金融・銀行のAI活用
金融・銀行のAI活用。銀行員の仕事は残るのか、融資相談の記録で考える。
銀行・証券会社・保険会社のAIを業態ごとに分け、窓口・事務・渉外のどの仕事が変わるのかを整理しました。後半は、法人の設備資金の相談を録音してから面談記録の下書きにするまでを、実際の会話の形で見せます。
公開日:更新日:執筆・運営:Klang AI AB
銀行・証券・保険で、AIはどこに入っているか
同じ「金融のAI」でも、銀行・証券・保険では入っている業務が違います。業態ごとに、AIが担い始めた業務、人に残る場面、録音が生まれる面談を並べました。
金融庁は2025年3月にAIディスカッションペーパーの第1.0版を出し、2026年3月3日に第1.1版を公表しました。第1.1版は、2025年6月から12月に開いた「金融庁 AI官民フォーラム」での議論を踏まえた改訂で、金融機関でのAI活用の実態と論点を整理しています。
Klangは審査システムでも勘定系の仕組みでもなく、コールセンターの通話も扱いません。上の表の右端、お客さまと向き合って話す面談の記録だけを受け持ちます。
| 業態 | AIが担い始めた業務 | 人に残る場面 | 録音が生まれる面談 |
|---|---|---|---|
| 銀行(メガバンク・地方銀行・信用金庫) | 不正送金やマネー・ローンダリングの検知、与信審査の材料づくり、稟議書の下書き、行内規程の検索 | 事業の事情を聞く融資相談、条件の説明、事業承継や資金繰りの相談 | 法人の融資相談、個人の住宅ローン相談、資産運用の相談 |
| 証券会社 | 市場データの分析、問い合わせへの自動応答、売買の監視 | 投資の経験や目的の聞き取り、商品のリスクの説明 | 資産運用の面談、相続を控えたお客さまの相談 |
| 保険会社・保険代理店 | 保険金請求の書類の読み取り、引受の審査の補助、商品比較の下書き | 家族構成や意向の把握、保障内容の説明 | 保険の見直しの面談、法人契約の打ち合わせ |
| 各業態のコールセンター | 専用の通話録音システムでの文字起こしと応対の評価 | 苦情や込み入った相談への対応 | Klangの対象外(電話の通話録音は日本では未対応) |
銀行員の仕事はAIでなくなるのか:窓口・事務・渉外で分けて考える
「銀行員はAIに置き換わる」という話は、職種を分けると見え方が変わります。減るのは手順の決まった作業で、お客さまの事情を聞き取る仕事はむしろ比重が増します。
窓口
定型の手続はアプリとチャットボットに移っています。残るのは、相続の手続や高齢のお客さまの相談のように、事情を聞かなければ進まない用件です。
事務センター
申込書や本人確認書類の読み取りは、AIの文字認識で大きく短くなります。AIへの置き換わりがいちばん進む職種です。
法人渉外
決算書の分析はAIで速くなります。設備投資の背景や後継者の有無のように、数字に出ない事情を経営者から聞くのは担当者の仕事です。
資産運用の担当
金融商品取引法第40条は、知識・経験・財産の状況・目的に照らして不適当な勧誘をしないことを求めています。その前提となる聞き取りは、人が行います。
保険の募集人
保険業法第294条の2は、お客さまの意向を把握し、それに沿った契約を提案することを求めています。意向を聞き出す会話がそのまま仕事の中心です。
本部の企画・審査
稟議書や報告書の下書きは生成AIで速くなります。融資を出すかどうかの判断と、その説明の責任は金融機関に残ります。
例:設備資金の融資相談41分を、面談記録の下書きにする
新しい製麺ラインを入れたい食品メーカーの社長と経理担当を、銀行の法人営業の担当者が訪ねた場面です(架空)。社長と経理担当の了承を取り、担当者のスマートフォンで録音したファイルをKlangに上げました。
この例では、下書きを「相談の内容」「質問と回答」「銀行のタスク」「お客さまのタスク」の4つに分けています。見出しの立て方は、各行の面談記録の様式をそのまま指示に書けば変えられます。4,800万円という金額と稼働の時期は、該当する秒数から録音を聞き直して確定させます。
証券の運用相談なら「投資の経験と目的」「提案した商品」「説明したリスク」、保険の見直しなら「家族構成と意向」「提案したプラン」「次回までの宿題」のように、見出しを業務に合わせて指示します。
文字起こし(抜粋)
- 02:10担当者本日は、新しい製麺ラインの設備資金のご相談ですね。
- 02:18社長見積もりは4,800万円です。来年の4月には動かしたいと考えています。
- 09:45経理担当直近の決算書と、9月までの試算表をお送りします。
- 15:30社長金利はどのくらいになりますか。今の借入より下がりますか。確認1
- 15:42担当者金利は審査の結果で決まりますので、今日はお約束できません。条件が出たらご説明します。
- 22:05社長今ある運転資金の借入も、返済の期間を少し延ばせないかと思っていまして。確認2
- 22:20担当者そちらは別のご相談として、資金繰り表を拝見してから検討させてください。
- 28:10社長設備の見積もりはもう1社からも取っています。来週の水曜までに決めます。確認3
Klangが作る下書き
- 相談の内容
- 新しい製麺ラインの設備資金。見積額は4,800万円
- 来年4月の稼働を希望
- 既存の運転資金の借入について、返済期間を延ばせないかとの相談あり
- お客さまからの質問と回答
- 金利の水準について質問あり。審査の結果で決まるため、当日は回答していない
- 銀行のタスク
- 決算書と試算表を受け取り次第、設備資金の審査の準備に入る
- 返済期間の相談は、資金繰り表を受け取ってから別件として検討する
- お客さまのタスク
- 直近の決算書と9月までの試算表を送付
- 資金繰り表を送付
- 設備の発注先を来週水曜までに決定
記録にする前に確認すること
- 確認115:30 金利と融資の可否は審査で決まります。「金利が下がる」のように、条件を約束したと読める言い回しが下書きに紛れていないかを担当者が見ます。
- 確認222:05 返済期間の延長の相談をどの案件として扱い、行内のどの記録に残すかは、担当者と上席が規程に沿って決めます。下書きには相談を受けた事実だけを書きます。
- 確認328:10 「来週の水曜」は相談日の10月9日(金)から数えると10月14日(水)です。期日は日付で書き直します。
面談で聞くこと・伝えることを定めた条文と、記録の見出し
資産運用と保険の相談では、法律が面談で聞く内容と説明する内容を定めています。条文ごとに、面談記録に立てておくと後で確かめやすい見出しを並べました。記録を作っただけで、これらの規定を守ったことにはなりません。
表の「定めていること」は条文の要約です。正確な範囲と、内閣府令で定める細目は条文で確かめてください。どの面談を記録の対象にし、何年保存するかは各社の社内規程で決まります。
| 条文 | 定めていること | 面談記録の見出しの例 |
|---|---|---|
| 金融商品取引法 第40条第1号(適合性の原則) | 顧客の知識・経験・財産の状況・契約の目的に照らして不適当な勧誘で、投資者の保護に欠けることがないようにする | お客さまの投資経験、資産の状況、運用の目的 |
| 金融商品取引法 第37条の3(契約締結前の情報の提供等) | 契約の前に、商号や登録番号、契約の概要、手数料などの情報を提供する | 交付・説明した書面、お客さまの質問 |
| 保険業法 第294条の2(顧客の意向の把握等) | 顧客の意向を把握し、これに沿った保険契約の締結等を提案し、内容を説明する | 把握した意向、提案したプランと理由 |
| 保険業法 第294条(情報の提供) | 保険契約の締結や保険募集に関し、保険契約者などの参考となる情報を提供する | 説明した保障内容と注意事項 |
| 銀行法 第12条の2(預金者等に対する情報の提供等) | 預金等の受入れに関し、契約の内容など預金者等の参考となる情報を提供する | 説明した商品と、お客さまの確認事項 |
地方銀行や保険代理店が、試行の前に社内で決めておくこと
お客さまの財産や取引の情報を含む録音を外部のサービスに預けるには、情報システム部門とコンプライアンス部門の承認が要ります。稟議に書く項目と、Klangでの答えを並べました。
- 録音の対象:店頭や訪問先の対面の面談と、Zoom・Teams・Google Meetの面談。電話の通話は日本では未対応で、対象に入りません
- お客さまへの声かけ:録音する理由と、記録の保管先を面談の冒頭で伝え、承諾を得てから録音を始めます
- AIの学習:お客さまとの会話がAIモデルの学習に使われることはありません
- 保管の安全性:送受信の経路も保管中のデータも暗号化され、ISO/IEC 27001:2022の認証を受けています
- 見られる人の範囲:店舗やお客さまの単位でフォルダを分け、閲覧できる行員をフォルダごとに指定します
- 行内での運用:外部のクラウドに置けない場合は、オンプレミスでの導入を相談できます
融資相談も運用相談も、あとから引ける面談記録に
店頭や訪問先で録った面談はアプリやブラウザからアップロードし、Web会議の面談は会議ボットが記録します。文字起こしとAI要約ができたら、取引先の社名や話題で過去の面談をまとめて探せます。記録はWord・Excel・CSVなどで書き出して、行内のシステムに添付できます。
- お客さまとの会話をAIの学習に使わず、暗号化して保管します
- 担当者とお客さまの発言を分けて名前を付けるには、プロプラン(月払い¥1,180・税込)の話者の自動識別を使います
- オンプレミスでの導入にも対応し、行内の環境で運用できます
よくある質問
銀行はAIをどんな業務に使っていますか。
銀行のAIは、不正送金やマネー・ローンダリングの検知、与信審査の材料づくり、チャットボットでの問い合わせ対応、申込書の読み取り、稟議書の下書きなどに使われています。Klangが担うのは、融資相談や資産運用の相談といった面談と、行内の会議の記録です。
銀行員の仕事はAIでなくなりますか。
事務センターの書類処理や窓口の定型の手続はAIに移りつつありますが、銀行員の仕事がなくなるわけではありません。経営者から数字に出ない事情を聞く融資相談や、お客さまの目的に合う商品を説明する仕事は、法律が求める対応でもあり、人に残ります。
保険代理店の意向把握の面談を、AIで記録してもよいですか。
保険業法第294条の2は意向の把握と、それに沿った提案と説明を求めていますが、面談の記録にどのツールを使うかまでは定めていません。録音とAIツールを使うかどうかは、保険会社の委託の条件と代理店の社内規程に沿って判断し、お客さまの承諾を得てから録音してください。
証券会社の運用相談でも使えますか。
証券会社の対面やWeb会議の運用相談であれば、Klangで録音から面談記録の下書きを作れます。投資経験や運用の目的、説明したリスクを見出しにするよう指示すると、適合性の原則に沿った確認がしやすくなります。
お客さまとの電話を録音して記録にできますか。
Klangは現在、日本では電話の通話録音に対応していません。ほかのシステムで録音して保存した通話の音声ファイルがあれば、それをアップロードして文字起こしできます。
費用はいくらかかりますか。
フリープランは月額¥0で、カード登録なしで文字起こしを時間の制限なく使えます。声ごとに発言を分ける話者の自動識別はプロプランの機能で、月払いは1ユーザー¥1,180、年払いは月あたり¥980(いずれも税込)です。