司法書士・行政書士のAI活用
司法書士・行政書士のAI活用。AIでなくなる仕事と、面談の聞き取りを記録にする方法。
登記の申請書も許認可の書類も、作れるのは法律が認めた資格者だけです。AIが軽くするのは、その前にある相談者からの聞き取りと、あとに続く書類集めの連絡です。相続登記と在留資格の2つの相談を例に、司法書士法・行政書士法の条文に沿って整理しました。
公開日:更新日:執筆・運営:Klang AI AB
司法書士と行政書士で、法律が資格者に限っている業務
「書類はAIが作れるから、司法書士も行政書士もいらなくなる」という見方は、2つの資格の業務を定める条文を見ると成り立ちません。業務の範囲と、それを資格者以外に禁じる条文を並べました。
| 項目 | 司法書士 | 行政書士 |
|---|---|---|
| 業務の範囲 | 第3条:登記・供託の手続の代理、法務局や裁判所に出す書類の作成、それらの相談など | 第1条の3:官公署に出す書類、権利義務・事実証明に関する書類の作成。第1条の4:その提出手続の代理など |
| 資格者以外への禁止 | 第73条:司法書士会に入会した司法書士と司法書士法人以外は、第3条第1項第1号から第5号の業務を行えない | 第19条:行政書士と行政書士法人以外は、いかなる名目でも報酬を得て第1条の3の業務を業として行えない |
| 秘密を守る義務 | 第24条:司法書士と、司法書士であった者。違反は第76条で6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(告訴が必要) | 第12条:行政書士と、行政書士であった者。第19条の3:使用人その他の従業者 |
| AIが手伝える作業 | 相談の書き起こし、戸籍の読み取りの補助、先例の下調べ | 要件に関わる事情の聞き取りの記録、追加書類の案内の下書き |
司法書士の仕事はAIでなくなるのか:相続登記で考える
相続登記は、AIが入りやすく見えて、聞き取りの比重が大きい仕事です。登記の申請書を書くより前に、誰が相続人で、誰がどの不動産を継ぐのかを確かめる必要があります。
戸籍の文字を読み取って相続関係図の下書きを作る作業は、AIで短くなります。前の配偶者との子がいないかを戸籍でたどって相続人を確定させ、全員の合意を遺産分割協議書にまとめるのは司法書士です。
不動産登記法第76条の2は、相続で所有権を取得したと知った日から3年以内に登記を申請するよう相続人に求めています。正当な理由なく怠ると、第164条で10万円以下の過料の対象です。期限が「いつ知ったか」で変わるため、初回の面談で何を聞いたかの記録がそのまま期限の根拠になります。
司法書士法第2条は、業務に関する法令と実務に精通して、公正かつ誠実に業務を行うよう司法書士に求めています。AIの下調べを使っても、条文と先例を確かめる責任は変わりません。
例:相続登記の初回面談35分を、相談記録の下書きにする
父親名義のままの実家を相続した長男が、司法書士事務所に相談に来た例です(架空)。録音をKlangにアップロードすると、聞き取った内容を見出しごとに分けた下書きができます。
この下書きは、相談者から聞いたことと、司法書士が説明したことを別の見出しに分けています。戸籍がそろう前の相続関係は、あくまで相談者の説明です。分けておけば、2回目の面談で何を確かめればよいかがすぐにわかります。
2024年4月1日より前に相続を知った不動産について、法務省は2027年3月31日までの登記を案内しています。期限までに遺産分割がまとまりそうにないときの選択肢として、第76条の3の相続人申告登記を面談で伝えた場合も、その説明を記録に残しておきます。
文字起こし(抜粋)
- 02:15相談者父が2023年の秋に亡くなりました。実家の土地と建物が、父の名義のままです。
- 02:48相談者相続人は、母と私と妹の3人です。妹は大阪に住んでいます。確認1
- 08:30相談者相続登記は義務になったと聞きました。いつまでにやればいいですか。
- 08:52司法書士2024年4月より前に相続を知った不動産は、2027年3月31日までに申請が必要です。確認2
- 14:10相談者実家は私が継ぎます。母はそのまま住み続けて、妹も了承しています。
- 14:35司法書士それでしたら、遺産分割協議書を作りましょう。お父様の出生から亡くなるまでの戸籍が必要です。
- 21:05相談者戸籍は、来週中に取り寄せます。確認3
Klangが作る下書き
- ご相談の不動産
- 亡父(2023年秋に死亡)名義の実家の土地・建物
- 相談者から聞いた相続関係
- 相続人は母・長男(相談者)・妹の3人
- 妹は大阪在住。長男が実家を継ぐことに了承している
- 母は実家に住み続ける予定
- 司法書士が説明したこと
- 申請の期限は2027年3月31日
- 遺産分割協議書を事務所で作る。相続人全員の署名と押印が要る
- 集める書類
- 亡父の出生から死亡までの戸籍(相談者が来週中に取り寄せる)
記録にする前に確認すること
- 確認102:48 相続人の顔ぶれは、まだ相談者の記憶です。戸籍がそろってから司法書士が相続関係を確定させ、記録の見出しを「確定した相続関係」に直します。
- 確認208:52 この期限は「2023年秋に相続を知った」という聞き取りが前提です。前提を記録に一行書き添え、知った時期が違えば期限も見直します。
- 確認321:05 「来週中」は「10月16日(金)まで」と日付で書きます。10月12日(月)はスポーツの日なので、役所が開いている日は4日しかありません。
行政書士の仕事はAIに奪われるのか:第1条の2が求める「情報通信技術の活用」
行政書士法は、デジタル化を行政書士の仕事の外に置いていません。第1条の2第2項は、デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用などを通じて国民の利便の向上と業務の改善進歩を図るよう、行政書士に求めています。
一方で第19条は、行政書士と行政書士法人でない者が「いかなる名目によるかを問わず」報酬を得て官公署に出す書類を作ることを禁じています。AIで書類の様式を埋められても、報酬を受けて書類を作る業務は資格者のものです。
許認可や在留資格の相談では、要件にあたる事実を相談者から引き出す力が結果を分けます。経歴、事業の計画、雇用の条件といった事実は、相談者が自分では重要だと気づかずに話すことも多く、録音から拾い直せる価値が大きい分野です。
例:在留資格の相談28分を、会社に頼む書類の一覧にする
留学生の採用を予定している会社の人事担当者と、行政書士がオンラインで話した相談です(架空)。最後に出た書類の話が、そのまま会社への依頼の下書きになります。
下書きから、会社に送る「ご用意いただく書類」の案内文をAIチャットで作れます。送る前に、行政書士が要件の判断を書き足し、期日を土日にかからない日付へ直します。
文字起こし(抜粋)
- 01:40人事担当者来年3月に大学を卒業する留学生を、4月から海外営業で採用したいんです。
- 04:05人事担当者専攻は経営学で、ベトナムの取引先との交渉を担当してもらう予定です。確認1
- 09:30行政書士技術・人文知識・国際業務への変更を考えましょう。業務の内容を書いた資料はありますか。
- 12:18人事担当者入社後の最初の半年は、倉庫での研修もあります。確認2
- 20:45人事担当者雇用契約書と会社の決算書は、今月中にお送りします。確認3
Klangが作る下書き
- 相談の内容
- 2027年3月卒業予定の留学生を、4月から海外営業職で採用したい
- 大学での専攻は経営学(人事担当者の説明)
- 予定している業務
- ベトナムの取引先との交渉
- 入社後約半年は倉庫での研修がある
- 会社に用意してもらう書類
- 雇用契約書
- 会社の決算書
- 業務の内容を書いた資料
記録にする前に確認すること
- 確認104:05 専攻と業務のつながりは、許可の見込みを左右します。専攻は成績証明書で確かめ、判断は行政書士が記録に書き足します。下書きは説明の聞き取りにとどめます。
- 確認212:18 研修の期間と内容は、申請の書き方にかかわる事実です。要約で落ちやすい一言なので、音声を聞き直して研修計画の資料も頼みます。
- 確認320:45 「今月中」の10月31日は土曜日です。期日は「10月30日(金)」として、会社に送る案内に書きます。
事務所や司法書士法人で、録音を始める前に決めておくこと
相続や許認可の相談には、その場にいない家族や従業員の情報がたくさん出てきます。録音の前に、次の5点を所内で決めておきます。
Klangは会話データをAIの学習に使わず、通信と保存の両方で暗号化しています。フォルダ単位で閲覧できるメンバーを決められ、事務所の環境に置くオンプレミスでの導入にも対応しています。
- 案件ごとにフォルダを作り、開けるのは担当の資格者と補助者だけにする
- 相談者に、録音の目的と保管の方法を伝え、了承を得てから録音を始める
- 相談者が話しにくそうな話題に入ったら、いったん録音を止める
- 職員の守秘は、就業規則や誓約書で資格者と同じ水準に決めておく
- 案件が終わったあと、録音と文字起こしをいつまで残すかを決めておく
初回面談から完了まで、案件ごとに残る聞き取り
対面の面談はICレコーダーやスマートフォンのアプリで録音してアップロードし、オンラインの相談はZoom・Teams・Google Meetに会議ボットを入れて録音します。2回目の面談の前には、相談者の名前で前回の発言を探せます。確かめた記録はWordに書き出して、案件のファイルに綴じられます。
- 録音は学習に使われず、送るときも保管中も暗号化されます
- 案件ごとのフォルダで、開ける人を事務所の中でも絞れます
- 文字起こしはフリープランで無制限。声で発言を分ける機能はプロプランです
よくある質問
司法書士の仕事はAIでなくなりますか。
司法書士の仕事はなくなりません。登記の申請代理や法務局に出す書類の作成は、司法書士法第73条で司法書士と司法書士法人以外に禁じられています。AIで短くなるのは、戸籍の読み取りや面談の書き起こしといった周辺の作業です。
行政書士の仕事はAIに奪われますか。
報酬を得て官公署に出す書類を作る業務は、行政書士法第19条により、名目を問わず行政書士と行政書士法人に限られています。同法第1条の2第2項は情報通信技術の活用による業務の改善を行政書士に求めており、AIは業務を改善する道具として位置づけられます。
AIに登記申請書や許認可の申請書類を作らせてもよいですか。
AIの出力を下書きの材料に使っても、書類の内容に責任を負うのは資格者です。Klangは書類を作るツールではありません。登記申請書、遺産分割協議書、許認可の申請書類は作れず、面談の録音から聞き取りの記録を作るところを受け持ちます。
司法書士の面談では、相談者の話をどこまで記録に残せばよいですか。
期限や手続の選び方に関わる事実は、相談者の言葉のまま残しておくと後で確かめられます。相続登記なら、亡くなった時期と相続を知った時期、相続人として名前が挙がった人、誰がどの不動産を継ぐ予定かが中心です。
司法書士法人や職員の多い事務所で使うときの注意点は。
案件ごとにフォルダを分け、担当の資格者と補助者だけが開けるように設定します。司法書士法第24条の守秘義務は司法書士本人に課されているため、職員の守秘は就業規則や誓約書で同じ水準に決めておきます。
Klangはいくらで使えますか。
フリープランは¥0で、カード登録なしに文字起こしを無制限に使え、1ファイル10GBまでアップロードできます。司法書士と相談者の発言を声で分ける機能はプロプランで、月払いは1ユーザーあたり¥1,180(税込)です。