会話分析
会話分析とは。会議・商談・インタビューの会話から傾向を読む手順
「会話分析」には、社会学の研究方法としての意味と、ビジネスで会話の記録から顧客や組織の傾向を読み取る意味の2つがあります。両方の違いを整理し、録音の文字起こしからコード化、テーマの整理、複数の会話を横断する問いまでの手順を、架空の商談の例で説明します。
更新日:執筆・運営:Klang AI AB
会話分析の2つの意味:研究の方法とビジネスの分析
検索して出てくる「会話分析」は、目的の違う2つのものです。どちらを知りたいかで、読む資料が変わります。
学術的な会話分析は、ハーヴィ・サックスが切り開き、エマニュエル・シェグロフとゲイル・ジェファーソンが発展させた社会学の研究領域です。話し手と聞き手が入れ替わる「順番交替(ターンテイキング)」、「質問と答え」のように対になる「隣接ペア」、言い間違いや聞き違いを直す「修復」といった概念で、会話が成り立つ手続きを観察します。
このガイドの後半では、ビジネスの会話分析を扱います。ただし、学術的な会話分析の「実際の発言に戻って確かめる」という姿勢は、ビジネスの分析でもそのまま役に立ちます。
| 観点 | 学術的な会話分析(CA) | ビジネスの会話分析 |
|---|---|---|
| 問い | 会話はどのような手続きで成り立っているか | 顧客や社員の会話に、どんな課題や関心が繰り返し出ているか |
| 対象 | 短い会話の断片を細かく | 多数の会議・商談・問い合わせを横断して |
| 書き起こし | 間(ま)、重なり、言い直しまで記号で細かく残す | 話者と発言内容が分かる文字起こし。必要に応じて整文 |
| 成果 | 会話の仕組みについての知見 | テーマの一覧、件数、代表的な発言、改善の提案 |
会話分析の進め方:5つの手順
営業チームが「失注した商談で、顧客は何を気にしていたか」を知りたい場面を例に、手順を追います。
- 01
分析の問いと対象を決める
「直近3か月の失注商談20件で、顧客が挙げた懸念は何か」のように、期間・件数・問いを先に決めます。問いがないまま全部の会議を読むと、印象に残った発言だけが結論になりがちです。
- 02
話者ごとに文字起こしする
誰の発言かが分からないと、顧客の懸念と自社の説明が混ざります。固有名詞と数字は元の音声で確かめ、聞き取れない箇所は推測で埋めずに印を残します。
- 03
発言にコードを付ける
顧客の発言の区間に「価格」「導入の手間」「社内の承認」など短いラベルを付けます。最初は5〜10個のコードで始め、当てはまらない発言が増えたらコードを足します。
- 04
テーマにまとめ、件数と発言を添える
似たコードを束ねてテーマにし、何件の商談で出たか(母数つき)と、代表的な発言を2〜3個添えます。件数だけの表は、なぜそう言ったかが伝わりません。
- 05
複数の会話を横断して問いを重ねる
「受注した商談では同じ懸念がどう解消されたか」「この懸念は先月から増えているか」のように、比較の問いを立てて確かめます。
ステップ1
集める
分析の問いを決め、対象の会議・商談・インタビューを選ぶ
ステップ2
文字にする
録音を話者ごとに文字起こしし、固有名詞と数字を確かめる
ステップ3
コードを付ける
発言の区間に「価格への不安」などの短いラベルを付ける
ステップ4
テーマにまとめる
似たコードを束ね、件数と代表的な発言を添える
ステップ5
問いを重ねる
複数の会話を横断して、変化や違いを確かめる
分析結果のまとめ方:架空の失注商談20件の例
分析の結果は、テーマ・件数・代表的な発言・次の打ち手を1つの表にすると、読む人が判断しやすくなります。
1つの商談に複数のテーマが出るため、件数の合計は母数と一致しません。表の下に「1件の商談に複数のテーマを数えた」と注記しておくと、読み違いを防げます。
| テーマ | 出た商談の数 | 代表的な発言 | 次の打ち手 |
|---|---|---|---|
| 社内の承認が通らない | 20件中9件 | 「上に説明する資料がないと決められない」 | 稟議用の資料を商談後に送る |
| 導入の手間 | 20件中6件 | 「現場に覚えてもらう時間がない」 | 初回の設定を一緒に行う提案 |
| 価格 | 20件中5件 | 「他社より高い理由が分からない」 | 比較表で違いを説明する |
事実・発見・インサイトを分けて書く
会話分析の報告でよく起きるのは、発言そのものと分析者の解釈が混ざることです。3つを分けて書くと、根拠をたどれる報告になります。
事実
実際の発言です。「上に説明する資料がないと決められない」(3月12日の商談、顧客の部長)のように、日付と話者を添えます。
発見
複数の事実から見える傾向です。「失注20件中9件で、社内の承認が理由に挙がった」のように、件数と母数で書きます。
インサイト
傾向の背景にある理由の解釈です。「担当者は前向きでも、決裁者に説明する材料が足りていない」のように書き、解釈であることが分かるようにします。
テキストマイニング・VOC分析・感情分析との使い分け
会話分析は、目的と件数で他の分析手法と組み合わせます。
| 手法 | 向いている問い | 件数の目安 |
|---|---|---|
| 会話分析(コード化) | なぜそう言ったか、どんな文脈で出たか | 数件〜数十件を深く |
| テキストマイニング | どの言葉がよく出るか、一緒に出る言葉は何か | 数百件以上を広く |
| VOC分析 | 顧客の声をどう分類し、改善につなげるか | 問い合わせ・商談・アンケート |
| 感情分析 | 肯定・否定の傾向がどう変わったか | 多数の発言の傾向を見る |
Klangで会話を横断して分析する
会議や商談の録音が増えるほど、1件ずつ読むより、まとめて問いを立てるほうが早くなります。
Klangでは、録音をアップロードするか、Zoom・Microsoft Teams・Google Meetの会議を会議アシスタントで録音して文字起こしできます。文字起こしした会議にはAIチャットで質問でき、複数の会議や資料を組み合わせて分析することもできます。回答から根拠になった発言に戻り、元の音声で確かめられます。
決まった時刻にフォルダ内の会議をまとめて読むスケジュール分析(プロプラン以上)を使うと、「今週の商談で多かった懸念」のような定点観測を自動で続けられます。話者の自動識別はプロプランの機能です。お客様の会話データはAIモデルの学習に利用しません。
会議と商談の記録に、まとめて問いを立てる
Klangは会議や商談を文字起こしし、AIチャットで複数の会議を横断して質問できるようにします。回答から根拠の発言と元の音声に戻れるので、件数だけでなく理由まで確かめられます。
- 複数の会議や資料を組み合わせて分析できます。
- 回答から根拠の発言に戻って確かめられます。
- お客様の会話データをAIモデルの学習に利用しません。
よくある質問
会話分析とは何ですか?
会話の記録を細かく読み、話し手が何をどのように伝えているかを明らかにする分析です。学術的には1960年代に始まった社会学の研究領域を指し、ビジネスでは商談や会議の録音から顧客や組織の傾向を読み取る取り組みを指すことが多くあります。
会話分析と定性調査はどう違いますか?
定性調査は、インタビューや観察で数値にしにくい情報を集める調査全体を指します。会話分析は、その中で集めた会話の記録を読み解く方法の1つです。インタビューの逐語録をコード化してテーマにまとめる作業は、両方に共通します。
会話分析には何件くらいの会話が必要ですか?
問いによります。理由や文脈を深く知りたいなら数件から数十件で始められます。言葉の出現頻度のような傾向を見たい場合は、数百件以上を対象にするテキストマイニングと組み合わせます。
AIに会話分析を任せられますか?
発言の要約やテーマの候補を出すところまでは、AIが手伝えます。ただし、コードの定義、どの発言をどのテーマに入れるかの判断、解釈は人が行い、根拠になった発言を確かめてください。
インサイトとは何ですか?
会話の記録から見えた傾向の背景にある理由についての解釈です。実際の発言(事実)、件数で示す傾向(発見)と分けて書くと、根拠をたどれる報告になります。
分析ガイド:目的から手法を選ぶ
テキストマイニング、VOC分析、感情分析、定性分析は、同じ8件の架空データや共通の考え方(原文に戻って確かめる、母数を添える)でつながっています。
| 知りたいこと | 読むガイド |
|---|---|
| 大量の自由記述の傾向を数えたい | テキストマイニングの手法と頻出語・共起の分析例 |
| 顧客の声を分類して改善につなげたい | VOC分析のやり方と分類シート |
| 肯定・否定の傾向を測りたい | 感情分析の仕組みと日本語での注意点 |
| 少数のインタビューを深く読みたい | 定性分析とコーディングの手順 |
| 研究・卒論のインタビューを分析したい | 研究インタビューの逐語録と分析の手順 |
| 会議や商談の会話を横断して分析したい | 会話分析のやり方:文字起こしからテーマ・インサイトまで(このページ) |
| 分析結果を社内の知識として残したい | ナレッジマネジメントとナレッジ共有の進め方 |