VOC分析
VOC分析とは。顧客の声を分類して改善を決める4つの手順
VOC分析は、顧客インタビュー・商談・録音済みの通話・問い合わせ・アンケートに残る顧客の声を集め、「対象×感情」の2軸で分類し、件数と原文を添えて改善を決める分析です。集める・分類する・分析する・共有するの4段階で進めます。商談の録音から声を拾う例、VOC分析ツールの選び方、分類辞書の作り方と無料のExcel分類シートつきです。
公開日:更新日:執筆・運営:Klang AI AB
VOCとは何か
VOC(Voice of Customer)は顧客の声を指します。VOC分析は、その声を集めて分類し、何を直すべきかを決めるまでの一連の活動です。
アンケートの満足度スコアは「どれくらい満足しているか」を教えてくれますが、「なぜそう感じたか」は教えてくれません。スコアが下がった理由を知ろうとすると、結局は顧客が書いた文章や話した言葉に戻ることになります。VOC分析が扱うのは、この部分です。
重要なのは、VOCが「集めるもの」ではなく「すでにあるもの」だという点です。問い合わせのやり取り、商談での質問、解約時の会話。多くの会社では、必要な声はすでに大量に社内にあり、分類されていないだけです。新しくアンケートを設計する前に、手元にあるものを見るほうが早いことがよくあります。
どこに顧客の声があるか
声の出どころによって、拾える内容と偏り方が違います。ひとつに頼ると、見える景色が歪みます。
このなかで見落とされやすいのが、商談と解約時の会話です。テキストとして残っていないことが多く、担当者の記憶と要約されたメモに頼りがちだからです。録音して文字起こしをしておくと、この空白が埋まります。
顧客インタビューを行う場合は、同意を得て録音し、文字起こしした全文を分類の材料にします。Klangでインタビューを文字起こしすると、複数のインタビューをまとめてAIに「価格への不満を述べた発言を抜き出して」のように質問でき、出てきた候補は文字起こしの原文で確かめてから分類に使えます。
| 出どころ | 拾えるもの | 偏り方 |
|---|---|---|
| 問い合わせ・サポート | 具体的なつまずき、不具合 | 困った人の声だけが集まる |
| 商談・営業の会話 | 導入前の懸念、比較検討の軸 | 検討中の相手に限られる |
| 解約時のやり取り | 離れた理由、期待とのずれ | 本音が語られないことがある |
| アンケート自由記述 | 満足・不満の理由 | 強い意見に寄る |
| ユーザーインタビュー | 行動の背景、言語化されていない不便 | 件数が少ない |
| レビュー・SNS | 第三者から見た評判 | 発信する層が限られる |
VOC分析の方法(4段階の進め方)
VOC分析(VOC解析とも呼ばれます)は、収集・分類・分析・共有の4段階で進めます。どの段階も飛ばせませんが、最も手を抜かれやすいのは最後の共有です。
- 01
集める:一か所に寄せる
出どころが分かれていると比較ができません。まずは対象の期間と出どころを決めて、同じ場所にまとめます。この時点で「いつ・誰が・どの接点で」の情報を落とさないようにします。
- 02
分類する:軸を先に決める
読みながら分類を作ると、途中で軸が変わって前半と後半がつながらなくなります。先に分類の軸を決め、当てはまらないものは「その他」に置いて後でまとめて見直します。
- 03
分析する:件数と変化を見る
何が多いかだけでなく、前の期間と比べて何が増えたかを見ます。絶対数が少なくても、急に増えた論点のほうが行動につながることがよくあります。
- 04
共有する:決められる人に届ける
レポートを作って終わりにすると、次の期にも同じ分析を繰り返すことになります。誰が何を判断するために見るのかを決め、その人が見る場所に届けます。
商談の録音からVOCを拾う例:文字起こし→分類→確認
会話の声は、録音を文字起こしすれば問い合わせやアンケートと同じ分類辞書で扱えます。手順は、録音を文字起こしする→AIに対象と感情で候補を抜き出させる→担当者が原文で確かめて分類を確定する、の3つです。以下は架空の商談です。
文字起こし(抜粋)
- 03:15人事課長今の打刻機だと、月末に各店舗から紙を集めるのに3日かかっているんです。
- 08:40人事課長料金表の「1ユーザー」って、アルバイトも1人と数えるんですか。そこが分からなくて。確認1
- 14:05人事課長給与ソフトに入れるとき、CSVの列の順番を自分たちで変えられないと困ります。
- 21:30人事課長デモの画面は、店長でも迷わず使えそうですね。確認2
- 27:50人事課長導入するなら、最初の店舗の設定は手伝ってもらえるんでしょうか。確認3
Klangが作る下書き
- 価格 × 疑問
- アルバイトも1ユーザーと数えるのか分からない[08:40]
- 出力 × 要望
- 給与ソフト向けにCSVの列の順番を変えたい[14:05]
- 操作 × 称賛
- デモ画面は店長でも迷わず使えそう[21:30]
- 設定 × 懸念
- 最初の店舗の設定を手伝ってもらえるか[27:50]
- 背景(分類しない)
- 現状は月末の紙の回収に3日かかっている[03:15]
記録にする前に確認すること
- 確認108:40 同じ疑問が他の商談や問い合わせにも出ているかを、分類辞書の「価格」で数えます。1件だけで料金表を変えるのではなく、母数と一緒に報告します。
- 確認221:30 デモでの感想は、使った後の評価とは違います。時点の軸では「検討中」に分け、導入後のインタビューの声と混ぜないようにします。
- 確認327:50 懸念か要望かは、AIの分け方をそのまま使わず、原文と前後の会話を再生して担当者が決めます。迷った例は分類辞書の「境界」に書き足します。
1件の商談から拾えるのは数件の声です。会話のVOCは、同じ期間の商談や顧客インタビューをフォルダにまとめ、ノートブックで複数の会話をまたいで質問すると件数として比べられるようになります。AIの回答に付く時刻から元の発言を再生できるので、集計表に載せる前に言い回しを確かめられます。
分類の軸をどう決めるか
分類は細かくするほど正確になりますが、細かすぎると件数が散って傾向が見えなくなります。最初は粗くて構いません。
実務では「対象 × 感情」の2軸で始めるのが扱いやすく、件数が溜まってから時点の軸を足すとうまくいきます。分類の粒度を変えるときは、過去のデータも遡って付け直せるかを確認してから決めてください。
対象で分ける
製品・価格・サポート・営業対応・ドキュメントなど、声が向けられている先で分けます。担当部署に割り当てやすい分け方です。
感情で分ける
不満・要望・称賛・疑問。同じ「価格」の話でも、高いという不満なのか、体系が分かりにくいという疑問なのかで対応が変わります。
時点で分ける
検討中・導入直後・定常利用・解約検討。同じ問題でも、どの時点で出たかによって優先度が変わります。
分析を改善につなげる
分析の成果は、レポートの厚さではなく、変わった意思決定の数で測ります。
- 件数の多い順ではなく、「直せば効くか」で優先度を決める。件数が多くても仕様上変えられない項目は、説明のしかたを変える課題として扱います。
- 1回の報告に入れる論点は3つまでに絞る。すべてを並べると、どれも動きません。
- 声の原文を1つ添える。集計だけの報告より、実際の言葉が1つあるほうが意思決定が早くなります。
- 前回の報告で挙げた論点がどうなったかを、毎回冒頭に書く。これがないと、同じ指摘が毎回新しい発見として提出されます。
- 定例化して同じ形式で出す。フォーマットが毎回変わると、比較ができません。
うまくいかない理由
VOC分析が続かない原因は、たいてい分析の質ではなく、集める工程の負担にあります。
いちばん多いのは、分析のたびに手作業でデータを集め直しているケースです。最初の1回は熱意で終わりますが、2回目、3回目と続けるうちに担当者の負担が上回り、いつのまにか止まります。集める工程をどれだけ自動化できるかが、続くかどうかを決めます。
次に多いのが、誰も判断に使っていないケースです。レポートは毎月出ているのに、そこから何かが変わった記憶がない。この状態になったら、報告の頻度ではなく宛先と粒度を見直してください。
最後に、商談や通話の声が最初から対象外になっているケースがあります。テキストとして残っていないという理由だけで、いちばん解像度の高い声が使われていないことは珍しくありません。
VOC分析ツールの選び方:声が集まる場所で決める
VOC分析ツールは、1つですべての声を扱えるものではありません。顧客の声がどこに集まっているか(アンケート、問い合わせ、会話)を先に確かめ、その場所に合う種類を選びます。複数の種類を使う場合も、分類辞書は1つにそろえます。
Klangが受け持つのは、会話の側です。商談や顧客インタビューの録音を文字起こしし(フリープランは無制限)、ノートブックで「価格への疑問を述べた発言を時刻つきで」のように会話をまたいで探せます。アンケートの集計や問い合わせ管理の機能はないため、それぞれの専用ツールと分類辞書を共通にして組み合わせてください。Klangは現在、日本では電話の通話録音に対応していません。録音済みの通話ファイルはアップロードして文字起こしできます。
| ツールの種類 | 主に扱う声 | 向いていること | 向かないこと |
|---|---|---|---|
| アンケートツール | 満足度の点数、自由記述 | 同じ設問で定期的に測り、変化を見る | 回答しなかった人の声、会話で出た懸念 |
| 問い合わせ管理(ヘルプデスク) | メール・チャット・フォームの問い合わせ | 件数と対応状況の管理、つまずきの発見 | 導入前の検討の声、解約時の本音 |
| テキストマイニングツール | 大量の文章データ全般 | 頻出語や共起から、傾向の当たりを付ける | 少数の声の意味や、文脈による違いの判断 |
| 会話の文字起こし・分析(Klang) | 録音した商談、顧客インタビュー、録音済みの通話ファイル | 文字にならない会話の声を全文で残し、複数の会話をまたいで探す | アンケートの配信、問い合わせのチケット管理、電話の通話録音 |
例題:問い合わせ・商談・アンケートから集めた8件の声
以下の分類辞書と集計は、この8件の架空データを使っています。実際の顧客の声ではありません。1行を1記録として数え、元の文章と収集元を残します。
| ID | 収集元 | 原文 |
|---|---|---|
| V01 | 問い合わせ | 初期設定が難しい。設定の説明が欲しい。 |
| V02 | 商談 | セットアップの案内が欲しい。 |
| V03 | 問い合わせ | 初期設定の担当が分からない。 |
| V04 | 問い合わせ | 設定中に招待メールが届かない。 |
| V05 | 商談 | 料金が高い。 |
| V06 | 商談 | 価格が分かりにくい。 |
| V07 | 問い合わせ | CSVの出力方法が分からない。 |
| V08 | アンケート | 操作が分かりやすい。 |
分類辞書を作り、迷う境界も書く
8件の架空データを使った業務用の分類例です。分類名だけでなく、含める内容と含めない内容を決めます。下のVOC分類シート(Excel)には、この辞書と8件の記入例、対象・感情・時点・主分類の入力リスト、件数と割合を自動で数える集計シートが入っています。
| 分類 | 含める内容 | 除外・境界 | 根拠ID |
|---|---|---|---|
| 設定 | 初回準備・招待の困りごと | 料金・出力だけの話 | V01–V04 |
| 価格 | 金額・料金説明に関する評価 | 設定手順の不明点 | V05–V06 |
| 出力 | CSVなど書き出しの困りごと | データ入力の話 | V07 |
| 操作 | 日常操作の使い勝手 | 初回準備のみの話 | V08 |
件数と母数を一緒に報告する
この例題では1記録に主分類を1つ付けています。全8件のうち設定4件、価格2件、出力1件、操作1件です。
この例の収集元は問い合わせ4件、商談3件、アンケート1件です。経路ごとの構成も添えて比較します。
実際の集計では同じ記録の二重取込を除外します。一つの記録に複数ラベルを許す場合は、分類の合計が100%を超えることがあります。今回の50%はこの8件の説明であり、顧客全体の比率ではありません。
| 分類 | 件数 | 全8件に占める割合 |
|---|---|---|
| 設定 | 4 | 50% |
| 価格 | 2 | 25% |
| 出力 | 1 | 12.5% |
| 操作 | 1 | 12.5% |
根拠から改善後の確認まで、1行で追う
分析しただけで終わらないように、次の行動と確認日を決めます。以下は架空の記入例です。効果はまだ測っていません。
| 観察と根拠 | 次の行動 | 担当・期限 | 確認 |
|---|---|---|---|
| 設定の相談4件:V01–V04 | 招待と担当設定の説明を試作 | 導入担当・9月18日 | 翌週の設定相談と全件数を比較 |
| 料金説明の疑問:V06 | 次回商談で説明文を確認 | 営業担当・9月18日 | 説明後に残る質問を記録 |
応用:分類と集計で迷う場面
複数の分類が付く声、同じ顧客からの繰り返し、集まる経路の変化など、件数をそのまま比べると判断を誤りやすい場面の扱い方です。
一つの声に複数の分類を付けたら、分母を明記する
架空の5記録では、設定3件、料金2件、出力2件の計7ラベルを付けています。同じ記録を複数回数えることを隠さないようにします。
| 記録 | 付けた分類 | 集計上の扱い |
|---|---|---|
| V1 | 設定・料金 | 1記録、2ラベル |
| V2 | 設定 | 1記録、1ラベル |
| V3 | 料金・出力 | 1記録、2ラベル |
| V4 | 出力 | 1記録、1ラベル |
| V5 | 設定 | 1記録、1ラベル |
5記録を分母にすると設定60%、料金40%、出力40%で合計140%です。複数分類を許したためで、誤計算ではありません。7ラベルを分母にした割合とは意味が違うので、どちらの分母かを表示します。
問い合わせ件数と、声を寄せた顧客数を分ける
架空の例では、顧客Aが同じ設定問題で3回問い合わせ、BとCが各1回問い合わせています。
| 数え方 | 計算 | 読み方 |
|---|---|---|
| 問い合わせ件数 | A3+B1+C1=5件 | 対応量の参考 |
| 確認できた顧客数 | A・B・Cの3顧客 | 識別できた範囲の人数 |
| 同じ問題の継続 | Aの3件は解決までの連絡 | 新しい3件の不満とは限らない |
| 識別できない記録 | 同一人物か不明 | 推測で統合しない |
取込の重複は除きますが、再問い合わせという出来事まで消す必要はありません。原記録を保ち、集計用に『同じ案件』『同じ顧客』『独立した記録』を区別します。
集まる経路の割合が変わっただけかを確かめる
設定への不満を分類した架空の例です。経路別の比率は同じでも、問い合わせの構成が変わると全体値が変わります。
| 経路 | 期間1:該当/全件 | 期間2:該当/全件 |
|---|---|---|
| サポート | 8/10=80% | 32/40=80% |
| 商談 | 8/40=20% | 2/10=20% |
| 全体 | 16/50=32% | 34/50=68% |
全体の32%→68%だけで製品が悪化したとは言えません。サポートの比重が増えた例です。収集経路、対象期間、分類基準をそろえ、同じ経路の変化も確認します。
分類が割れた理由を、辞書の更新に残す
架空の原文『初期設定のCSV出力が見つからない』を2人が分類する例です。
| 担当 | 分類 | 根拠・その後 |
|---|---|---|
| A | 設定 | 『初期設定』という利用場面を重視 |
| B | 出力 | 困っている操作を重視 |
| すり合わせ | 主分類は困っている操作、利用場面は別列 | 分類軸を明確化 |
| 辞書更新 | v2に境界例と適用開始日を追記 | 過去分を再分類するかを別に決める |
元の原文と初回の分類を残します。辞書を変えた前後の件数は、そのまま増減として比べず、同じ基準にそろえたかを確認してください。
会話に残る顧客の声を、拾えるようにする
Klangは商談の録音や、録音済みの問い合わせ通話の音声ファイルを文字起こしし、複数の会話をまたいで分析できるようにします。会話を集める作業の負担を減らせます。継続的なVOC分析には、担当者を決め、分類や施策の結果を定期的に確認する運用も必要です。Klangは現在、日本では電話の通話録音に対応していません。録音済みの通話ファイルはアップロードして文字起こしできます。
- 商談の録音や、録音済みの通話ファイルのアップロードから文字起こし(フリープランで無制限)。話者の自動識別はプロプランです。
- フォルダ単位でまとめて読み、繰り返し出る反論や要望を取り出せます。
- スケジュール分析(プロプラン)で、毎週・毎月同じ形式のまとめを自動で届けられます。
よくある質問
VOC分析とテキストマイニングは違うものですか。
VOC分析は目的、テキストマイニングは手法です。顧客の声を改善につなげるという目的のために、テキストマイニングという手法を使うことが多い、という関係になります。件数が少なければ、手で読んで分類するだけでもVOC分析は成立します。
VOC分析の方法を簡単に教えてください。
①問い合わせ・アンケート・商談などの声を期間を決めて一か所に集める、②「対象×感情」などの軸を先に決めて分類する、③件数を母数と一緒に集計し前の期間と比べる、④改善を決めて担当と確認日を置く、の4段階です。分類辞書に、含める内容と迷う境界を書いておくと判断がそろいます。
VOC分析ツールは何を選べばよいですか。
顧客の声が集まっている場所で選びます。アンケートならアンケートツール、メールやチャットの問い合わせなら問い合わせ管理、大量の文章の傾向ならテキストマイニング、商談やインタビューの会話なら文字起こしと分析のツールです。Klangは会話の側を受け持ち、アンケート配信や問い合わせ管理の機能はありません。
コールセンターの通話もVOC分析に使えますか。
通話の録音ファイルがあれば、文字起こしして他の声と同じ分類辞書で扱えます。Klangは現在、日本では電話の通話録音に対応していません。録音済みの通話ファイルはアップロードして文字起こしできます。録音と利用目的の案内、保管期間、閲覧できる範囲は、社内の規程に沿って決めてください。
NPSなどのスコアがあれば十分ではありませんか。
スコアは変化に気づくために有効ですが、理由は分かりません。下がった原因を知ろうとすると自由記述や会話に戻ることになるため、両方を組み合わせるのが現実的です。
何件くらい集めればよいですか。
目的によります。傾向の比較をしたいなら数百件が目安ですが、問題を見つけるだけなら数十件でも十分に役立ちます。件数を待って始めないほうが、早く改善が回ります。
商談の会話を分析対象にしてよいのでしょうか。
録音と利用目的を相手に伝え、社内での取り扱いを決めたうえで行ってください。記録の保管期間とアクセスできる範囲を先に決めておくと、後から使える範囲が広がります。
担当者の主観が入ってしまいませんか。
分類には必ず判断が入ります。軸を先に決めておくこと、判断に迷った事例を残して基準をそろえること、そして原文を添えて誰でも確認できるようにすることで、影響を小さくできます。