VOC分析
VOC分析とは。顧客の声の集め方と、活かし方
問い合わせも、商談も、解約の理由も。すでに社内にある顧客の声を、改善につながる形に変えるまでの手順を整理します。
公開日:更新日:執筆・運営:Klang AI AB
BASICS
VOCとは何か
VOC(Voice of Customer)は顧客の声を指します。VOC分析は、その声を集めて分類し、何を直すべきかを決めるまでの一連の活動です。
アンケートの満足度スコアは「どれくらい満足しているか」を教えてくれますが、「なぜそう感じたか」は教えてくれません。スコアが下がった理由を知ろうとすると、結局は顧客が書いた文章や話した言葉に戻ることになります。VOC分析が扱うのは、この部分です。
重要なのは、VOCが「集めるもの」ではなく「すでにあるもの」だという点です。問い合わせのやり取り、商談での質問、解約時の会話。多くの会社では、必要な声はすでに大量に社内にあり、分類されていないだけです。新しくアンケートを設計する前に、手元にあるものを見るほうが早いことがよくあります。
SOURCES
どこに顧客の声があるか
声の出どころによって、拾える内容と偏り方が違います。ひとつに頼ると、見える景色が歪みます。
このなかで見落とされやすいのが、商談と解約時の会話です。テキストとして残っていないことが多く、担当者の記憶と要約されたメモに頼りがちだからです。録音して文字起こしをしておくと、この空白が埋まります。
| 出どころ | 拾えるもの | 偏り方 |
|---|---|---|
| 問い合わせ・サポート | 具体的なつまずき、不具合 | 困った人の声だけが集まる |
| 商談・営業の会話 | 導入前の懸念、比較検討の軸 | 検討中の相手に限られる |
| 解約時のやり取り | 離れた理由、期待とのずれ | 本音が語られないことがある |
| アンケート自由記述 | 満足・不満の理由 | 強い意見に寄る |
| ユーザーインタビュー | 行動の背景、言語化されていない不便 | 件数が少ない |
| レビュー・SNS | 第三者から見た評判 | 発信する層が限られる |
HOW TO
VOC分析の方法(4段階の進め方)
VOC分析(VOC解析とも呼ばれます)は、収集・分類・分析・共有の4段階で進めます。どの段階も飛ばせませんが、最も手を抜かれやすいのは最後の共有です。
- 01
集める:一か所に寄せる
出どころが分かれていると比較ができません。まずは対象の期間と出どころを決めて、同じ場所にまとめます。この時点で「いつ・誰が・どの接点で」の情報を落とさないようにします。
- 02
分類する:軸を先に決める
読みながら分類を作ると、途中で軸が変わって前半と後半がつながらなくなります。先に分類の軸を決め、当てはまらないものは「その他」に置いて後でまとめて見直します。
- 03
分析する:件数と変化を見る
何が多いかだけでなく、前の期間と比べて何が増えたかを見ます。絶対数が少なくても、急に増えた論点のほうが行動につながることがよくあります。
- 04
共有する:決められる人に届ける
レポートを作って終わりにすると、次の期にも同じ分析を繰り返すことになります。誰が何を判断するために見るのかを決め、その人が見る場所に届けます。
CATEGORIES
分類の軸をどう決めるか
分類は細かくするほど正確になりますが、細かすぎると件数が散って傾向が見えなくなります。最初は粗くて構いません。
実務では「対象 × 感情」の2軸で始めるのが扱いやすく、件数が溜まってから時点の軸を足すとうまくいきます。分類の粒度を変えるときは、過去のデータも遡って付け直せるかを確認してから決めてください。
対象で分ける
製品・価格・サポート・営業対応・ドキュメントなど、声が向けられている先で分けます。担当部署に割り当てやすい分け方です。
感情で分ける
不満・要望・称賛・疑問。同じ「価格」の話でも、高いという不満なのか、体系が分かりにくいという疑問なのかで対応が変わります。
時点で分ける
検討中・導入直後・定常利用・解約検討。同じ問題でも、どの時点で出たかによって優先度が変わります。
ACTION
分析を改善につなげる
分析の成果は、レポートの厚さではなく、変わった意思決定の数で測ります。
- 件数の多い順ではなく、「直せば効くか」で優先度を決める。件数が多くても仕様上変えられない項目は、説明のしかたを変える課題として扱います。
- 1回の報告に入れる論点は3つまでに絞る。すべてを並べると、どれも動きません。
- 声の原文を1つ添える。集計だけの報告より、実際の言葉が1つあるほうが意思決定が早くなります。
- 前回の報告で挙げた論点がどうなったかを、毎回冒頭に書く。これがないと、同じ指摘が毎回新しい発見として提出されます。
- 定例化して同じ形式で出す。フォーマットが毎回変わると、比較ができません。
PITFALLS
うまくいかない理由
VOC分析が続かない原因は、たいてい分析の質ではなく、集める工程の負担にあります。
いちばん多いのは、分析のたびに手作業でデータを集め直しているケースです。最初の1回は熱意で終わりますが、2回目、3回目と続けるうちに担当者の負担が上回り、いつのまにか止まります。集める工程をどれだけ自動化できるかが、続くかどうかを決めます。
次に多いのが、誰も判断に使っていないケースです。レポートは毎月出ているのに、そこから何かが変わった記憶がない。この状態になったら、報告の頻度ではなく宛先と粒度を見直してください。
最後に、商談や通話の声が最初から対象外になっているケースがあります。テキストとして残っていないという理由だけで、いちばん解像度の高い声が使われていないことは珍しくありません。
WORKED EXAMPLE
分類辞書を作り、迷う境界も書く
8件の架空データを使った業務用の分類例です。分類名だけでなく、含める内容と含めない内容を決めます。下のVOC分類シート(Excel)には、この辞書と8件の記入例、対象・感情・時点・主分類の入力リスト、件数と割合を自動で数える集計シートが入っています。
| 分類 | 含める内容 | 除外・境界 | 根拠ID |
|---|---|---|---|
| 設定 | 初回準備・招待の困りごと | 料金・出力だけの話 | V01–V04 |
| 価格 | 金額・料金説明に関する評価 | 設定手順の不明点 | V05–V06 |
| 出力 | CSVなど書き出しの困りごと | データ入力の話 | V07 |
| 操作 | 日常操作の使い勝手 | 初回準備のみの話 | V08 |
WORKED EXAMPLE
件数と母数を一緒に報告する
この例題では1記録に主分類を1つ付けています。全8件のうち設定4件、価格2件、出力1件、操作1件です。
この例の収集元は問い合わせ4件、商談3件、アンケート1件です。経路ごとの構成も添えて比較します。
実際の集計では同じ記録の二重取込を除外します。一つの記録に複数ラベルを許す場合は、分類の合計が100%を超えることがあります。今回の50%はこの8件の説明であり、顧客全体の比率ではありません。
| 分類 | 件数 | 全8件に占める割合 |
|---|---|---|
| 設定 | 4 | 50% |
| 価格 | 2 | 25% |
| 出力 | 1 | 12.5% |
| 操作 | 1 | 12.5% |
WORKED EXAMPLE
根拠から改善後の確認まで、1行で追う
分析しただけで終わらないように、次の行動と確認日を決めます。以下は架空の記入例です。効果はまだ測っていません。
| 観察と根拠 | 次の行動 | 担当・期限 | 確認 |
|---|---|---|---|
| 設定の相談4件:V01–V04 | 招待と担当設定の説明を試作 | 導入担当・9月18日 | 翌週の設定相談と全件数を比較 |
| 料金説明の疑問:V06 | 次回商談で説明文を確認 | 営業担当・9月18日 | 説明後に残る質問を記録 |
応用
応用:分類と集計で迷う場面
複数の分類が付く声、同じ顧客からの繰り返し、集まる経路の変化など、件数をそのまま比べると判断を誤りやすい場面の扱い方です。
一つの声に複数の分類を付けたら、分母を明記する
架空の5記録では、設定3件、料金2件、出力2件の計7ラベルを付けています。同じ記録を複数回数えることを隠さないようにします。
| 記録 | 付けた分類 | 集計上の扱い |
|---|---|---|
| V1 | 設定・料金 | 1記録、2ラベル |
| V2 | 設定 | 1記録、1ラベル |
| V3 | 料金・出力 | 1記録、2ラベル |
| V4 | 出力 | 1記録、1ラベル |
| V5 | 設定 | 1記録、1ラベル |
5記録を分母にすると設定60%、料金40%、出力40%で合計140%です。複数分類を許したためで、誤計算ではありません。7ラベルを分母にした割合とは意味が違うので、どちらの分母かを表示します。
問い合わせ件数と、声を寄せた顧客数を分ける
架空の例では、顧客Aが同じ設定問題で3回問い合わせ、BとCが各1回問い合わせています。
| 数え方 | 計算 | 読み方 |
|---|---|---|
| 問い合わせ件数 | A3+B1+C1=5件 | 対応量の参考 |
| 確認できた顧客数 | A・B・Cの3顧客 | 識別できた範囲の人数 |
| 同じ問題の継続 | Aの3件は解決までの連絡 | 新しい3件の不満とは限らない |
| 識別できない記録 | 同一人物か不明 | 推測で統合しない |
取込の重複は除きますが、再問い合わせという出来事まで消す必要はありません。原記録を保ち、集計用に『同じ案件』『同じ顧客』『独立した記録』を区別します。
集まる経路の割合が変わっただけかを確かめる
設定への不満を分類した架空の例です。経路別の比率は同じでも、問い合わせの構成が変わると全体値が変わります。
| 経路 | 期間1:該当/全件 | 期間2:該当/全件 |
|---|---|---|
| サポート | 8/10=80% | 32/40=80% |
| 商談 | 8/40=20% | 2/10=20% |
| 全体 | 16/50=32% | 34/50=68% |
全体の32%→68%だけで製品が悪化したとは言えません。サポートの比重が増えた例です。収集経路、対象期間、分類基準をそろえ、同じ経路の変化も確認します。
分類が割れた理由を、辞書の更新に残す
架空の原文『初期設定のCSV出力が見つからない』を2人が分類する例です。
| 担当 | 分類 | 根拠・その後 |
|---|---|---|
| A | 設定 | 『初期設定』という利用場面を重視 |
| B | 出力 | 困っている操作を重視 |
| すり合わせ | 主分類は困っている操作、利用場面は別列 | 分類軸を明確化 |
| 辞書更新 | v2に境界例と適用開始日を追記 | 過去分を再分類するかを別に決める |
元の原文と初回の分類を残します。辞書を変えた前後の件数は、そのまま増減として比べず、同じ基準にそろえたかを確認してください。
会話に残る顧客の声を、拾えるようにする
Klangは商談の録音や、録音済みの問い合わせ通話の音声ファイルを文字起こしし、複数の会話をまたいで分析できるようにします。会話を集める作業の負担を減らせます。継続的なVOC分析には、担当者を決め、分類や施策の結果を定期的に確認する運用も必要です。
- 商談の録音や、録音済みの通話ファイルのアップロードから文字起こし(フリープランで無制限)。話者の自動識別はプロプランです。
- フォルダ単位でまとめて読み、繰り返し出る反論や要望を取り出せます。
- スケジュール分析(プロプラン)で、毎週・毎月同じ形式のまとめを自動で届けられます。
よくある質問
VOC分析とテキストマイニングは違うものですか。
VOC分析は目的、テキストマイニングは手法です。顧客の声を改善につなげるという目的のために、テキストマイニングという手法を使うことが多い、という関係になります。件数が少なければ、手で読んで分類するだけでもVOC分析は成立します。
NPSなどのスコアがあれば十分ではありませんか。
スコアは変化に気づくために有効ですが、理由は分かりません。下がった原因を知ろうとすると自由記述や会話に戻ることになるため、両方を組み合わせるのが現実的です。
何件くらい集めればよいですか。
目的によります。傾向の比較をしたいなら数百件が目安ですが、問題を見つけるだけなら数十件でも十分に役立ちます。件数を待って始めないほうが、早く改善が回ります。
商談の会話を分析対象にしてよいのでしょうか。
録音と利用目的を相手に伝え、社内での取り扱いを決めたうえで行ってください。記録の保管期間とアクセスできる範囲を先に決めておくと、後から使える範囲が広がります。
担当者の主観が入ってしまいませんか。
分類には必ず判断が入ります。軸を先に決めておくこと、判断に迷った事例を残して基準をそろえること、そして原文を添えて誰でも確認できるようにすることで、影響を小さくできます。
ANALYSIS GUIDES
分析ガイド:目的から手法を選ぶ
テキストマイニング、VOC分析、感情分析、定性分析は、同じ8件の架空データや共通の考え方(原文に戻って確かめる、母数を添える)でつながっています。
| 知りたいこと | 読むガイド |
|---|---|
| 大量の自由記述の傾向を数えたい | テキストマイニングの手法と頻出語・共起の分析例 |
| 顧客の声を分類して改善につなげたい | VOC分析のやり方と分類シート(このページ) |
| 肯定・否定の傾向を測りたい | 感情分析の仕組みと日本語での注意点 |
| 少数のインタビューを深く読みたい | 定性分析とコーディングの手順 |
| 研究・卒論のインタビューを分析したい | 研究インタビューの逐語録と分析の手順 |
| 会議や商談の会話を横断して分析したい | 会話分析のやり方:文字起こしからテーマ・インサイトまで |
| 分析結果を社内の知識として残したい | ナレッジマネジメントとナレッジ共有の進め方 |