エキスパートインタビュー
エキスパートインタビューとは。60分の会話を、引用できるメモに。
業界の経験者に1時間話を聞くエキスパートインタビューの進め方を、質問票の組み方、インサイダー情報と守秘義務の線引き、録音からインタビューメモを作る手順まで、一つの例でまとめました。
更新日:執筆・運営:Klang AI AB
エキスパートインタビューの工程と、AIを使える範囲
AIが受け持てるのは、録音を文字にしてメモの下書きを作る工程と、たまったインタビューを探す工程です。相手を選ぶこと、質問すること、数字を確かめて結論を出すことは、調査する人の仕事として残ります。
Klangは調査レポートを書くツールでも、市場データベースでもありません。統計の検索、市場規模の推計、資料の作成はできません。インタビューで聞いた内容を正確に残し、あとから探せるようにする部分を受け持ちます。
| 工程 | 誰が担うか | AIでできること | Klang |
|---|---|---|---|
| エキスパートの選定・日程調整 | エキスパートネットワーク、調査担当 | — | 対象外 |
| 質問票の作成 | 調査担当 | 生成AIで仮説と質問のたたき台を作る。最終版は人が決める | 対象外 |
| インタビュー当日 | 聞き手 | 録音。聞き手は質問と深掘りに集中する | 会議ボットで録音(オンライン) |
| 文字起こし・インタビューメモ | AIが下書き、聞き手が確認 | 録音から全文と、項目別のメモの下書きを作る | 対応 |
| 複数のインタビューの比較 | AIが検索、調査担当が判断 | 「価格」「人手不足」などの話題で、過去のインタビューを横断して探す | 対応 |
| 市場規模の推計・報告書の作成 | 調査担当 | 統計や開示資料との突き合わせ、スライドの作成 | 対象外 |
| コンプライアンスの確認 | 所属先のコンプライアンス部門 | — | 対象外 |
エキスパートインタビューのやり方:質問票と60分の組み立て
質問票は、確かめたい仮説から逆算して作り、本題に40分ほど使える時間配分にします。冒頭の5分で、未公表の情報を話さないことと、録音の扱いを確認します。
質問票は10問前後に絞り、優先度の高い順に並べます。相手の話が広がったときに、どの質問を捨てるかを先に決めておくためです。
数字は、根拠とセットで聞きます。「市場は伸びていますか」ではなく、「受注件数と単価のどちらが動いていますか」のように、答えが具体的になる聞き方にします。
聞き手は質問と深掘りに集中し、メモは録音に任せます。気になった発言の時刻だけを控えておくと、あとで録音を聞き直す場所がすぐにわかります。
| 時間 | 内容 | 聞き方のポイント |
|---|---|---|
| 0〜5分 | 導入 | 目的を伝え、未公表の情報や前職の機密は話さなくてよいことを確認する。録音の扱いも伝える |
| 5〜12分 | 経歴と立場 | どの会社のどの部門で、何年ごろ、何を担当していたかを確かめ、発言の重みを測る |
| 12〜45分 | 本題 | 市場の構造、主要なプレイヤー、価格と商慣行の順に、仮説をぶつけて聞く |
| 45〜55分 | 深掘り | 数字が出た発言について「何から、そう見ているか」と根拠を聞く |
| 55〜60分 | 締め | 聞き漏らしがないかを尋ね、ほかに話を聞くべき立場の人を教えてもらう |
インサイダー情報と守秘義務:聞いてはいけないこと
上場会社の未公表の重要事実を聞いてはいけません。金融商品取引法第166条第3項は、会社関係者から重要事実の伝達を受けた人の売買も禁じています。
第166条第3項は「会社関係者(第一項後段に規定する者を含む。以下この項において同じ。)から当該会社関係者が第一項各号に定めるところにより知つた同項に規定する業務等に関する重要事実の伝達を受けた者(同項各号に掲げる者であつて、当該各号に定めるところにより当該業務等に関する重要事実を知つたものを除く。)又は職務上当該伝達を受けた者が所属する法人の他の役員等であつて、その者の職務に関し当該業務等に関する重要事実を知つたものは、当該業務等に関する重要事実の公表がされた後でなければ、当該上場会社等の特定有価証券等に係る売買等をしてはならない。」と定めています。
退職した人も対象から外れるとは限りません。第166条第1項は、会社関係者でなくなった人について「当該各号に掲げる会社関係者でなくなつた後一年以内のものについても、同様とする」と定めています。第167条の2は、会社関係者が、他人に利益を得させる目的などで未公表の重要事実を伝えることを禁じています。
エキスパートネットワークも、規約でエキスパートに守秘を求めています。例えばビザスクの利用規約は、第16条で重要未公開情報や機密情報を開示しないこと、第17条で機密情報を証券取引や投資判断に使わないことを定めています。
録音できるかどうかは、ネットワークの規約と案件の条件で決まります。ビザスクの利用規約第24条は、クライアントと同社が知見提供取引を録音・文字起こし・要約できることに、エキスパートが同意する旨を定めています。ネットワークを通さずに自分で依頼したインタビューでは、録音の前に相手の了承を得てください。
| 決めること | 具体的な対応 |
|---|---|
| 聞かない話題 | 現職・前職の未公表の業績、提携、人事、製品計画 |
| 話が触れかけたとき | その場で止め、メモにも記録にも残さない |
| 録音の可否 | ネットワークの規約と案件の条件を確認。直接の依頼は相手の了承を得る |
| 発言の引用 | 社外に出す資料では、氏名や前職の社名ではなく属性で書く |
| 記録の保管 | プロジェクトのメンバーだけが見られる場所に置く |
例:業務用空調の保守市場について聞いた60分が、インタビューメモになるまで
投資ファンドのアソシエイトが、業務用空調の保守会社で営業部長を務めていた人に話を聞いたインタビューの例です(架空)。ネットワークの規約で録音が認められた案件で、Zoomに会議ボットを参加させて録音しました。
下書きは「市場規模の見立て」「主要プレイヤー」「価格動向」「引用できる発言」「次に確かめること」の5項目で作るよう指示した例です。項目の名前と順番は、チームのインタビューメモの書式に合わせて変えられます。
数字と引用は、タイムスタンプの位置で元の音声を再生して確かめてからメモにします。同じテーマで複数の人に話を聞いたら、AIチャットで「点検の単価について、各インタビューで何と言っていたか」のように横断して尋ねられます。
文字起こし(抜粋)
- 03:10聞き手本日は、公開されている情報とご経験の範囲でお話しください。前職の未公表の情報には触れなくて大丈夫です。
- 06:45エキスパート大きなビルの保守は、メーカー系のサービス会社がほとんど押さえています。独立系は、中小のビルや店舗が中心です。
- 14:20エキスパート保守の市場は、新品の販売の半分くらいの規模だと見ています。あくまで私の感覚ですが。確認1
- 22:05聞き手点検の単価は、ここ数年でどう動いていますか。
- 22:12エキスパート技術者が足りないので、上がっています。夜間や休日の対応は、値上げが通りやすいですね。
- 31:40エキスパート前の会社では、まだ発表していないんですが、来年……確認2
- 31:44聞き手その先は未公表の情報になりそうなので、伺わずに次の質問へ進みます。
- 44:30エキスパート結局、技術者を何人抱えているかで勝負が決まる業界です。確認3
Klangが作る下書き
- 市場規模の見立て
- 保守の市場は新品販売の半分程度との見立て(エキスパートの推定。出典は未確認)
- 主要プレイヤー
- 大規模ビルはメーカー系のサービス会社がほぼ押さえている
- 独立系の保守会社は中小のビルや店舗が中心
- 価格動向
- 技術者不足で点検の単価は上昇傾向
- 夜間・休日の対応は値上げが通りやすい
- 引用できる発言
- 「結局、技術者を何人抱えているかで勝負が決まる業界です」(44:30)
- 次に確かめること
- 市場規模を業界団体の統計や上場企業の開示資料で確かめる
- 独立系の保守会社の経験者にも話を聞き、価格の見方を比べる
記録にする前に確認すること
- 確認114:20 数字はエキスパート個人の推定です。メモでは「見立て」と書き分け、報告書に使う前に統計や開示資料などの出典で確かめます。
- 確認231:40 未公表の情報に触れかけた発言です。下書きに含まれていないかを確かめ、残っていれば削除します。記録の扱いは所属先のコンプライアンス担当に相談します。
- 確認344:30 社外に出す資料で引用するときは、氏名や前職の社名を書かず、「元・保守会社 営業部長」のように属性で示します。
録音からインタビューメモまでの5つの手順
- 01
録音の条件を確かめる
エキスパートネットワークの規約と案件の条件で、録音と文字起こしが認められているかを確かめます。
- 02
会議ボットで録音する
Zoom・Teams・Google Meetの通話は、Klangの会議ボットを参加させて録音します。ボットは参加者として表示されるため、冒頭で相手に伝えます。
- 03
録音済みのファイルをアップロードする
電話会議の通話の録音には、Klangのアプリは現在、日本では対応していません。規約の範囲で録音したファイル(m4a・mp3・wavなど)があれば、アップロードして文字起こしします。
- 04
メモの書式を指示する
「市場規模の見立て・主要プレイヤー・価格動向・引用できる発言」のように、チームの書式どおりの項目で下書きを作ります。
- 05
プロジェクトごとのフォルダに保存する
案件ごとにフォルダを分け、見られるメンバーを設定します。インタビューが増えたら、話題で横断検索して比較します。
インタビューの録音を、比べられるメモに
オンラインのインタビューは会議ボットで録音し、録音済みのファイルはアップロードすると、文字起こしとAI要約ができます。日本語と英語を含む17言語に対応しているため、海外のエキスパートとの英語のインタビューも文字にできます。翻訳の機能はありません。メモはWordやExcelで書き出せます。
- 会話データをAIの学習に使いません。通信時・保存時とも暗号化しています
- ISO/IEC 27001:2022の認証を取得。フォルダごとに見られるメンバーを設定できます
- 聞き手とエキスパートの発言を分ける話者の自動識別は、プロプランの機能です
よくある質問
エキスパートインタビューとは何ですか。
エキスパートインタビューは、調べたい業界で働いた経験のある人に1時間ほど話を聞き、市場の構造や商慣行をつかむ調査手法です。コンサルタントや投資ファンド、事業会社の企画担当が、エキスパートネットワークを通じて相手を探して行うのが一般的です。
エキスパートネットワークとは何ですか。
エキスパートネットワークは、業界の経験者を登録し、話を聞きたい企業とつなぐ仲介サービスです。日本ではスポットコンサルとも呼ばれ、1時間単位のインタビューを手配し、エキスパートの守秘や利益相反の確認を規約で定めています。
エキスパートインタビューでインサイダー情報を聞くと、どうなりますか。
金融商品取引法第166条第3項は、会社関係者から上場会社の未公表の重要事実を伝えられた人が、公表前にその会社の株式などを売買することを禁じています。エキスパートインタビューでは未公表の情報を聞かないことを冒頭で確認し、話が触れかけたらその場で止めてください。
エキスパートインタビューは録音してもよいですか。
エキスパートインタビューを録音できるかどうかは、エキスパートネットワークの規約と案件の条件で決まります。ネットワークを通さずに直接依頼したインタビューでは、録音の前に相手の了承を得てください。
Klangでエキスパートインタビューの電話を録音できますか。
Klangのアプリは現在、日本では電話の通話録音に対応していません。Zoom・Teams・Google Meetのインタビューは会議ボットで録音でき、規約の範囲で録音した電話の音声ファイルは、アップロードして文字起こしできます。