拓の継続
- 後輩の育成を目標に加える
- タスク
- 社員:下期の目標シートを11月6日(金)までに提出する
- 課長:出張の割り当てについて、人事部と相談する
記録にする前に確認すること
- 確認111:20 「Bの予定」は確定した評価ではありません。記録には伝えた言葉どおりに残し、調整会議のあとの最終の評価は評価者と人事部が別に書きます。
- 確認219:05 通院の話は病歴にあたり、個人情報保護法の要配慮個人情報です。評価の記録からは外し、配慮の相談として人事部の限られた担当者だけが見られる記録に分けます。
- 確認327:40 「来月の第1金曜」は11月6日(金)です。下書きでは日付に置き換えて、社員のタスクに入れました。
人事部が記録を持つ6つの面談と、それぞれの注意点
同じ「面談の記録」でも、誰が読むか、どこまで書くかは面談の種類で変わります。
| 面談 | 記録を読む人 | 書くこと・書かないこと |
|---|---|---|
| 採用面接 | 面接官、採用担当 | 質問と回答、評価の根拠。選考に関係のない家族や思想の話は聞かない |
| 評価のフィードバック面談 | 評価者、人事部 | 伝えた評価と理由、合意した目標。確定前の評価は「予定」と書く |
| 1on1 | 上司と本人 | 合意とタスク。評価の材料に使うかは事前に決めて伝える |
| 休職・復職の面談 | 人事部の担当者、産業医 | 体調の話は要配慮個人情報。録音は本人の同意を得てから |
| 退職面談 | 人事部 | 退職の理由と、組織として直せること。個人への批判はそのまま回覧しない |
| 労使協議 | 労使の出席者 | 協議事項、双方の主張、合意した内容と持ち帰り事項 |
ハラスメント相談窓口のヒアリングを記録するとき、会社が守ること
労働施策総合推進法第31条は、職場のパワーハラスメントについて、相談に応じる体制を整えることを事業主に求めています。2026年10月1日からは第33条で、顧客や取引先などの言動による被害についても同じ趣旨の措置が義務になりました。
- 第31条第2項と第33条第2項は、相談したことや事実確認に協力して事実を述べたことを理由に、解雇などの不利益な扱いをすることを禁じています。ヒアリングの記録は、評価や異動を決める人の目に触れない場所に置きます
- 相談者、行為者とされた人、目撃者のヒアリングは、別々の記録に分けます。AIの要約に第三者の名前が出ていないかを、共有の前に読み直します
- 録音するかどうかは、相談者に選んでもらいます。録音しない場合も、聞き取った日時と内容は担当者が書面に残します
面談の録音を始める前に、人事部で決める4つのルール
- 01
利用目的を書いて伝える
個人情報保護法第17条は、利用目的をできる限り特定することを求めています。第21条により、取得したら目的を本人に通知するか公表します。「面談記録の作成のため」と書いた一文を、面談の案内に入れます。
- 02
目的の外で使わない
第18条は、本人の同意なく、特定した目的に必要な範囲を超えて扱うことを禁じています。フィードバック面談の録音を、本人に伝えずに別の選考や調査に使うことはしません。
- 03
体調の話は同意を取ってから
病歴は第2条第3項の要配慮個人情報です。第20条第2項により、法令に基づく場合などを除いて、取得には本人の事前の同意が要ります。
- 04
保存期間を決める
労働基準法第109条は、労働者名簿や賃金台帳、労働関係の重要な書類を5年間保存するよう定めています。面談の録音をどれだけ残すかは、記録の性質を見て社内で決め、期間を過ぎたら消します。
評価面談も採用面接も、人事部だけが開ける記録に
オンラインの面接は、Zoom・Teams・Google Meetに会議ボットを呼んで録音します。対面の面談は、スマートフォンのアプリで録るか、ICレコーダーのファイルを取り込みます。面談の種類ごとにフォルダを作り、招待した担当者だけが中を見られるようにできます。記録はWordやExcelに書き出せます。
- フリープランは¥0で、カード登録なしに文字起こしを無制限に使えます
- 声ごとに発言を分ける話者の自動識別は、プロプラン(月払い¥1,180、年払いは月あたり¥980、税込)です
- ISO/IEC 27001:2022の認証を取得しており、オンプレミスでの導入にも対応しています
よくある質問
人事評価をAIに任せてもよいですか。
評価の材料を集めて整える作業は任せられます。評価データの集計、自己評価との差の一覧、評価コメントの文案がその例です。点数の確定と、本人への理由の説明は評価者が行います。AIの出力だけで点数を決めると、本人に根拠を聞かれたときに答えられません。
人事の仕事はAIでなくなりますか。
なくなるのは集計や転記の時間で、仕事そのものではありません。合否や異動を決め、評価の理由を伝え、休職や退職の相談を受ける仕事には、相手の事情を聞いて判断する人が必要です。
人事部の生成AIの活用事例には、どんなものがありますか。
よく使われるのは、求人票や社内告知の文案、評価コメントのたたき台、就業規則についての社内の問い合わせへの回答です。面談の録音から面談記録を下書きするのも、その一つです。このページの例では、34分のフィードバック面談から、振り返り・伝達・目標・タスクの4項目の下書きを作っています。
採用面接を録音してAIで文字起こししてもよいですか。
職業安定法第5条の5は、求職者の個人情報を、目的を明らかにして必要な範囲で集めることを求めています。録音の目的と保管の期間を面接の前に応募者に伝え、了承を得てから録音してください。合否をAIに決めさせる使い方は避け、録音は面接官の記録の補助にとどめます。
フィードバック面談の記録は、誰が見られるようにすべきですか。
評価者と人事部の担当者に絞るのが基本です。面談で体調や家庭の事情が出た場合は、その部分を評価の記録から外し、配慮の相談として別の記録にします。Klangでは、フォルダごとに見られるメンバーを設定できます。
人事部でKlangを使う費用はいくらですか。
面談や会議の文字起こしと要約は、フリープランで¥0です。評価者と社員の声を自動で分けて表示するにはプロプランが必要で、月払いは1ユーザー¥1,180、年払いは月あたり¥980です(税込)。