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デプスインタビュー

デプスインタビューとは。進め方とインタビューガイドの作り方

1対1で時間をかけて話を聞き、行動の理由や意味づけを本人の言葉で理解する調査方法です。向いている問い、ガイドの作り方、人数の考え方、録音から分析までを整理します。

公開日:更新日:執筆・運営:

方法を先に決めるのではなく、答えたい問いから選びます。次のような問いでは、1対1で深く聞く価値があります。

  • 行動の理由が分からない

    数値で「離脱が多い」「乗り換えが起きている」と分かっていても、その理由が見えないとき。本人が置かれた状況と判断の順番を聞きます。

  • 他人の前では話しにくい

    お金、健康、職場の人間関係、失敗の経験など。グループでは本音が出にくい話題は、1対1のほうが向いています。

  • 人によって経緯が大きく違う

    導入の意思決定、介護や転職のように、一人ひとりの経緯が長く複雑な場合。時系列で丁寧にたどる時間が必要です。

  • 仮説を作る段階

    何を測ればよいかがまだ分からない段階。インタビューで論点と言葉を集めてから、アンケートの選択肢を作る使い方もあります。

どれが優れているかではなく、得られるものが違います。組み合わせて使うことも多い方法です。

デプスインタビュー、フォーカスグループインタビュー、アンケートの比較(一般的な傾向)
デプスインタビューフォーカスグループインタビューアンケート
形式1対1で対話複数人(少人数)で話し合う多数に同じ設問
得られるもの個人の経緯、判断の理由、言葉意見の幅、参加者どうしの反応割合、差、傾向の大きさ
向く話題個人的・複雑な経験共通の体験、案への反応選択肢で答えられる問い
注意点1人ずつ時間がかかる。調査者の聞き方に左右される発言の多い人や同調に引っ張られる理由や背景までは分かりにくい
記録録音と逐語録録音・録画と話者の区別回答データ

インタビューガイドは、当日の台本ではなく「聞き漏らしを防ぐ地図」です。調査の問いを、対象者が答えられる具体的な経験の質問に分けます。

  1. 01

    調査の問いを1文で書く

    例:「一人で総務を担う担当者は、社内からの問い合わせ対応をどう回しているのか」。この1文に答えられない質問は削ります。

  2. 02

    問いを経験の質問に変える

    「何が課題ですか」ではなく「最後に問い合わせを受けたときのことを教えてください」。意見より、実際にあった出来事のほうが正確に話せます。

  3. 03

    時系列と深掘りを用意する

    出来事を順番に聞く質問と、「そのとき何を考えましたか」のような深掘り(プローブ)を分けて書きます。

  4. 04

    時間を配分して試す

    本題(具体的な経験と理由)に全体の半分以上を残します。同僚に試行して、意味が通じない質問や順番を直します。

調査の種類

所要時間

1. 導入と同意の確認約6分

録音の可否、目的、データの扱い、途中でやめられることを伝える

2. 背景・ウォームアップ約9分

答えやすい事実から聞き、話す雰囲気をつくる

3. 最近の具体的な経験約21分

「ふだんは」ではなく「最後に〜したとき」を時系列で聞く

4. 判断・感情・理由約18分

語られた出来事の理由と意味づけを、本人の言葉で深める

5. 締めくくり約6分

言い残し、確認したい点、今後の連絡方法を確かめる

できあがったガイド

【デプスインタビュー インタビューガイド】
調査テーマ:社内からの手続きの問い合わせ対応
対象者:従業員50人前後の会社で総務を1〜2人で担当している人
種類:業務プロセス・働き方 所要時間:60分

■ 1. 導入と同意の確認(約6分)
 ねらい:録音の可否、目的、データの扱い、途中でやめられることを伝える
 ・お話は録音し、文字起こしして分析にだけ使います。録音してよいですか。
 ・答えたくない質問は飛ばして構いません。途中でやめることもできます。
 ・正解はありません。ご自身の経験をそのまま教えてください。

■ 2. 背景・ウォームアップ(約9分)
 ねらい:答えやすい事実から聞き、話す雰囲気をつくる
 ・担当されている業務と、1週間の大まかな流れを教えてください。
 ・社内からの手続きの問い合わせ対応は、その中でどのくらいの頻度で発生しますか。

■ 3. 最近の具体的な経験(約21分)
 ねらい:「ふだんは」ではなく「最後に〜したとき」を時系列で聞く
 ・直近で社内からの手続きの問い合わせ対応を担当したときのことを、依頼が来たところから順に教えてください。
 ・その間に、誰とどんなやり取りをしましたか。
 ・記録や資料は、どこに残しましたか。

■ 4. 判断・感情・理由(約18分)
 ねらい:語られた出来事の理由と意味づけを、本人の言葉で深める
 ・その手順になっているのは、どういう経緯からですか。
 ・いちばん気をつかうのはどの場面ですか。それはなぜですか。
 ・新しく来た人に引き継ぐとしたら、何を真っ先に伝えますか。

■ 5. 締めくくり(約6分)
 ねらい:言い残し、確認したい点、今後の連絡方法を確かめる
 ・ここまでで、話し足りなかったことはありますか。
 ・私が聞いておくべきだったのに、聞かなかったことはありますか。
 ・後日、内容を確認させていただく場合の連絡方法を教えてください。

■ 深掘りの声かけ(どの質問でも使う)
 ・「具体的には?」「たとえば?」
 ・「そのとき、何を考えていましたか」
 ・「いつもそうですか。違ったときはありましたか」
 ・沈黙を数秒待つ(すぐに次の質問へ行かない)

■ 記録メモ
 録音開始時刻:
 ファイル名:
 気づき・次回変える質問:

入力内容はこのブラウザの中だけで処理され、送信されません。時間配分は目安です。試行インタビューで見直してください。

決まった正解の人数はありません。問いの広さ、対象者の幅、分析方法によって変わります。人数を決めた理由を説明できることが大切です。

よく引用される研究に、Guestらの2006年の論文があります。比較的均質な60人へのインタビューを分析したところ、最初の12件でほとんどのコードが出そろっていたと報告しています。また、HenninkとKaiserの2022年のシステマティックレビューは、飽和を実証的に検討した研究を集め、対象が比較的均質で目的が絞られた研究では、インタビュー9〜17件の範囲で飽和に達していたとまとめています。

ただし、これらは特定の条件での結果であり、どの調査にも当てはまる目安ではありません。Malterudらは、目的の狭さ、対象者の特性、理論の使い方、対話の質、分析方法によって必要な人数が変わるという「情報力(information power)」の考え方を示しています。また、BraunとClarkeの再帰的テーマ分析のように、「飽和」を終了基準として使わない立場もあります。

実務では、対象者の条件(たとえば業種、規模、経験年数)を先に決めて、それぞれの条件から数人ずつ聞き、分析しながら追加するかを判断する方法がよく取られます。報告書には、何人に、どんな条件で、なぜその人数にしたかを書いてください。

デプスインタビューの分析は、録音と逐語録の質で決まります。当日の進行より前に、同意と録音の段取りを固めます。

  • 募集条件は「何をしている人か」で書きます。年齢や性別だけで選ぶと、問いに関係する経験を持たない人が混ざります。
  • 同意書には、目的、録音・文字起こしの有無、保存期間、誰が読むか、匿名化の方法、途中でやめられることを書きます。研究の場合は所属機関の倫理審査の手続きに従ってください。
  • オンラインなら会議ツールの録音に加えて、念のため別の方法でも録音しておくと、片方が失敗しても話が失われません。
  • 対面では、マイクを2人の間に置き、空調や食器の音が入りにくい席を選びます。
  • 終わった直後に5分だけ、印象に残った発言と時刻、次回変える質問をメモします。記憶が新しいうちのメモは分析の手がかりになります。

良いデプスインタビューは、調査者が話す時間が短く、対象者の具体的な話が長く続きます。

  • 「ふだん」より「最後に」

    「ふだんどうしていますか」と聞くと、理想の手順が語られがちです。「最後にそれをしたとき」を聞くと、実際の行動が出てきます。

  • 相手の言葉で聞き返す

    「面倒だった」と言われたら、「どこが面倒でしたか」と相手の言葉をそのまま使います。調査者の言葉に置き換えると誘導になります。

  • 沈黙を待つ

    答えのあと数秒待つと、補足や本音が続くことがあります。すぐに次の質問へ進まないようにします。

  • なぜを重ねる(ラダリング)

    選んだ理由を「それはなぜ大事ですか」と重ね、具体的な特徴から本人にとっての価値までたどる技法です。問い詰める口調にならないよう、言い方を変えて使います。

  • 矛盾は確かめる

    前の発言と違う話が出たら、「先ほどは〜とおっしゃっていましたが」と確かめます。矛盾の中に、状況による違いが隠れていることがあります。

  • 提案や説明をしない

    困りごとを聞くと解決策を言いたくなりますが、調査中は控えます。説明が必要なら最後に時間をとります。

録音を聞き直しながらメモを取るのではなく、まず全員分を文字にして、読み比べられる状態にします。

  1. 01

    逐語録を作る

    話者と時刻が付いた文字起こしを作り、引用に使う部分は録音と照合します。言いよどみや言い直しを残すかは、分析の目的に合わせて決めます。

  2. 02

    1人ずつ要約する

    対象者ごとに、経緯、判断の理由、困りごとを1ページにまとめます。要約には、根拠となる発言の時刻を添えます。

  3. 03

    コーディングする

    発言に意味のラベルを付け、まとめていきます。方法(M-GTA、SCAT、テーマ分析など)は問いに合わせて選びます。

  4. 04

    人をまたいで比べる

    似た行動や判断のパターンを持つ人をまとめ、違いが生まれる条件を探します。合わない事例も記録します。

  5. 05

    使える形にする

    発見をKJ法の図解、ペルソナ、カスタマージャーニーなどにまとめます。どの形にしても、元の発言にたどれるようにしておきます。

Klangは録音ファイルや会議アシスタントで記録したインタビューを文字起こしし、話者と時刻つきで残します(話者の自動識別はプロプラン)。ノートブックには分析したいインタビューだけを選んで追加でき、回答には根拠となったファイルとタイムコードが示されます。

  • フリープランでも文字起こしは無制限。音声・動画ファイルは1つ10GBまでアップロードできます。
  • Word・Excel・CSVなどで、時刻と話者名つきのまま書き出せます。
  • ノートブックで「この3人が挙げた困りごと」を尋ね、示されたタイムコードで原文を確かめられます。
無料で試す
デプスインタビューと半構造化インタビューは同じですか。

重なりますが、視点が違う言葉です。デプスインタビューは「1対1で深く聞く」という調査の形を指し、半構造化インタビューは「テーマは決めつつ、質問の順番や言い回しを柔軟に変える」という進め方を指します。デプスインタビューの多くは半構造化の形で行われます。

1回の時間はどのくらいが適切ですか。

実務では60〜90分程度で設計されることが多くあります。テーマが狭ければ45分でも足ります。対象者の負担を考え、本題に十分な時間を残せる長さにしてください。

オンラインでも実施できますか。

できます。移動がないため、遠方の対象者にも聞けます。録音の同意を取り、会議ツールの録音機能や会議アシスタントで記録します。画面共有で実際の操作を見せてもらうこともできます。

謝礼は必要ですか。

業務として協力してもらう場合を除き、時間への対価として謝礼を用意することが一般的です。金額や渡し方は、所属組織の規程や研究倫理の手続きに従ってください。

AIに分析を任せてもよいですか。

AIは、発言の検索、要約の下書き、コードの候補出しには役立ちます。一方で、どの観点で読むか、合わない事例をどう解釈するかは調査者の判断です。AIの出力は必ず原文で確かめ、結論の根拠には実際の発言を使ってください。

聞く・記録する・分析する・使うの4段階で、関連するガイドをまとめました。各ページの架空の例は、同じ架空の調査(中小企業の総務担当者への聞き取り)を使っています。

  1. 1. 聞く

  2. 2. 記録する

  3. 3. 分析する

  4. 4. 使う

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