保育のAI活用
保育士の仕事はAIでなくなるのか。ICTとAIに渡す事務と、保育士に残る仕事を分ける。
登降園の打刻、連絡帳の配信、午睡のチェックは保育ICTの仕事になりつつあります。では、保育士の手元に何が残り、AIはどこまで手伝えるのか。保育園の1日と1年に出てくる記録を場面ごとに並べ、児童福祉法と保育所保育指針に照らして整理しました。0歳児の途中入園の面談24分を、面談記録の下書きにする例も載せています。
公開日:更新日:執筆・運営:Klang AI AB
保育園の1日と1年で、記録が生まれる場面とAIの関わり方
保育の記録は、書く記録と話す記録に分かれます。書く記録は保育ICTが得意で、話す記録はAIの文字起こしが得意です。録音してよい場面は、大人同士が話す場面に限られます。
Klangは保育ICTシステムではありません。登降園の打刻、連絡帳の配信、指導計画の作成はできません。受け持つのは表の下半分の、大人同士の会話を文字にして、あとから探せるようにする部分です。
| 場面 | 残す記録 | 向いている道具 | 録音するか |
|---|---|---|---|
| 登園・降園 | 時刻と引き渡した人 | 保育ICTの打刻 | しない |
| 日中の保育 | 連絡帳、保育日誌、午睡チェック表 | 保育ICT、午睡センサー。文面は保育士が自分の観察で書く | しない(子どもの声が入る) |
| 入園前の面談 | 家庭での生活、食事、健康、お迎えの人 | AIの文字起こしで下書き、園の書式に転記 | 保護者の了承を得て録音する |
| 個人面談・保護者からの相談 | 園と家庭の様子、相談の内容、双方のタスク | AIの文字起こしで下書き | 了承を得て録音する |
| ケース会議 | 気になる子どもの事実の経過と、関係機関との連携 | 発言の記録は残すが、要約の共有範囲を絞る | 園長が判断する |
| 職員会議・園内研修・行事の振り返り | 決まったこと、担当、期限、学んだこと | AI議事録 | 録音する |
保育士の仕事を決めている条文と、AIが代われない部分
保育のAI導入を考えるとき、AIの機能の一覧より先に、保育士と保育所に何が求められているかを確かめておくと、任せてよい範囲がはっきりします。
AIが手伝えるのは、面談で聞いたことを書き起こし、見出しごとに並べる作業です。何を聞き、どう受け止め、何を保護者に返すかは、保育士が決めます。
児童福祉法第18条の4
保育士は、児童の保育と、保護者に対する保育に関する指導を行う者です。子どもとの関わりと保護者への助言が、資格の中心にあります。
設備運営基準第35条
保育所の保育は、養護と教育を一体的に行うことを特性とし、内容は国が定める指針、つまり保育所保育指針に従います。
設備運営基準第36条
保育所の長は、保護者と密接に連絡をとり、保育の内容について理解と協力を得るよう努めます。面談と連絡帳は、この連絡の手段です。
保育所保育指針(子育て支援)
保護者の気持ちを受け止め、信頼関係を基本に、保護者の自己決定を尊重することを求めています。面談の聞き方そのものが、保育士の専門性です。
例:0歳児の途中入園の面談24分を、入園前の面談記録にする
11月に0歳児クラスへ途中入園する子どもの母親と、主任・看護師が話した面談です(架空)。ミルクと離乳食、寝かしつけ、慣らし保育の日程、お迎えの人が話題に出ました。
下書きは「入園と慣らし保育」「家庭での生活」「お迎え」「園のタスク」「家庭のタスク」の見出しで作りました。園の入園面談票と同じ並びにしたいときは、項目の名前を指示に書いておきます。
確定した記録は、保育ICTシステムや紙の児童票など、園が決めた場所に移します。ミルクの量や日付は、タイムスタンプの位置で音声を再生して確かめてから書き写します。
文字起こし(抜粋)
- 01:20主任入園は11月2日の月曜日からですね。最初の1週間は慣らし保育で、短い時間から始めます。
- 03:05母親ミルクは1回200ccを、1日に3回飲んでいます。
- 05:40看護師離乳食は、どの食材まで食べたことがありますか。
- 05:52母親おかゆと野菜は大丈夫です。卵はまだ試していません。確認1
- 09:30母親寝るときは、抱っこでないとなかなか寝てくれなくて。
- 14:10母親私の復職は16日からです。お迎えは、平日は夫の母に頼むこともあります。確認2
- 18:45主任食材の確認表は、来週の火曜までに出していただけますか。確認3
Klangが作る下書き
- 入園と慣らし保育
- 入園日:11月2日(月)
- 慣らし保育:11月2日(月)〜6日(金)。短い時間から始める
- 母親の復職日:11月16日(月)
- 家庭での生活
- ミルク:1回200cc、1日3回
- 離乳食:おかゆと野菜は食べている。卵は未経験
- 入眠:抱っこでないと寝つきにくい
- お迎え(共有範囲:担任・主任・園長)
- 平日は父方の祖母がお迎えに来ることがある
- 園のタスク
- お迎えに来る人の登録の手続きを案内する(主任)
- 担任に入眠の様子を引き継ぎ、慣らし保育の時間割を決める
- 家庭のタスク
- 食材の確認表を10月20日(火)までに出す
記録にする前に確認すること
- 確認105:52 卵を食べたことがない、という話は記録に残しますが、給食の内容は面談の文字起こしでは決めません。園の食材の確認表に家庭で書いてもらい、看護師と栄養士が確かめます。
- 確認214:10 祖母のお迎えは、話に出ただけでは引き渡しの根拠になりません。お迎えに来る人の登録を、園の書式で受け取ります。家庭の状況の項目は、見られる職員を担任・主任・園長に絞ります。
- 確認318:45 「来週の火曜」は、面談日の10月15日(木)から数えて10月20日(火)です。下書きでは日付に直して、家庭のタスクに入れました。
保育室の中は録音しない:子どもの声を記録に入れない理由
保育の現場でAIを使うとき、一番気をつけたいのは子どもの声と名前です。Klangを使うのは、大人同士の会話に限るのがおすすめです。
- 保育室で録音すると、録音を了承していない家庭の子どもの声や名前まで入ります
- 連絡帳や保育日誌の文面は、保育士が自分の目で見たことを書く記録です。AIで言い回しを整えても、観察の中身は保育士が書きます
- 気になる子どもの話をするケース会議では、記録を事実の経過に限り、推測や評価は書き分けます
- 保育所保育指針は、不適切な養育の兆候があれば市町村や関係機関と連携し、虐待が疑われる場合は速やかに市町村か児童相談所に通告するよう求めています。録音の文字起こしを待たずに、園の手順で動きます
シフト勤務の園で、職員会議と園内研修の記録を全員に届ける
早番と遅番で職員がそろわない保育園では、会議に出られなかった職員に何を伝えるかが毎回の課題です。保育所保育指針は、職場内での研修の充実を求めています。
- 01
職員会議
「決まったこと・担当・期限」を必ず見出しに入れて下書きを作ります。運動会の雨天時の判断のように、あとで聞かれる決定は、AIチャットで「いつ決めたか」を聞くと該当の発言が出てきます。
- 02
園内研修・公開保育の振り返り
発言から研修記録の下書きを作り、子どもの名前はイニシャルに置き換えるよう指示します。参加できなかった職員は、要約と該当箇所の音声で追いつけます。
- 03
行事の振り返り
発表会や遠足のあとに、来年に引き継ぐ改善点だけを残します。来年の担当者がフォルダを開けば、去年の話し合いをそのまま読めます。
児童福祉法第18条の22と設備運営基準第14条の2:録音の前に園で決めること
児童福祉法第18条の22は、保育士が正当な理由なく業務で知り得た人の秘密を漏らすことを、保育士でなくなったあとも含めて禁じています。設備運営基準第14条の2は、職員に利用者と家族の秘密の保持を求め、施設には、辞めた職員が秘密を漏らさないための措置を求めています。
Klangは会話データを学習に使わず、通信時と保存時のデータを暗号化しています。運営法人の情報セキュリティの規程がある場合は、その規程に沿って導入を決めてください。
| 決めること | 決め方の例 |
|---|---|
| 録音する面談の種類 | 入園面談と個人面談は了承を得て録音、ケース会議は園長が都度判断 |
| 使う端末 | 園のタブレットだけ。私物のスマートフォンには録音を残さない |
| 見られる職員 | クラスごとにフォルダを分け、担任・主任・園長だけを招待する |
| 退職する職員 | 退職の日にアカウントを外し、誓約書で秘密の保持を確かめる |
| 保護者への説明 | 目的、保管の場所、見られる職員を伝える。断られたらメモで記録する |
保護者との面談と職員会議を、クラスごとに探せる記録に
園のタブレットやスマートフォンのアプリで録音し、終わったらそのまま文字起こしとAI要約が作られます。オンラインの研修や法人の会議は、Zoom・Teams・Google Meetに会議ボットを入れて録音できます。下書きはWordで書き出して、園の面談票や議事録の様式に貼り付けます。
- ¥0のフリープランで、文字にできる時間の上限はありません
- クラスや園ごとにフォルダを分け、見られる職員を選べます
- 話者の自動識別はプロプランで使えます
よくある質問
保育士の仕事はAIでなくなりますか。
なくなりません。児童福祉法第18条の4が定める保育士の仕事は、子どもの保育と、保護者への保育に関する指導です。AIや保育ICTで減るのは、登降園の記録、連絡帳の配信、会議や面談の記録といった事務の時間です。
保育園でAIを導入するなら、どこから始めるのがよいですか。
家庭の情報が少ない職員会議や園内研修の記録から始めるのがおすすめです。文字起こしの精度と、下書きを直す手間を確かめてから、了承を得た入園面談や個人面談に広げます。
保育の現場で、子どもの様子を録音してAIに記録させてもよいですか。
おすすめしません。保育室で録音すると、了承を得ていない家庭の子どもの声や名前まで入ります。連絡帳や保育日誌は保育士が自分の観察で書き、Klangを使うのは保護者や職員と話す場面に限ってください。
入園前の面談の記録には、何を残せばよいですか。
入園日と慣らし保育の日程、食事と睡眠の様子、健康の情報、お迎えに来る人、園と家庭それぞれのタスクを残します。アレルギーとお迎えの人は、面談の記録だけで決めず、園の書式で保護者から受け取ります。
連絡帳をAIで書いてもよいですか。
言い回しを整える手伝いまでにとどめるのが安全です。連絡帳は、保育士が見た子どもの姿を保護者に伝える記録です。Klangには連絡帳を書く機能も配信する機能もなく、連絡帳は保育ICTのシステムで扱います。
保育園でKlangを使う費用はいくらですか。
面談や会議の文字起こしと要約は、フリープランなら¥0です。主任と保護者のように声で発言を分けるにはプロプランが必要で、月払いは1ユーザー¥1,180、年払いは月あたり¥980です(税込)。