社労士のAI活用
社労士の仕事はAIでなくなるのか。手続は電子申請とソフトへ、労務相談は社労士に残る。
社会保険労務士法第2条は、社労士の業務を1号・2号・3号に分けています。その区分ごとに、AIと電子申請で減る作業と、顧問先が社労士に求め続ける相談を整理しました。定例の労務相談42分を相談記録の下書きにする例と、ハラスメント相談を録音するときの注意も載せています。
公開日:更新日:執筆・運営:Klang AI AB
1号・2号・3号業務で分ける、社労士業務へのAIの影響
「社労士はAIでなくなる」という話の多くは、届出の作業量だけを見ています。社会保険労務士法第2条第1項の区分に沿って見ると、独占かどうかとAIの影響の大きさは一致しません。
第27条が社労士以外に禁じているのは、第2条第1項の第1号から第2号までの事務です。3号の相談・指導は、誰が行っても違法ではありません。それでも顧問先が社労士に相談するのは、就業規則と過去の経緯を知ったうえで、法令に沿った手順まで示してもらえるからです。
手続の時間が減るほど、顧問料の中身は3号の相談に寄っていきます。その相談を毎回どれだけ正確に記録し、次の担当者が引き継げるかが、事務所の差になります。
| 区分 | 業務の例 | 社労士だけの業務か | AIと電子申請で変わること |
|---|---|---|---|
| 1号 | 資格取得届や算定基礎届などの申請書等の作成 | はい(第27条) | 従業員情報の転記と様式への入力が自動に近づく |
| 1号の2・1号の3 | 提出の手続の代行、行政機関への申請や主張の事務代理 | はい(第27条) | 電子申請で窓口に出向く手間が減る。主張の中身は社労士が組み立てる |
| 2号 | 労働者名簿や賃金台帳などの帳簿書類の作成 | はい(第27条) | 給与・勤怠システムから自動で作られる部分が増える |
| 3号 | 労務管理や社会保険についての相談・指導 | いいえ | 条文や通達を探す時間は短くなる。顧問先の事情を聞いて答える部分は残る |
社労士の面談と相談が記録になる5つの場面
社労士の相談は、決まった様式の書類より前の段階で起きます。録音から相談記録を作る価値が大きいのは、次のような場面です。
毎月の定例の労務相談
人事担当者が1か月分の困りごとをまとめて持ってきます。話題が5つも6つも並ぶので、回答と宿題が混ざりやすい場面です。
36協定を結ぶ前の打合せ
特別条項の月数や上限の時間を、部署ごとの残業の実績を見ながら決めます。決めた数字と、その理由を残しておきます。
就業規則の改定のヒアリング
育児・介護休業法の改正に合わせて規程を直すとき、顧問先の運用の実態を聞き取ります。規程案の根拠になる発言です。
ハラスメントの相談を受けた顧問先との協議
事実の確認の進め方と、相談した社員を不利益に扱わないための手順を話し合います。記録の範囲は慎重に決めます。
担当替えの引き継ぎ
後任が顧問先の過去の相談を読み返す場面です。「育休の件はその後どうなったか」をAIチャットに聞けば、該当する発言の箇所が分かります。
例:製造業の顧問先との定例相談42分を、相談記録の下書きにする
従業員120人の部品メーカーの人事課長と、担当の社労士がオンラインで話した定例の労務相談です(架空)。育休の復帰、時間外労働、遅刻への対応、10月に施行された取引先の言動への対策が話題に出ました。
下書きの見出しは「相談事項」「社労士の回答」「事務所のタスク」「顧問先のタスク」の4つです。回答の要点は社労士が話したとおりかを、時刻の位置で音声を再生して確かめます。顧問先に送る前に、45時間や6か月といった数字も同じ方法で確かめます。
文字起こし(抜粋)
- 03:10人事課長11月に育休から戻る社員が、短時間勤務を希望しています。
- 03:24社労士お子さんが3歳になるまでは、原則として短時間勤務の措置が必要です。今の育児・介護休業規程で対応できるか見てみましょう。
- 10:05人事課長製造部で、9月の残業が45時間を超えた人が3人います。確認1
- 10:20社労士特別条項で45時間を超えられるのは、年6か月までです。今年度のほかの月も確認させてください。
- 18:40人事課長遅刻を繰り返す社員がいて、注意しても直りません。懲戒にできますか。確認2
- 18:58社労士まず、注意した日と内容を書き残してください。処分は、就業規則の規定とこれまでの経緯を見てから考えます。
- 27:15人事課長取引先からの電話で、営業の社員が怒鳴られることがあって。10月から対策が義務になったんですよね。確認3
- 33:30人事課長勤怠データは、今週の金曜までにお送りします。確認4
Klangが作る下書き
- 相談事項
- 11月に育休から復帰する社員の短時間勤務
- 製造部の時間外労働(9月に月45時間超が3人)
- 遅刻を繰り返す社員への対応
- 取引先からの威圧的な言動への対策(2026年10月施行の改正)
- 社労士の回答(要点)
- 3歳未満の子を育てる社員には、原則として短時間勤務の措置が必要。現行の規程で足りるか確認する
- 特別条項で月45時間を超えられるのは年6か月まで。今年度のほかの月を確認する
- 注意した日と内容を記録に残す。処分は就業規則と経緯を見て検討する
- 事務所のタスク
- 育児・介護休業規程を読み、改定が要るなら案を作る
- 勤怠データから、今年度に月45時間を超えた月数を人ごとに数える
- 取引先の言動への相談窓口と対応手順の案を、次回の定例に持っていく
- 顧問先のタスク
- 今年度の勤怠データを10月9日(金)までに送る
- 遅刻を繰り返す社員に注意した日と内容を書き出す
記録にする前に確認すること
- 確認110:05 特別条項には、年6か月のほかに、時間外労働の年720時間以内、休日労働を含めて月100時間未満、2〜6か月の平均80時間以内という上限があります。超えたかどうかは、社労士が勤怠データで判断します。
- 確認218:40 懲戒できるかどうかは法的な判断です。下書きには、相談があったことと社労士が伝えた手順だけを残し、結論は社労士が書き足します。
- 確認327:15 顧客や取引先の言動への措置は、労働施策総合推進法第33条で2026年10月1日から事業主の義務になりました。措置の中身は同条第4項の指針で確かめてから回答します。
- 確認433:30 「今週の金曜」は、相談日の10月6日(火)から数えて10月9日(金)です。顧問先のタスクには日付で書きました。
ハラスメントやメンタル不調の相談を録音するときに決めておくこと
労働施策総合推進法第31条第2項と第33条第2項は、相談をしたことや、事実を述べて対応に協力したことを理由に、事業主が労働者を不利益に扱うことを禁じています。こうした相談の録音は、普段の定例相談より扱いを狭くします。
- 相談者本人が同席する場では録音しない、または本人の了承を別に得る
- 休職や通院の話は、個人情報保護法第2条第3項の「要配慮個人情報」にあたる病歴を含みます。記録に残す範囲を顧問先と先に決める
- 録音を残す場合は、顧問先の人事担当者のうち閲覧できる人を限ったフォルダに入れる
- 下書きのAI要約に、被害を訴えた社員の名前が出ていないかを確かめてから共有する
社会保険労務士法第21条・第27条の2と、事務所で決める録音の運用
第21条は、開業社会保険労務士と社会保険労務士法人の社員に、正当な理由なく業務に関して知り得た秘密を漏らすことや盗用することを禁じています。第27条の2は、事務所の使用人その他の従業者に同じ義務を課しています。どちらも、その立場でなくなったあとまで続きます。
- 01
録音してよい相談を決める
定例相談や36協定の打合せは録音する、ハラスメントの個別の事情は録音しない、のように種類で決めておきます。
- 02
顧問先ごとにフォルダを分ける
担当の社労士と補助者だけを招待します。補助者も第27条の2の義務を負うことを、所内のルールに書いておきます。
- 03
顧問契約に一文を入れる
相談を録音すること、録音を相談記録の作成に使うこと、保管の方法を、顧問先に書面で伝えます。
- 04
ツールの条件を確かめる
学習への利用の有無、暗号化、認証、退職者のアカウントの扱いを確かめます。Klangは会話データを学習に使わず、ISO/IEC 27001:2022の認証を取得しており、オンプレミスでの導入にも対応しています。
顧問先ごとの労務相談を、あとから引ける相談記録に
対面の相談はスマートフォンのアプリで、オンラインの定例相談はZoom・Teams・Google Meetの会議ボットで録音できます。録音を終えると、文字起こしとAI要約が顧問先のフォルダに入ります。「36協定の特別条項について何と答えたか」のように聞けば、AIチャットが過去の相談から該当する発言を探します。
- フリープランの文字起こしに上限はなく、料金は¥0です。録音ファイルは1つ10GBまで取り込めます
- 話者の自動識別はプロプラン(月払い¥1,180・年払いは月あたり¥980、税込)の機能です
- 相談記録はWordで書き出して、顧問先への報告に添付できます
よくある質問
社労士の仕事はAIでなくなりますか。
なくなりません。届出書の作成や帳簿書類の整備のような1号・2号業務は、社会保険労務士法第27条で社労士の独占業務とされ、作業の時間がAIと電子申請で短くなっているところです。3号の労務相談は独占業務ではありませんが、顧問先の就業規則と経緯を踏まえて手順まで示す相談は、AIでは置き換わりません。
社労士事務所でAIを活用するなら、どの業務から始めるのがよいですか。
効果が見えやすいのは、毎月の定例相談の記録です。録音から相談事項、回答の要点、双方のタスクを下書きにすると、相談のあとに記録を書く時間が減ります。届出書の作成は労務管理ソフトや電子申請の機能に任せます。
2026年10月から、顧問先から受ける相談で増えそうなものはありますか。
労働施策総合推進法の改正で、顧客や取引先などの言動から労働者を守るための雇用管理上の措置が、2026年10月1日から第33条として事業主に義務づけられました。相談窓口の整備や対応の手順についての相談が考えられます。措置の中身は、厚生労働大臣の指針で確かめてください。
ハラスメントの相談を録音しても問題ありませんか。
録音すること自体より、録音の扱い方が問題になります。相談したことを理由に労働者を不利益に扱うことは、労働施策総合推進法第31条第2項と第33条第2項で禁じられています。録音する範囲、閲覧できる人、病歴などの要配慮個人情報の扱いを、顧問先と先に決めてください。
Klangで社会保険の届出や電子申請はできますか。
できません。届出書の作成と電子申請は、労務管理ソフトや電子申請の窓口を使います。Klangが扱うのは相談や打合せの会話で、録音から文字起こし、要約、タスクの一覧を作ります。
社労士事務所でKlangを使う費用はいくらですか。
相談の文字起こしと要約だけなら、フリープランで¥0です。社労士と人事担当者の発言を声で分けて表示するにはプロプランが必要で、月払いは1ユーザー¥1,180、年払いは月あたり¥980です(税込)。