傾聴・アクティブリスニング
傾聴とは?ロジャーズの3条件と、職場で使える傾聴スキル
傾聴(アクティブリスニング)の意味と、カール・ロジャーズが示した3つの条件、1on1・面談・顧客ヒアリングで使える技法と例文、やりがちな失敗をまとめました。応答を選んで確かめる言い換え練習と、文字起こしで自分の聴き方を振り返る方法つきです。
更新日:執筆・運営:Klang AI AB
傾聴の意味と、アクティブリスニングとの関係
傾聴は、もともとカウンセリングの分野で、来談者中心療法を提唱したカール・ロジャーズの考え方をもとに広まった言葉です。ロジャーズは心理学者のリチャード・ファーソンとともに、職場の管理者向けに「Active Listening」という論文を1957年に書いており、傾聴は早くからカウンセラー以外の人が職場で使う聴き方としても紹介されてきました。
日本では、厚生労働省のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」が、管理監督者が部下の話を聴く方法として傾聴を紹介しています。現在は、1on1や人事面談、営業の顧客ヒアリング、医療・福祉の相談支援など、相手の本音や事情を知る必要があるあらゆる場面で使われています。
傾聴は「黙って聞くこと」でも「相手に同意すること」でもありません。相手の言葉を受け止め、理解したことを言葉で返し、分からないところは質問して確かめる、能動的な関わり方です。
| 表記 | 意味 | 職場での例 |
|---|---|---|
| 聞く | 音や声が自然に耳に入ってくる | 会議の報告を、ほかの作業をしながら聞いている |
| 聴く | 注意を向けて、相手を理解しようと耳を傾ける(傾聴) | 1on1で、手を止めて相手の目を見て、話の意図をつかもうとする |
| 訊く | 自分が知りたいことを尋ねる | 進捗や数字を質問して確認する。傾聴では、相手の話を受け止めてから訊く |
ロジャーズの3条件:傾聴の土台になる聴き手の姿勢
ロジャーズは1957年の論文で、人が建設的に変化するために必要な条件を挙げました。そのうち聴き手の側に求められる3つの姿勢が、傾聴の土台として広く紹介されています。
3つの条件は、技法より先にある「構え」です。あいづちや言い換えを形だけまねても、評価する気持ちや早く結論を出したい気持ちが強いと、相手にはそれが伝わります。反対に、技法がぎこちなくても、相手を理解しようとする姿勢があれば、多くの場合は十分に伝わります。
1. Empathic understanding
共感的理解
相手の立場に立ち、相手が感じていることを、相手の枠組みのまま理解しようとすること。「自分ならどう感じるか」ではなく、「この人にはどう見えているか」を聴きます。
職場では:「納期が厳しくて」と言われたら、厳しさの中身(量なのか、判断の待ちなのか)を本人の言葉で確かめる。
2. Unconditional positive regard
無条件の肯定的関心
話の内容が自分の考えと違っても、善い・悪いの評価をいったん脇に置き、話している相手そのものに関心を向け続けること。
職場では:「辞めたいと思うこともある」と打ち明けられても、驚きや否定を先に出さず、そう感じる理由に耳を傾ける。
3. Congruence
自己一致
聴き手が自分の気持ちを偽らず、分からないことは分からないと率直に確かめること。分かったふりをして聞き流さない姿勢です。
職場では:話がつかめないときは「今の話を、私がちゃんと理解できているか確認させてください」と言って確かめる。
傾聴スキル:7つの技法と職場の例文
例文は、部下や同僚の「新しい案件の見積もりがよく分からなくて」というひと言への応答を想定しています。
このほか、相手が考えている間の沈黙を埋めずに待つことも大切な技法です。沈黙のあとに、本当に言いたかったことが出てくることは少なくありません。「なぜ」で始まる質問は理由を問いただす響きになりやすいため、「何がきっかけで」「どんなところが」のように言い換えると、責められている印象を和らげられます。
| 技法 | ねらい | 例文 |
|---|---|---|
| あいづち・うなずき | 聴いていることを示し、話を続けてもらう。表情や姿勢などの非言語も含む | 「ええ」「なるほど」(手を止め、相手のほうに体を向ける) |
| 繰り返し(バックトラッキング) | 相手の言葉をそのまま返し、受け取ったことを伝える | 「見積もりがよく分からない」 |
| 言い換え | 要点を自分の言葉で短く返し、理解が合っているか確かめる | 「見積もりの出し方に迷っている、ということですね」 |
| 感情の反映 | 言葉の奥にある気持ちを推し量って返す。違っていれば相手が訂正してくれる | 「初めての形式だから、不安もありそうですね」 |
| 開かれた質問 | 「はい・いいえ」で終わらない質問で、相手の言葉で話してもらう | 「どのあたりで迷っていますか」 |
| 閉じた質問 | 事実や数字を確かめる。続けて使うと尋問のようになるため、受け止めたあとに使う | 「提出は来週の金曜ですか」 |
| 要約 | ある程度話を聴いたところで全体をまとめ、認識をそろえて次に進む | 「範囲の決め方と、提出の期限の2つが気になっている、で合っていますか」 |
1on1・面談・顧客ヒアリングでの傾聴の使い方
1on1
話題はメンバーが決め、上司は聴く役に回ります。最初に「今日はどんな話をしたいですか」と開かれた質問で始め、助言は本人が求めたとき、または話を十分に聴いて要約したあとにします。最後に要約で合意とアクションを確かめます。
人事面談・キャリア面談
本人がまだ言葉にできていない希望や迷いを、急がずに聴きます。評価や制度の説明に入る前に、本人の考えを言い換えで受け止め、「ほかに気になっていることはありますか」と最後にもう一度聞きます。
顧客ヒアリング・商談
提案の前に、課題・背景・判断基準を相手の言葉で聞き出します。「〜が負担なんですね」と言い換えて受け止めてから、数字や体制を閉じた質問で確かめます。聞き取った内容はヒアリングシートの項目に沿って残します。
部下からの相談・報告
ミスやトラブルの報告では、まず事実を最後まで聴き、責める言葉を後回しにします。報告してくれたこと自体を受け止めると、次の報告が早くなります。対策はそのあとに一緒に考えます。
会議・ディスカッション
反対意見が出たときこそ、「〜という懸念ですね」と言い換えてから応じます。発言の少ない人に「〇〇さんはどう見ていますか」と開かれた質問を向けると、場の情報が増えます。
オンラインの面談
表情や姿勢が伝わりにくいため、あいづちや言い換えを対面より少し多めに、言葉で返します。音声の遅れで話が重なりやすいので、相手が話し終えたことを確かめてから話し始めます。
応答の言い換え練習:あなたならどう返しますか
4つの場面で、相手のひと言に対する応答を選んでみてください。傾聴の応答と、話の流れを止めやすい応答の違いが分かります。
応答の言い換え練習
場面を選び、相手のひと言に対して自分ならどう返すかを選んでください。選ぶと、その応答の種類と相手への伝わり方が表示されます。会話はすべて架空の例です。
「今月は問い合わせ対応が多くて、自分の企画の仕事がほとんど進んでいないんです。このままでいいのか、ちょっと焦っていて……。」
選んだ内容はどこにも送信されません。何度でも選び直せます。
傾聴でやりがちな失敗と、代わりにすること
| やりがちな応答 | 相手にどう伝わるか | 代わりにすること |
|---|---|---|
| 先回りして助言や解決策を出す | 「話しても答えが返ってくるだけ」と感じ、本当の困りごとを話さなくなる | 要約して「どうしたいと思っていますか」と聞いてから、必要なら助言する |
| 自分の経験談にすり替える | 話の主役が聴き手に移り、聞いてもらえなかったと感じる | 自分の話はしまっておき、相手の話の続きを促す |
| 評価・説教をする | 否定されたと感じ、次から同じ話題を出さなくなる | 評価は脇に置き、そう考える理由を開かれた質問で聞く |
| 「よくあること」と励まして終わらせる | 話を打ち切る合図になり、気持ちが置き去りになる | 気持ちを言葉で受け止め、「ほかに気になることは」と聞く |
| 話の途中で割り込む | 最後まで聞いてもらえないと感じ、話を短くまとめるようになる | 相手が話し終えて一呼吸おいてから話し始める |
| 「なぜ」を重ねて問い詰める | 責められていると感じ、弁解を考え始める | 「何がきっかけで」「どんなところが」に言い換える |
| パソコンやスマホを見ながら聞く | 関心がないと受け取られる | 画面を閉じ、メモは最小限にする。記録は録音や文字起こしに任せる |
文字起こしで、自分の聴き方を振り返る
自分では聴けているつもりでも、実際の会話を読み返すと、割り込みや先回りの助言が思った以上に多いことがあります。相手の同意を得て録音した会話の文字起こしは、聴き方を振り返る材料になります。
振り返りで数えるのは、主に4つです。話した量の割合(聴く場面なら相手が多いのが目安)、質問の種類(開かれた質問と閉じた質問の比率)、相手が話し終える前に自分が話し始めた箇所、相手の話を言い換えや要約で返した回数です。下の例のように、文字起こしに自分で印を付けていくと、癖が見えてきます。
振り返りは、相手を評価するためではなく、聴き手である自分の改善のために行います。1on1や面談を録音するときは、目的、聞く人、保存期間を相手に伝え、毎回同意を得てください。録音しないでほしいという希望にはすぐに応じ、断っても不利益がないことを明確にします。
- Klangでは、Zoom・Teams・Google Meetの面談に会議ボットが参加して録音・文字起こしし、対面の面談はスマホアプリで録音できます。文字起こしはフリープランでも無制限です。
- 発言を話者ごとに自動で分ける「話者の自動識別」はプロプランの機能です。話者が分かれていると、自分の発言だけを読み返したり、AIチャットで割合や質問の種類を数えたりしやすくなります。
- AIチャットの結果は振り返りのきっかけです。数え方の誤りもあるため、気になる箇所は文字起こしの該当部分を読み、音声を聞き直して確かめてください。
- 03:10
上司開かれた質問
最近の仕事の調子はどうですか。
- 03:14
メンバー
新しい案件が始まって、ちょっと手探りです。特に見積もりのところが……
- 03:21
上司割り込み
ああ、見積もりは前回のテンプレートを使えば大丈夫だよ。
- 03:25
メンバー
はい……。
- 03:27
上司先回りの助言
先方には早めに一報入れておくといいね。あと、来週の定例までに一度見せてもらえる?
- 03:35
メンバー
わかりました。
- 03:37
上司開かれた質問
見積もりのところで手探りだと言っていたけど、どのあたりが?
- 03:41
メンバー
先方の要件がまだ固まっていなくて、どこまで含めるか自分で決めていいのか分からないんです。
- 03:49
上司言い換え
範囲を自分で決めていいのかが分からない、ということですね。
- 03:53
メンバー
そうです。決めた範囲が後でひっくり返るのが怖くて。
- 03:58
上司要約
要件が固まらないまま範囲を決めることと、後で変わるのが不安、の2つですね。
この抜粋を数えると
話した量(文字数の割合)
上司 61%・メンバー 39%
- 開かれた質問2
- 割り込み1
- 先回りの助言1
- 言い換え1
- 要約1
前半は割り込みと先回りの助言で、メンバーの「見積もりのところが……」が途切れています。後半の開かれた質問と言い換えで、本当の困りごと(範囲を決めてよいか)が出てきました。
AIチャットで数えるプロンプト
この1on1の文字起こしを、私(上司)の聴き方の振り返りのために読んでください。 評価ではなく、事実の数え上げをお願いします。 1. 話した量のおおよその割合(上司とメンバー) 2. 私の質問を「開かれた質問」と「閉じた質問」に分け、それぞれの例を時刻つきで2つずつ 3. メンバーが話し終える前に私が話し始めた箇所(時刻と前後の発言) 4. メンバーが話した内容を、私が言い換えや要約で返した箇所 5. メンバーの話の途中で、私が助言や解決策を出した箇所 最後に、次回の1on1で私が試せることを2つだけ挙げてください。
傾聴の限界と、専門家につなぐべき場面
傾聴は、相手の気持ちや事情を理解するための聴き方で、相手の要望をすべて受け入れることとは違います。業務上の判断や評価が必要な場面では、相手の話を十分に聴いたうえで、判断とその理由をはっきり伝えます。聴くことと決めることを分けると、相手も結論を受け止めやすくなります。
部下や同僚の話から、強い不眠や気分の落ち込みが続いている、仕事が手につかないなど、心身の不調がうかがえる場合は、上司や同僚だけで抱えず、産業医や社内の相談窓口、外部の専門機関につないでください。「こころの耳」では、働く人や家族、事業者向けの相談窓口を案内しています。
聴くことに集中し、記録はあとから確かめる
Klangは面談や1on1を、相手の同意を得たうえで録音して文字起こしします。メモを取る手を止めて相手の話に集中でき、あとから文字起こしを読み返して、相手の言葉と自分の聴き方の両方を確かめられます。
- 文字起こしとAI要約・チャットはフリープランでも使えます。会議ボット、スマホアプリでの対面の録音、ファイルのアップロードに対応
- 話者の自動識別はプロプランの機能です。自分の発言だけを抜き出して振り返るときに役立ちます
- 会話データをAIの学習に使いません。ISO/IEC 27001:2022認証を取得しています
よくある質問
傾聴とは簡単に言うと何ですか。
相手の話に評価や助言を急がずに耳を傾け、相手の立場に立って、言葉とその奥にある気持ちを理解しようとする聴き方です。カール・ロジャーズが提唱した考え方で、積極的傾聴、アクティブリスニングとも呼ばれます。
傾聴の3つの条件(3要素)とは何ですか。
ロジャーズが示した、聴き手に求められる3つの姿勢で、共感的理解(相手の立場で理解する)、無条件の肯定的関心(評価を脇に置いて相手に関心を向ける)、自己一致(分からないことは率直に確かめる)を指します。
傾聴スキルにはどんなものがありますか。
あいづち・うなずき、繰り返し(バックトラッキング)、言い換え、感情の反映、開かれた質問、閉じた質問、要約が代表的です。相手が考えている間の沈黙を待つことも大切です。
傾聴とアクティブリスニングは同じ意味ですか。
ほぼ同じ意味で使われます。アクティブリスニング(active listening)は、ロジャーズとファーソンが1957年に職場の管理者向けに書いた論文の題名でもあり、日本語では積極的傾聴と訳されることが多い言葉です。
傾聴力を高めるにはどうすればよいですか。
このページの言い換え練習のように応答の型を練習し、実際の会話で試すことです。相手の同意を得て録音した1on1や面談の文字起こしを読み返し、話した量の割合、質問の種類、割り込みの回数を数えると、自分の癖が具体的に分かります。