フォーカスグループインタビュー
フォーカスグループインタビューとは。設計・司会・記録の進め方
少人数のグループで一つのテーマについて話し合ってもらい、意見の幅や、参加者どうしのやり取りから生まれる考えを捉える調査方法です。人数と構成、質問の流れ、司会のコツ、話者が多い録音の記録と分析までを整理します。
公開日:更新日:執筆・運営:Klang AI AB
グループで聞くべき場面、1対1で聞くべき場面
フォーカスグループは「たくさんの人に一度に聞ける時短の方法」ではありません。グループであることに意味がある問いで使います。
| 問い・状況 | 向いている方法 | 理由 |
|---|---|---|
| 広告案や試作品への反応の幅を知りたい | フォーカスグループ | 参加者どうしの比較や反論から、受け止め方の違いが見える |
| 職場で共有されている言葉や慣習を知りたい | フォーカスグループ | 同じ立場の人どうしの会話に、共通の前提が現れる |
| お金・健康・人間関係など話しにくい話題 | デプスインタビュー | 他の参加者の前では本音が出にくい |
| 一人ひとりの判断の経緯を詳しくたどりたい | デプスインタビュー | 1人あたりの発言時間が短いグループでは深掘りしきれない |
| 立場の違う人(上司と部下など)の意見 | 別々のグループか個別 | 同席すると、立場の弱い側が発言を控えやすい |
人数・構成・回数の決め方
設計で最も大切なのは、誰と誰を同じグループにするかです。
グループ数の目安としては、HenninkとKaiserの2022年のシステマティックレビューが、対象が比較的均質で目的の絞られた研究では、4〜8回のグループディスカッションで飽和に達していたとまとめています。これも特定の条件での結果なので、何をどこまで比べたいかで判断してください。
1グループの人数
KruegerとCaseyは、非商業的なテーマでは5〜8人程度を勧めています。人数が多いと1人あたりの発言時間が減り、グループが分かれて話し始めやすくなります。市場調査ではもう少し多い人数で行う例もあります。
構成は「似た人どうし」
テーマに関わる条件(経験、立場、利用状況)が近い人を同じグループにします。条件が違う層は、グループを分けて比べます。
回数は層ごとに複数
1回のグループだけでは、その場の雰囲気による偏りと区別できません。KruegerとCaseyは、比べたい層ごとに3〜4グループを計画することを勧めています。
時間
実務では1回90〜120分程度で設計されることが多くあります。冒頭の説明と自己紹介に意外と時間がかかるため、本題の時間を先に確保します。
質問の流れ(クエスチョンルート)
KruegerとCaseyは、質問を役割ごとに5種類に分けて並べる方法を示しています。核心の質問(キークエスチョン)に十分な時間を残すのが目的です。
- 01
オープニング
全員が短く答えられる事実の質問。例:「お名前(呼び名)と、総務のお仕事を何年されているか教えてください」。全員が一度声を出すことで、その後も話しやすくなります。
- 02
イントロダクション
テーマに入る質問。例:「社内から問い合わせを受けると聞いて、まず思い浮かぶのはどんな場面ですか」。
- 03
トランジション
核心へつなぐ質問。例:「最近受けた問い合わせで、対応に時間がかかったものを一つ教えてください」。
- 04
キークエスチョン
分析の中心になる2〜5問。例:「同じ質問が繰り返し来るとき、皆さんはどうしていますか」「それがうまくいかなかったのはどんなときですか」。1問あたり10〜20分を見込みます。
- 05
エンディング
振り返りと確認。例:「今日の話で、いちばん大事だと思ったことは何ですか」「話し足りないことはありますか」。モデレーターが要点をまとめ、参加者に確かめる方法もあります。
司会(モデレーター)のコツと、グループの力学
モデレーターの役割は、意見をまとめることではなく、全員が自分の経験を話せる場を保つことです。
発言の多い人には
「ありがとうございます。ほかの方はいかがですか」と、話をいったん受け取ってから回します。遮るのではなく、順番を作ります。
発言の少ない人には
名前を呼んで指名するより、目線や「〇〇さんのお仕事ではどうですか」と経験に結びつけて聞くほうが答えやすくなります。
同調が起きたら
全員がうなずき始めたら、「違う経験をした方はいますか」と反対側の経験を明示的に歓迎します。
合意を求めない
グループで結論を出す必要はありません。意見が割れたこと自体が分析の材料です。
記録係と分担する
記録係(アシスタントモデレーター)は、座席表、発言の時刻、非言語の反応、進行の時間管理を担当します。モデレーターは聞くことに集中できます。
観察者の扱い
依頼主が別室やオンラインで見学する場合、参加者に伝えて同意を得ます。見学者からの追加質問は、休憩時にメモで受け取ります。
話者が多い録音を記録する
フォーカスグループの文字起こしで最も手間がかかるのは、「誰が言ったか」の確認です。声が重なり、短い相づちも多いためです。会場の配置と冒頭の段取りで、後の作業が大きく変わります。
- 冒頭で一人ずつ自己紹介してもらい、その時刻を記録係が控えます。声と参加者を対応づける手がかりになります。
- モデレーターは「Bさん、その点どうですか」のように、発言を促すときに呼び名を口にします。録音に名前が残ります。
- 同時に話し始めたら「お一人ずつお願いします」と区切ります。重なった発言は、文字起こしでも人でも聞き取れません。
- オンラインの場合は、参加者に自分のマイクを使ってもらい、話していないときはミュートにしてもらいます。会議ツールの録音や会議アシスタントで記録できます。
- 話者を自動で分ける機能を使っても、声の似た人や短い発言は取り違えることがあります。引用する発言は、録音で話者を確かめます。
配置で決まる、録音の聞き取りやすさ
- マイクは参加者全員から近い位置に。端の席の声が小さくならないようにします。
- モデレーターは全員の顔が見える位置に座り、発言の少ない人に目線で話を振れるようにします。
- 記録係は座席表に参加者IDを書き、自己紹介の時刻を控えます。声と人を対応づける手がかりになります。
- 食器や紙をめくる音はマイクに近いほど大きく入ります。資料は配るタイミングを決めておきます。
座席表メモの記入例(架空の例)
| 席 | 参加者ID | 条件(架空の例) | 自己紹介の時刻 |
|---|---|---|---|
| P1 | A-01 | 製造業・総務歴3年 | 00:02:05 |
| P2 | A-02 | 小売業・総務と経理を兼任 | 00:02:40 |
| P3 | A-03 | IT企業・総務歴8年 | 00:03:12 |
| P4 | A-04 | 建設業・総務歴1年 | 00:03:50 |
| P5 | A-05 | 医療法人・総務歴5年 | 00:04:22 |
| P6 | A-06 | 士業事務所・事務長 | 00:04:58 |
話者の自動識別を使う場合も、分かれた話者が誰なのかは、この座席表と自己紹介の時刻を見ながら確かめ、参加者IDを付けます。報告書では実名ではなくIDを使います。
フォーカスグループの分析
分析の単位は「個人」だけでなく「グループ」でもあります。誰が言ったかに加えて、その発言にほかの人がどう反応したかを見ます。
- 01
グループごとに逐語録を整える
話者を参加者IDにそろえ、相づちや笑いなど、反応が分かる情報も必要に応じて残します。
- 02
その場で起きたことを要約する
キークエスチョンごとに、出た意見、賛成・反対の反応、意見が変わった場面をまとめます。
- 03
グループをまたいで比べる
同じ質問に対する反応を、層ごとのグループで並べます。どのグループでも出た話と、特定の層だけで出た話を分けます。
- 04
数え方に注意する
「6人中5人が賛成」と書くと、全員が独立に答えたように読めます。他の人の発言に同調した可能性も含めて、どういう流れで出た意見かを書きます。
一人の引用に、前後のやり取りを添える
同意や反対が生まれた文脈を切り落とさない例です。
以下の人物・案件・会話・数値は、説明用の架空の例です。
- 司会: 普段の通知の使い方と、困っている場面を教えてください。
- A: 通知が多すぎて切っています。
- B: 全部切るのでなく、種類ごとに止めたいです。
- C: それなら使いたいです。
- D: 設定方法が分かれば、私も試したいです。
短い引用だけを採用すると、誰への反応だったかが消えます。公開する範囲と許可を確認した上で、必要な前後関係を残します。
確認後に残す記録の例
FG01分析メモ:Aは通知量を問題とした。Bは種類別の停止を希望。Cの「それなら使いたい」は通知全般への賛成ではなく、種類別設定への反応。Dは操作方法が分かることを条件に挙げた。
六つの発言を、六人の意見として数えない
参加者単位と発言単位の集計を分けます。
以下の人物・案件・会話・数値は、説明用の架空の例です。
| 確認するもの | 記録した内容 | 次の扱い |
|---|---|---|
| 参加者数 | 5人 | この会の人数 |
| 対象の発言 | Aが4回、Bが2回、計6回 | 発言件数 |
| 言及した人数 | 2人/5人 | この会での言及者数 |
| 言えないこと | 利用者全体の40%が同じ考え | 母集団への推定はできない |
2÷5は40%ですが、小さな会での言及割合を市場や顧客全体へ広げません。話さなかった理由も不明です。
確認後に残す記録の例
集計:通知量への言及は6発言、参加者はA・Bの2人。参加者総数5人のうち2人が言及した。残る3人の意見や、顧客全体の割合はこの記録から判断できない。
事前の個別回答と、議論後の言葉を別々に残す
回答の変化を、迎合や本音と断定しない例です。
以下の人物・案件・会話・数値は、説明用の架空の例です。
| 確認するもの | 記録した内容 | 次の扱い |
|---|---|---|
| 事前回答 | Cは「通知は不要」と記入 | 個別回答 |
| 議論後 | Cは「種類別なら試したい」と発言 | 条件の追加 |
| 確認する問い | どの通知なら役立つか | 本人に意味を確認 |
集団の会話で意見が動くことはありますが、その理由を記録だけで心理判定しません。
確認後に残す記録の例
Cの経過:事前は通知不要。議論後は種類別なら試したいと発言。条件が付いた変化として記録。どの通知を想定したかは追加確認が必要。 司会はBの「種類別に止めたい」という発言の後、「種類別ならどうですか」と全員へ追問した。Cの後の発言はその追問に対する回答で、事前回答と同条件ではない。
質問が違う二つのグループを、単純比較しない
言及数の差に、聞き方の差が混ざる例です。
以下の人物・案件・会話・数値は、説明用の架空の例です。
| 確認するもの | 記録した内容 | 次の扱い |
|---|---|---|
| グループ1 | 「通知について困る点は」 | 課題を直接質問 |
| グループ2 | 「普段の使い方は」 | 通知への質問はなし |
| 追問と提示 | 1組目は通知設定画面を提示し具体例を追問、2組目は提示なし | 質問以外の条件も異なる |
| 結果 | 通知への言及は1組目で多い | 同条件の比較ではない |
| 次の確認 | 質問文・追問・提示資料を揃えて記録 | 件数差だけで優劣を決めない |
同じテーマの調査でも、誘導や追問の違いを確認してから解釈します。
確認後に残す記録の例
比較の留保:1組目は通知課題を直接質問し、2組目は使い方を自由に質問した。言及数の差は質問条件の違いを含むため、グループ間の困り度の差とは結論しない。
多数の傾向に合わない一例を、結果から消さない
例外を残すと、提案が成り立つ条件が見えます。
以下の人物・案件・会話・数値は、説明用の架空の例です。
| 確認するもの | 記録した内容 | 次の扱い |
|---|---|---|
| 多かった反応 | A・B・Cは通知を減らしたい | この会の傾向 |
| 異なる反応 | Dは期限通知だけは増やしたい | 反例を保持 |
| 解釈 | 全通知の削減ではニーズを取りこぼす | 種類別の検討へ |
| 未確認 | Eはこの話題に発言なし | 賛成に含めない |
少数の発言を多数意見に置き換えず、なぜ違うかを次の問いにします。
確認後に残す記録の例
暫定所見:通知量を減らしたい反応が3人からあった一方、Dは期限通知の追加を希望。全体削減だけでなく種類別設定を検討する。Eの意向は未確認。 次に確認する問い:Dが必要とする期限通知は、いつ・どの仕事のために必要か。通知削減を望む3人にも、残したい種類があるか聞く。
複数人の録音も、話者と時刻つきの逐語録に
Klangは、会場で録音したファイルのアップロードや、Zoom・Teams・Google Meetへの会議アシスタントの参加で、グループインタビューを記録・文字起こしします。話者の自動識別はプロプランの機能です。話者名は座席表を見ながら参加者IDに直せます。
- グループごとの文字起こしをノートブックにまとめ、同じ質問への反応をグループ横断で比べられます。
- AIエージェントの回答には根拠のタイムコードが付くため、元の発言を録音で確かめられます。
- Excel・CSV・Wordで、時刻と話者名つきのまま分析表に書き出せます。
よくある質問
グループインタビューとフォーカスグループインタビューは違いますか。
日本の市場調査ではほぼ同じ意味で使われることが多い言葉です。どちらも、条件をそろえた少人数の参加者に、司会者の進行で話し合ってもらう方法を指します。
オンラインでも実施できますか。
できます。地域の違う参加者を集めやすくなる一方、発言が重なると聞き取りにくく、非言語の反応も見えにくくなります。人数を少なめにし、発言の順番を決めて進めると記録も整理しやすくなります。
何グループ実施すればよいですか。
比べたい層の数と、問いの広さで決めます。KruegerとCaseyは層ごとに3〜4グループを計画することを勧めています。1グループだけで結論を出すと、その回の雰囲気による偏りと区別できません。
参加者の発言を報告書に引用してもよいですか。
事前の同意で引用の範囲と匿名化の方法を説明しておけば、参加者IDや属性(例:「製造業・総務歴3年」)を添えて引用できます。少人数の組織では、属性の組み合わせで個人が特定されないよう注意します。
インタビュー調査の流れとガイド
聞く・記録する・分析する・使うの4段階で、関連するガイドをまとめました。各ページの架空の例は、同じ架空の調査(中小企業の総務担当者への聞き取り)を使っています。
1. 聞く
- デプスインタビュー
- フォーカスグループインタビュー(このページ)
- 半構造化インタビューの質問
2. 記録する
3. 分析する
4. 使う