建設業のAI活用
建設業のAI活用。施工管理はAIでなくなるのか、朝礼・KYと定例会議の記録から考える。
現場で交わされる言葉の多くは、記録に残すよう法律や契約が求めているものです。労働安全衛生規則が定める協議組織の会議と毎日の巡視、建設業法第19条の変更の書面。そこにつながる朝礼後のKY活動と施主との定例会議を、録音からAIで下書きする例を2つ載せました。
公開日:更新日:執筆・運営:Klang AI AB
現場の会話が記録になる6つの場面と、その根拠
建設現場の記録は、書類の様式より先に会話から始まります。どの場面に法令上の根拠があり、どこが各社の安全活動なのかを分けておくと、録音して残す範囲を決めやすくなります。
2026年4月1日に施行された改正で、労働安全衛生法第30条は、元請の労働者と関係請負人の労働者に加えて、労働者でない作業従事者も含めて労働災害を防ぐ形に改められました。同じ現場で働く人の範囲が広がるほど、連絡と調整の中身を残しておく意味は大きくなります。
| 場面 | 根拠 | 主に話す人 | 記録に残すと役立つこと |
|---|---|---|---|
| 朝礼後のKY活動・TBM | 各社・現場の安全活動(法令の様式はない) | 職長、作業員 | その日の危険のポイント、対策、行動目標 |
| 作業間の連絡及び調整 | 安衛法第30条第1項第2号、安衛則第636条(随時) | 元請の監督、各職の職長 | 同じ場所で重なる作業の順番と立入禁止の範囲 |
| 協議組織の会議 | 安衛法第30条第1項第1号、安衛則第635条(定期的に開催) | 元請と、すべての関係請負人 | 災害事例の共有、翌月の危険な作業、決めたルール |
| 作業場所の巡視と是正の指示 | 安衛法第30条第1項第3号、安衛則第637条(毎作業日に少なくとも1回) | 元請の監督 | 見つけた不安全な状態、指示した相手、直った時刻 |
| 雇入れ時・作業内容の変更時の教育 | 安衛法第59条第1項・第2項 | 各事業者の教育担当 | 誰に何を教えたか |
| 施主・設計との定例会議 | 建設業法第19条第2項(契約内容の変更は書面で) | 施主、設計者、現場所長 | 変更の要望、見積りの期限、工程への影響 |
施工管理の仕事はAIでなくなるのか:現場にいないとできない職務
施工管理の仕事は、書類の作業と、現場に立って行う職務に分けて考えると答えが見えます。AIに渡せるのは前者です。
建設業には2024年4月から時間外労働の上限規制が適用され、厚生労働省によれば、災害時の復旧・復興の事業を除いて上限規制がすべてかかっています。特別条項があっても、年720時間、単月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内(いずれも休日労働を含む)が上限です。現場から戻ってからの書き仕事を減らすことは、そのまま上限の内側で働くための手段になります。
AIに渡せる:数量と写真
図面からの数量の拾い出し、工事写真の仕分けと台帳づくりは、積算ソフトや施工管理アプリのAI機能が速くします。
AIに渡せる:転記と書き起こし
作業員名簿や施工体制の書類の転記、KYや定例会議の内容の書き起こしは、AIで下書きにできます。中身の確認は元請の担当者がします。
技術者に残る:技術上の管理
建設業法第26条の4は、施工計画の作成、工程管理、品質管理と、施工に従事する者の技術上の指導監督を、主任技術者と監理技術者の職務としています。
元請に残る:巡視と調整
労働安全衛生規則第637条は、毎作業日に少なくとも1回の巡視を元請に求めています。足場の上の危険は、歩いて見た人にしか分かりません。
例1:朝礼後のKY活動9分を、KYシートの下書きにする
共同住宅の新築工事で、外部足場の解体班が作業前に行ったKY活動です(架空)。屋外で風の音や重機の音が入る場所なので、話す人の近くに端末を置いて録音しました。
下書きの見出しは「本日の作業」「危険のポイントと対策」「人の配置」「チームの行動目標」です。自社のKYシートの欄の名前を指示に書いておけば、その欄の順に並びます。騒音が大きい場所では聞き取れない語が出るため、数字と場所の名前は職長が音声を聞き直して確かめます。
文字起こし(抜粋)
- 00:20職長今日は北面の足場の5段目から上をばらします。下は資材の搬入があるので、立入禁止の範囲を広めに取ります。
- 01:45作業員A3階のベランダ側、手すりを先に外すと開口になるところがあります。確認1
- 02:05職長そこは親綱を張ってから外す。フックは必ず掛け替えで、2つ同時に外さないこと。
- 03:30監督午後から風が強くなる予報です。強くなったら、無理せず作業を止めて連絡ください。確認2
- 05:10作業員B今日から入った田中さんは、解体の手順を見るのが初めてです。確認3
- 05:25職長田中さんは今日は下で荷受けに回って、上には上がらない。
- 07:40職長今日の行動目標は「開口部、親綱よし、掛け替えよし」で。確認4
Klangが作る下書き
- 本日の作業
- 北面の外部足場、5段目から上の解体
- 下部で資材の搬入があるため、立入禁止の範囲を広めに設定
- 危険のポイントと対策
- 3階ベランダ側:手すりを外すと開口になる → 親綱を張ってから外す
- 墜落制止用器具のフックは掛け替えで使い、2つ同時に外さない
- 午後は強風の予報 → 風が強まったら作業を止めて監督に連絡
- 人の配置
- 当日から入場した作業員は荷受けを担当し、足場には上がらない
- チームの行動目標
- 「開口部、親綱よし、掛け替えよし」
記録にする前に確認すること
- 確認101:45 開口になる場所と親綱の位置は、職長と監督が現地で確かめます。下書きは話に出た危険を並べただけで、対策が足りているかの判断は入りません。
- 確認203:30 「強くなったら」のままでは、誰がいつ止めるかが決まりません。自社の作業中止の基準と、止める判断をする人の名前を記録に書き足します。
- 確認305:10 入場初日の作業員への教育を済ませたかは、録音からは分かりません。教育の記録と照らして、済んでいなければ監督が手配します。
- 確認407:40 参加者の確認の署名は、自社のKYシートの欄に残します。録音は署名の代わりにはなりません。
例2:施主・設計・施工の定例会議52分から、宿題の一覧を作る
診療所の新築工事で、施主、設計事務所の監理者、元請の現場所長が毎週開く定例会議です(架空)。床材の変更の要望と、足場の解体の遅れが議題に上がりました。
公共工事で監督職員と交わす工事打合せ簿は、指示・協議・承諾などの区分と処理の欄を持つ別の様式です。定例会議の下書きから打合せ簿に移す手順は、専用のガイドにまとめています。
文字起こし(抜粋)
- 02:15現場所長長雨の影響で、外部足場の解体が予定より5日遅れています。確認1
- 02:40現場所長内装の工程を詰めて、11月27日の引渡しは守れる見込みです。
- 14:08設計2階の待合室の床を、塩ビシートからフローリングに変えたいとご要望をいただいています。確認2
- 14:30施主費用がどのくらい上がるのか、先に知りたいです。
- 14:52現場所長次回の定例までに、増額の見積りと工程への影響をお出しします。
- 27:50現場所長駐車場の照明の位置は、15日の定例の前に現地で見ましょう。確認3
Klangが作る下書き
- 工程の報告
- 長雨により外部足場の解体が5日遅れ
- 内装の工程を詰め、引渡し予定日(11月27日)は維持できる見込み
- 協議事項
- 2階待合室の床仕上げを、塩ビシートからフローリングに変更したいとの施主要望
- 施主は変更による費用を先に確認したい意向
- 次回定例(10月15日)までの宿題
- 施工:床仕上げ変更の増額見積りと、工程への影響を提出
- 施工:駐車場照明の位置を施主と現地で確認する時刻を連絡
- 設計:変更後の床材の品番と仕様を示す
記録にする前に確認すること
- 確認102:15 遅れの日数と引渡し日は、最新の工程表と突き合わせてから議事録に載せます。
- 確認214:08 床材の変更で代金や工期が変わるなら、建設業法第19条第2項の変更の書面が必要です。議事録に残るのは「要望が出た」という経緯までです。
- 確認327:50 「15日の定例の前」は、10月15日(木)の何時に誰が立ち会うかまで決めて書きます。
定例会議で出た変更は、建設業法第19条の書面で確定させる
議事録は、変更の要望がいつ誰から出たかを示す経緯の記録です。請負代金や工期が変わるときは、建設業法第19条第2項により、変更の内容を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付します。第19条第3項により、相手方の承諾があれば電子的な方法での交付もできます。
| 会議で出た話 | 議事録に残すこと | 確定させる書類 |
|---|---|---|
| 仕様・設計の変更 | 要望を出した人と、変更の中身 | 変更契約の書面 |
| 金額の増減 | 見積りを出す期限と担当 | 見積書と変更契約の書面 |
| 工期の延長・短縮 | 遅れの理由と引渡し日への影響 | 工程表と変更契約の書面 |
| 次回までの宿題 | 担当と期限 | 次回の議事録で完了を記録 |
1つの現場で試す順番:所内の工程会議から協議組織の会議まで
- 01
所内の工程会議
協力会社の名前や工種の言葉が、どこまで正しく文字になるかを見ます。誤りが多い語は、下書きを直すときに控えておきます。
- 02
1つの班のKY活動
職長に了承をもらい、1週間だけ毎朝録音します。KYシートを手で書く時間と、下書きを直す時間を比べます。
- 03
施主・設計との定例会議
出席者に録音の目的を伝えてから録音します。Web会議で参加する設計者がいる回は、Zoom・Teams・Google Meetに会議ボットを入れます。
- 04
月1回の協議組織の会議
すべての関係請負人が集まる会議の決定事項を、現場ごとのフォルダに残します。翌月の会議の前に、AIチャットで先月決めたルールを読み返します。
現場の会話を、現場名で引ける記録に
Klangのスマートフォンアプリで朝礼やKYをその場で録音でき、ICレコーダーの音声もあとからアップロードできます。文字起こしとAI要約は現場ごとのフォルダに入り、「北面の足場の解体で決めた立入禁止の範囲は」と聞けば、AIチャットが該当する発言の箇所を示します。
- フリープランは¥0で、文字起こしに時間の上限はありません。1ファイル10GBまで取り込めます
- 下書きはWordやExcelに書き出して、KYシートや議事録の様式に貼り付けられます
- フォルダごとに閲覧できる人を決められるので、協力会社ごとに見せる範囲を分けられます
よくある質問
施工管理の仕事はAIでなくなりますか。
なくなりません。施工計画、工程管理、品質管理、技術上の指導監督は、建設業法第26条の4が主任技術者と監理技術者に課す職務です。元請の毎日の巡視も労働安全衛生規則第637条が求めています。AIで減るのは、数量の拾い出しや写真の整理、書類の転記、会議の書き起こしといった、現場から戻ったあとの作業です。
建設業で生成AIはどんな作業に使われていますか。
使われているのは、図面からの数量の拾い出し、工事写真の仕分け、安全書類の転記、提出書類の文案、KY活動や定例会議の書き起こしです。危険の評価、作業を止める判断、設計変更の可否は、現場の技術者と発注者が決めます。
KY活動を録音すれば、KYシートは不要になりますか。
不要にはなりません。録音から作るのはKYシートの下書きで、危険のポイントと対策が足りているかは職長と監督が確かめます。参加者の確認の署名も、自社のKYシートの欄に残してください。
騒音の大きい現場でも文字起こしできますか。
話す人の近くで録音すれば文字にできますが、重機や風の音が重なった部分は聞き取れない語が出ます。数字、場所、人の名前は、タイムスタンプの位置で音声を聞き直して確かめてください。
定例会議の議事録だけで、仕様変更の契約になりますか。
なりません。建設業法第19条第2項は、請負契約の内容を変更するとき、変更の内容を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付することを求めています。議事録は、変更の経緯を示す記録として書面と一緒に保管します。
Klangで積算や工程表、安全書類の作成はできますか。
できません。積算や工程表は専用のソフトや施工管理アプリを使います。Klangが扱うのは現場の会話で、録音から文字起こし、要約、宿題の一覧を作り、過去の会議を現場名や話題で探せるようにします。